第7話 生産職と謎
「さて、そろそろいいかな。」
この始まりの町に到着してからはカイン達と一緒に町を案内してもらったりしていた。しかし、それにも終わりと言うものがやって来た。
現在時間は午後6時。僕が後ログインしていられる時間は後一時間半位。その後なら更にログインすることは出来るけど、流石に僕は夕飯を抜くほどゲーマーでは無かった。まあ、それは建前で本当はお母さんの美味しい料理が食べられるからだけどね。
「うん。ありがとうね。案内してくれて。おかげで色々よく分かったよ。ちょっと僕は鍜治屋に行こうと思ってるんだけど、誰かいい人を知らない?」
「あー、それならガレンの所に行くといいよ。彼ならこの大通りに店を開いてるから探せば直ぐに見つかる筈だよ。もし分からなくてもプレイヤーに聞けばきっと教えてくれるから。」
「ありがとう。それじゃあ探してみるよ。それじゃあ皆!またね!」
そうして別れの挨拶を交わして僕はそのガレンと言うプレイヤーの経営している鍜治屋を探し始めた。
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それからほんの数分でガレンさんの鍜治屋を見つけ出すことが出来た。
まあ、店先にかなり武器とか並んでたし、看板も結構分かりやすかったからね。
ああ、それと何で鍜治屋に来たのかと言うと素材の売却と装飾品の調達だ。
装飾品は主に、髪につけるのと腕、指、耳がある。まあ、お金の許す範囲で考えている。素材を売ったら結構なお金にはなりそうだけど。だって、レベリングの為に倒した魔物の数が数だしね·······いや、ホントに。ちょっと引くレベルであるからさ。
ああ、あとポーションとか売れば良かったよ。正直解毒効果のあるポーションを僕が持ってても無意味だし。資金の足しにしたかったなぁ·······そうは言ってももう後の祭りか······
まあ、いい。取り敢えず今は目の前の目的だ。
そうして僕はガレンさんの鍜治屋に足を踏み入れた。
「ん?いらっしゃい。あんたはこの店は初めてだな?」
そう言いながらこっちに出てきたガレンさんは僕のイメージとは違い、好青年風のドワーフだった。
ドワーフはこのゲーム内の種族でもトップクラスで鍛冶に向いていると言える。
その器用のステータス値はさることながら、レベルアップすればそういうのに特化したスキルも得られる。とにかく鍛冶をやりたい生産者にとっては格好の種族なのだ。
「はい。そうです。それで、今回来た訳なんですが、先ずはこちらの素材を買い取ってくれませんか?」
そう言いながらトレードウィンドウをガレンさんに提示する。
「おい·····!こりゃあ、あんたどうやってこんなに集めたんだ?しかも現状では中々手に入れれない『深緑の森』の魔物の素材をこんなに大量に······」
ああ、やっぱり驚かれちゃったか。まあ、仕方ないよね。だって、素材をホントにちょっと序盤ではあり得ないくらいに持ってるからね。因みにこれは魔物の素材だけで、他の薬草とかは含んでいない。後は錬成術で試してみたい魔物の素材をいくらか手元に残している程度だった。
「いや、ちょっとレベリングしてたらいつの間にかこんなに貯まったんでね。だから売却しに来たんですよ。査定。お願いしますね。」
「あ、ああ。ちょっと時間は掛かるが分かった。」
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それから待つこと数分。ガレンさんは査定を終えたようだった。
「それで、うちの買い取り金額は320000メルナになる。」
「えっ!?そんなにですか?それよりも、そんなに払えますか?」
「ああ、現状、『深緑の森』の魔物の素材は今は全く流通してねえしこれで武器なり防具なり作れば採算は取れるし妥当な額だ。それと支払いは問題ない。βからの引き継ぎ特典で、βの時の所持金の半分を引き継げるからな。これでも俺はβ時代はトップ鍛冶師だったからな。そのくらいなら問題はない。それで?あんたの最初の口振りからするとまだ用事があるんだろ?」
「あ、はい。あの、ガレンさんは装飾装備って作ってますか?」
「ん?まあ、武器防具ほどじゃないが作ってるな。それがどうかしたか?」
「それなら、それぞれを僕に売ってほしいんです。要望としては魔力と器用が底上げできる奴でお願いしたいんです。」
「お!そうか、買ってくれるのか。それで、魔力と器用だな。分かった幾つか見繕ってくるからそれから選んでくれ。」
そう言ってガレンさんは店の奥の多分作業室だろうと思う場所に入っていった。
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それから暫く待つとガレンさんが木箱に入れられたアクセサリーをいくらか持ってきてくれた。
「さて、こん中から選んでくれ。説明してほしいのがあれば説明するから遠慮なく言ってくれ。」
そう言われたので幾つか遠慮なく質問して、僕が選んだそれぞれの装飾装備がこちら。
(髪留め)
名前:魔力糸のリボン
レア度:3
品質:B
効果:魔力+10、器用+10、全MP消費-2
名前:魔力糸のブレスレット
レア度:3
品質:B
効果:魔力+5、器用+10、全魔法の威力+5%
名前:魔金属の指輪(低級)
レア度:3
品質:C
効果:魔力+15、器用+5
名前:闇のイヤリング
レア度:3
品質:C
効果:魔力+10、全闇魔法の威力+10%
という中々いい装備だった。勿論こんなに高性能なので値段はとても高かったよ。何と250000メルナ!
でもそのおかげでステータスもかなり向上した!
名前:マキナ
性別:男
種族:混沌龍
職業:魔法使い
称号:魔物の天敵、相反する者
ステータス
lv. 10
HP 300(310)
MP 350(370)
体力 25(+3)
筋力 25(+1)
魔力 54(+50)
器用 46(+25)
敏捷 13(+3)
耐性 25(+2)
特殊 13(+2)
残りSP:0
スキル
種族固有:(人化lv.─)、(飛行lv.4)、(ブレスlv.5)、(混沌のヴェールlv.1)、(混沌魔法lv.7)、(龍人化lv.─)
ユニークスキル:(時空間魔法lv.1)
通常:(刀術lv.6)、(鑑定lv.6)、(錬成術lv.5)、(採取lv.5)、(罠解除lv.3)、(テイムlv.1)、(MP自動回復lv.3)、(魔力操作lv.2)、(HP自動回復lv.2)、(統率lv.1)
選択可能:0
装備品
角兎皮のローブ
角兎皮のブーツ
角兎の手杖
粗鉄の刀
魔力糸のリボン
魔力糸のブレスレット
魔金属の指輪
闇のイヤリング
累計効果:(全MP消費量-4)、(全魔法威力+5%)、(闇魔法の威力+15%)、(全状態異常無効)、(全ダメージ10%カット)、(全魔物へのダメージ補正+1%)、(HP自動回復5/分)、(MP自動回復5/分)
それぞれ幾つかのスキルレベルアップと装備効果と職業、称号、スキルの効果補正を表示にしておいた。そっちの方が分かりやすいしね。
こう見てみるとやっぱりさっき買った装備の効果が凄い。多分これで今一撃で倒せない敵も倒せるのだろうと思う。僕自身はやるつもりはないけどPvPでも大きな効果を発揮しそうだ。ともあれこれで頭装備以外は整った。
でも、僕は頭装備にヘルムを使おうとは思っていない。確かに防御力は高いけどどうしても視界が阻害されるからね。僕は余り好きではない。ま、おいおいプレイしている内にいいものが見つかるだろう。
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────とある未解放エリアの遺跡────
静かに森の中に佇む古めかしい遺跡のとある壁にはこんな文字が彫られていた。
『ソナタ等はこの世界で何を望む?遥々ここより異界の地から出でてこの世界で何を為す?もしもソナタ等がこの世界を壊そうとするのならば──────必ずソナタ等を─────するだろう。しかし、この世界の住人と共存を望むのならば、果たしてこの世界に何をもたらそうか。そして、ソナタ等が娯楽感覚で来ているこの世界が─────本当の意味での────ならばソナタ等はどうするのであろうな。』
──────────いつか二つの世界は交わろう。多大なる犠牲を以て。