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第9話 ミカンさんの料理





再びログインした僕は早速ミカンさんがやっているお店に顔を出した。




そこは小さくも小綺麗で非常に落ち着いた雰囲気の店だった。




「こんばんはミカンさん。さっきぶりだね。」


「あ、マキナさん。ちゃんと来てくれたんですね。」


「勿論だよ。そう約束しちゃったしね。それで、早速なんだけどミカンさんの料理を食べたいんだけどいいかな?」


「はい!私なんかので良ければ是非!」


「うーん、じゃあ、このラビットステーキって言うのを一つ。」


「はい。それじゃあ今から作るので少し待っててくださいね。」






■■■■





それから暫く、厨房の方からは肉を焼いているいい匂いがここまで届いてきた。そも、店内が狭いので匂いは店内中に広がるのだけどね。


それにしても、このゲームの料理ってこんなにリアルだとは思わなかった。


僕はてっきり他のゲームみたいに材料をポップアップウィンドウにセットするだけで出来るものと思っていたからだった。でも、それは違い、このゲームではちゃんと素材(この場合は肉)を切って油とかもひいてから焼き加減に注意する必要があるらしい。しかも盛り付けとか味付けも自動ではなくちゃんと調味料や自分の手で盛り付けをしないといけないらしく、さながら本物の調理と一緒だった。


恐らくこれには現実での料理の腕が反映されている。料理スキルはあくまでも効果とかの付与で、恐らく料理の出来には直接関わっていないだろう。




「お待たせしました。これがラビットステーキになります。あと、水も入れておきましたね。」


「あ、ありがとう。─────うん、本当にいい匂いだよ。しかも現実での料理と何ら変わりがない。それに······凄く美味しそうだ。」


「ふふ。ありがとうございます。それじゃあ召し上がって下さいね。」


「うん。それじゃあ、いただきます!」



そして、僕はステーキを切り分けて口に運ぶ。


!!!?凄い!ステーキが口の中でほろける!?



「これ!凄く柔らかくて美味しい!!どうやったらこんなに柔らかくなるんですか!?」


「ふふ、嬉しい♪お肉を柔らかくした方法は至って単純ですよ。肉を叩いて繊維をほぐしただけですよ。後は······焼き方ですけど、企業秘密。と言うことで♪」



そうなんだ!道理でやけに音が大きいとは思った。確かに、肉は繊維が固かったら食感が悪いって言うしね。



「そうだよね。それにしても、本当に料理が上手なんだね!」


「うん。これでも私、料理人目指してるの。それでね、このゲームだったら現実と全く同じ料理の仕方が出来るから練習にもってこいなの。だから練習の片手間にお店もやっちゃおうって思って。」


「へぇ、そうなんだ!凄いなぁ······料理人かぁ。そういえばそのステーキに使ってる肉ってもしかしてホーンラビット?」


「???ホーンラビットですか?いいえ違いますよ。このお肉は普通のウサギ肉ですよ。町でも売っている普通の食材ですよ。」



あれ?そうなのか。普通の動物の食材もあったんだ。



「それならこれからこっちに食材を売りに来るよ。僕が食材を持ってても余り意味は無いしね。料理スキル取ってないから。」


「あ、そうなんですね。食材を売ってくれるのなら私も買いましょう。それを出して儲けますよ。」



ありゃ、案外商売人気質?まあ、買ってくれるんだから良いだろう。



「あと、その早めに食べた方が良いですよ。でないと冷めちゃいますし。」


「あっ、そうだったね。それじゃあ残りも食べますか。」






■■■■






「ふぅ、ご馳走さまでした。」


「はい。お粗末様でした。」


「あはは、それも言っちゃうんだね。」


「ふふ、当然です。だって、今回はマキナさんしか居ませんから。」


「そう言えば思ったんだけど、こんなことを聞くのは失礼だけど、このお店って採算とれてるの?」



僕がふと疑問に思ったことをぶつけるとミカンさんも真面目な表情で答えてくれた。



「ええ、何とかですね。中々ギリギリですけど、βの時からの常連さんがまた来てくれてますので。」


「へぇ、ミカンさんってβからやってたんだ!意外だね!」


「やっぱり?初見の人にそれを伝えたらやっぱりよく言われますよ。」


「うん、そうだね。僕もβって聞いたとき、えっ!て思ったし。」


「よく言われますね。」


「おっと、それじゃあそろそろ僕は行くよ。また今度食材を売りに来たときにでも話そうか。」


「そうですね。それでは今後ともご贔屓に。」


「うん。また来るよ。必ずね。」




そう言い残して別れたのだが、僕はこの先ずっと唯一のパーティーメンバーとしてミカンさんと組むなんてつゆほどにも思っていなかった。そして、まさか現実でも───────になるなんて······それこそ本当に人生で一番の驚愕だった。







■■■■






「美味しかったなぁ、ミカンさんの料理········また今度って言ったけど僕も常連さんになりそうだな········」



と、言いつつ僕は町をまだまだ探索していた。僕は今日はもうレベリングは止めて町を観光するつもりでいたのだ。だって、半日でレベル10だからね。もうこれ以上上げなくても今はいいかなって。



そうやって僕が歩いているとカインのパーティーメンバーの一人のバンさんに出会った。



「あれ?バン、いま一人なんですか?他のみんなは?」


「ん?ああ、マキナか。いや、皆はまだログインしてないんだよ。ちょっと前にログインして皆夕食とお風呂かな。9:30に待ち合わせしてたけど俺が早めにログインしただけだからな。」


「ああ、そうだったんですね。バン達はこのあとは魔物を倒しに行くの?」


「まあ、そうだな。素材集めかな。」


「そうなんだね。それじゃあ頑張ってね。」


「ああ。それはそうとマキナは何してたんだ?」


「ん、僕も一時間前にもう一度ログインし直してね、それでさっきのさっきまでミカンさんの料理を食べてたんだよ。」



僕がそれをバンに伝えると少し驚いた表情をしていた。



「あれ?バンはミカンさんのこと知ってるの?」


「あ、ああ。ミカンさんはβでもちょっとした有名人でな。あの料理が評判だが······何故か店が分かりにくくてな、客が少ないんだ。まあ、だからこそ幻の天上の料理とか噂されてたんだが······そうか、サービス開始でもう店を出してたのか·······」


「ふーん。そうだったんだね。いやぁ、確かに極上の料理でしたよ。ほんと、いままででもトップクラスの美味しさでしたね。ゲームでも本当に本物を食べてるみたいでしたね。·····いや、ある意味本物ですね。」


「ああ、俺もそう思う。このゲームの料理は現実さながらだ。それだからこそ奥が深い。不人気スキルだが·······俺が思うにはあのスキルはきっと化けると思うんだがな。」


「あー、やっぱり?僕もなんとなくそんな感じがしたんですよねぇ。やっぱり不遇なやつが最後には化けるのかなぁ。」


「まぁ、スキルによってそれぞれだろう。化けるか化けないか。それはやっぱり最後まで極めてみないとわからない。」


「ん、まあそうですよね。っと、そろそろ時間じゃないですかね?」


「ん?ああ、済まないな。話しているとどうも時間が経つのが早いものだな。其じゃあまた何処かで。」


「それじゃあまた、何処かで。」




■■■■




「あれ?バン、遅かったじゃない。てっきりバンが最初に来ると思ってたんだけど?」


「済まないなエリナ。ちょっとマキナに会ってつい話し込んでしまった。」


「えっ?そうだったの!?で、いったい何を話したの?教えてくれる?」


「別に構わない。マキナとはミカンさんについて話していた。どうやらマキナの話によるとサービス開始した今、もう店を出しているみたいだった。」


「えっ!ミカンちゃんのお店が!?そ、それなら私、食べに行きたい!!」


と、エリナ


「俺もミカンさんの料理、久しぶりに食べてみたいなぁ。」


と、カイン


「それじゃあ探しに行く?」


と、ミリア


「それがいいかも知れないね。」


と、ジュン


「皆が食べたいのなら探すか?別に素材は何がなんでも必要って訳じゃないから別に構わないよな?」


「よしっ!じゃあ、今夜は予定を変えて皆でミカンさんの料理を食べよう!!」





そうやって彼らはミカンさんの料理を求めて店を探しに行った。



その後、彼らは無事に店を見つけてその天上と呼ばれた料理にありつくのだった。




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