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第8話 引き続き町探索と両親



ヒロインちゃん登場です。







僕はガレンさんの鍜治屋でいい買い物が出来たとそのあと、この町での料理店を見つけた。


このゲームでの料理の扱いは特に空腹を満たすと言うわけではないが、ちゃんと味覚はあるし、料理のスキルレベルによっては極上のフルコースを作ることもやぶさかでは無いと言うが、如何せんこのゲームでは料理スキルがそこまで突出した性能では無いことと、余り料理が重要では無いことと相まってそのスキルを取得するプレイヤーは殆ど居ない。


そして、僕はその中で料理スキルを取っている一人のプレイヤーと出会った。しかし、もうそろそろ一度夕飯の為にログアウトしないといけない時間に近付いて居るし、でも、相手のプレイヤーをほったらかしにすることも出来ないので僕はこう提案した。



「ミカンさん。僕はこのあと直ぐにログアウトしないといけないのですいません。あと、良ければフレンド登録しませんか?僕、一度ミカンさんが作った料理も食べてみたいですし······」



ミカン。とは相手プレイヤーの名前である。たまたま僕が通りかかった時に目に入った。


そこで料理を作っていたので思わず話し掛けてしまったものだ。


今更だけどこのゲームでの料理の扱いは、ステータスに一時的なバフをかけること。後はこれはスキルが高レベルでないといけないが、何らかの特殊効果も付与出来るらしい。最も、まだまだ初日なのでそんなものを作れる人なんて居ないが。それこそ取っている人の少ない料理スキルなので尚更だった。



「えっと、はい!マキナさん。私なんかで良ければ。」



そう言って承諾してくれた彼女は控え目に形容しても凄く可愛い。美少女だった。多分、10人中10人が振り向く美少女だろうと思う。ああ、それと言ってなかったけどこのゲームって体の元の見た目は殆ど弄れない。弄れるのは目の色、肌の色、髪の色、身長、胸囲(女性限定)。なのでミカンさんは多少の差異はあれど現実でもほぼ同じ美少女と言うことになる。まあ、それも近くに来るまで分からなかったけど······だって、ミカンさん、深くフードを被ってて顔が見えづらかったからね。



「あ、それとさ、また8時半位からログインすると思うんだけど、その時にまだログインしてる?」


「えっと、はい。実は私もこのあとログアウトするんですけど、その時間ならまたログインしてますよ。」


「そうなんだ!それじゃあその時にまたここに来るからね。」


「あ、はい。待ってますよ。」


「じゃあ、僕はもうログアウトするので。」


「はい。さようなら。」


「うん。さようなら。」



そうして僕は一度ミカンさんと別れてログアウトした。




■■■■





「ふぅ········」



僕はベットから起き上がる。軽く七時間以上はダイブしていたので少し倦怠感があるけどまあそれは仕方がない。僕はそんな体を起こしてリビングに向かう。



「あら、マキ!もう夕御飯にするの?」



僕にそう問い掛けてきたのは僕のお母さんのエミリー・ブラウン。母はイギリス人だけれど姓はそのままにしている。因みにお父さんの名前は鷹野聖たかのさとし。僕のお母さんはまだ三十代後半とだけ言っておこう。本当の年齢を言ってしまったが最後。僕はお母さんに消されてしまうからね。いや、これホントにね。前に一度お父さんがお母さんの年齢言ってしまってね、幸いにも僕しか聞いてなかったから良かったものの、お母さんは怒ってお父さんに英語混じりで説教してたよ。うん、今思い出してもホントに怖いよ·······普段はとっても優しいけどね。


因みに僕を呼ぶときはどっちとも『マキ』と呼んでくる。


「うん。今日は何にするの?」


「うーんとね、今夜はキムチ鍋にするわ。お父さんも喜ぶでしょうね♪マキも好きだったでしょ?」



おぉー!キムチ鍋!丁度この季節には暖まるから良いよね!!僕のランキングではお母さん特製のキムチ鍋は僕のグルメランキング一位にランクインしていて、今なお不動の一位!



「やったー!キムチ鍋!僕、お母さんのキムチ鍋大好き!」


「あらーそう♪お母さん張り切っちゃうわよ~!」



どうやら今夜のキムチ鍋はいつも以上においしくなりそうだ。





■■■■





それから暫くしてお父さんが会社から帰ってきた。



「ん?おっ、この匂いは·····今夜はキムチ鍋か!」


「正~解~!今夜はあなたの大好きなキムチ鍋よ。」


「ありがとう、エミリー。おっ!マキも居たか!マキもキムチ鍋、楽しみにしてるんだろ!」


「うん!」


「そうかそうか。それじゃあエミリー。キムチ鍋、飛びっきり旨いのを頼むよ!」


「ええ、あなた。任せといて!」



そうしてお母さんは早速キムチ鍋の準備に取りかかった。」





■■■■





それからお父さんとお母さんとキムチ鍋を食べた。勿論いつもと変わりなく美味しい味だった。特に今回のは今までの中でも一二を争う美味しさで、一口口にするだけで思わず『ウマイ!!』と、叫んでしまったのは仕方がないだろう。ちょっとお母さんに笑われてしまったのは恥ずかしかったけど······


うん、やっぱり僕は幸せだね。だって、こんなに優しい親の元に産まれられたんだから!それに、端から見てもこの二人はラブラブだって直ぐに分かるからね。



「あっ、マキ!もうお風呂沸かして置いたから先に入る?」


「ありがとう。先に入らしてもらうね。」


「ええ、入ってらっしゃい。ふふ、久しぶりにお母さんが乱入しちゃおうかしら?」


「や、やめてよお母さん!僕だってもう15歳なんだよ!!少しは自重してよ!」



ほんと、自重してほしい。この前·····大体5ヶ月位前に一回入浴中に乱入されてパニックになってしまった。いや、ホントに止めてほしい。割りとマジで切実に。ホントに親バカが過ぎるよ。



「いいじゃないの♪マキは別に男の子になんて見えないしね♪だから入っても問題ないわよ♪」


「エミリー。少しはマキのことも考えてやれよ·····ほら、マキ。久しぶりに俺と入るか?」


「それは絶対にダメよ。あなたとマキが一緒に入るなんて、いくら同姓でもちょっと不味い気がするわ。だって、ねぇ。」


「うん。ぼくも、ちょっとそれは遠慮したいかなぁ。ごめんねお父さん。」


「そ、そうか······じゃあ、仕方がないか······」


「兎も角!!お母さん!絶対に入ってこないでね!」


「はいはい。分かったわよ。つれないわねぇ······」



はあ、何とか僕の平穏を勝ち取ったようだ。





■■■■





「ふぅ、それにしても、ミカンさん。可愛かったなぁ·······っと、僕は何を考えてるんだ?」



ふと入浴中にミカンさんの事を考えてしまっている僕がいた。



「今は·····良いよね。ああ、楽しみだなぁ。ミカンさんの料理どんなのかなあ。」



ちょっと、ミカンさんのことばかり考えている気がするけど、そろそろ暖まったので上がることにする。




■■■■




「あら、お風呂終わり?」


「う、うん。」



何かお母さんが風呂上がりの所待ち伏せしてたんだけど!!



「それにしてもマキ····あなた、好きな女の子でもいるのかしら?聞こえてきたわよ。ミカンさんがどうとかって。」



ありゃ、聞かれてたか。



「いや、ちょっとゲーム内の話で·····会う約束してて。」


「ふーん。そう。それじゃ、楽しんでらっしゃい。でも、ちゃんと遅くなったら寝るのよ?」


「うん!分かってるよ!ありがとう!」


「それじゃあ、お休み。マキ。」


「うん。お休なさい。お母さん。」





そうして僕は再びAnother World Onlineにログインするのだった·······





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