いばしょが みつからなくて
冬童話2021投稿作品です。
アグリーと おくさまとで つくったおかしで こうしゃくさまの へんなかんちがいはとけて おふたりは なかよくなりました。
しつじさんのくびも つながりました。
おかしづくりの よくじつから こうしゃくさまと おくさまは とてもなかよく なりました。
いままで べつべつだった あさごはんを いっしょに たべるように なったり おやすみのひに いっしょに おでかけするように なりました。
アグリーも いっしょに ごはんをたべたり おでかけに つれていってもらったりしました。
でも だんだんと りゆうをつけて おさそいを ことわるように なりました。
(おふたりが なかよく なったなら あたしは いないほうが いいよね)
さびしい きもちは ありました。
こうしゃくさまは べつじんのように やさしくなりました。
おくさまは アグリーを とてもだいじに してくれています。
おやしきで はたらくひととも なかよく なりました。
でも。
(ここは あたしの いばしょじゃ ないよね)
きぞくじゃないこと。
およめさんじゃないこと。
それは アグリーにとって おおきなかわの むこうがわのような へだたりでした。
『こうしゃくさま
おくさま
たくさん おせわに なりました。
ほんとうに ありがとうございました。
でも きぞくじゃない あたしが おやしきに いたら
きっと ごめいわくが かかります。
ごあいさつを しないで おわかれする
しつれいを おゆるしください。
アグリー』
アグリーは てがみをかいて おやしきを でていきました。
おやしきを でたアグリーは しごとと すむところを さがしました。
まえの くだものやさんには きゅうにやめて めいわくをかけたので もどれません。
さいわい あたらしい しごとは みつかりました。
おそうじの しごとで すむところも よういして くれたので アグリーは ほっとしました。
しごとは たいへんでしたが アグリーは がんばりました。
まわりのひとも アグリーのがんばりを ほめてくれました。
でも。
『おやしきの おそうじ ありがとう。 とても きれいで びっくりしたわ』
おくさまに ほめられたときの うれしさとは どこかちがう うれしさでした。
しごとがおわって アグリーは へやにもどります。
(あたしに おかあさんが いたら あんなかんじ なのかな……)
そんなことを おもっていました。
いままで ぜんぜんへいきだった ひとりのさびしさが むねのなかで きゅーっと ひびきました。
読了ありがとうございました。
ひきざんの しあわせ。
でも もとより へることが ほんとうに しあわせ?
次の話もよろしくお願いいたします。