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第6話 助太刀と町




さて───────助けると決めたが先ずは敵の戦力の分析からかな。



ふむ········見たところはキラービーが10体程度といったところかな?まあ、それくらいなら今の僕の力でも楽勝だからいいんだけどね。


後は······僕がいきなり空から現れたら驚くだろうから、彼らが気付かないように少し離れた所に降りるくらいかな。




そうと決まればさっさと助けますか!!







■■■■






『クゥッ!!エリナ!!そっちに一体行ったぞ!!』


『えっ!?こんな忙しいときに!!』





僕が近付いて行くと彼らの逼迫した状況がひしひしと伝わってくる。



「不味いね·····もう少しスピードを上げるか。」



僕はギアを一段階上げて急いで彼らの元に向かう。だって万が一これで間に合わなかったら、一度助けると決めたのに示しがつかないからね。なるべく迅速に片付ける!!



僕は走りながら魔法の準備に入る。今回使おうと決めている魔法は『混沌魔法』の『ファイアウィンド』だ。この魔法は火属性の範囲魔法で、今回のような虫相手ならよく効く。それに相手は見ていたところ密集していたので、恐らくこの魔法一発で3体位は倒せる見込みだった。



僕がそうこう考えている内にキラービーを射程内に捉えた。


僕は万が一にも彼らが射線に入らないように大声で呼び掛ける。




「助太刀するよ!!今から魔法使うから僕の前に出ないでね!!」



僕はいきなり出来る限りの大声で叫んだので彼らは一瞬ビックリしたようだったけど、慣れているのかすぐに頷き返してくれた。



さて、これで心置きなく魔法をぶっ放せるね!!



「『ファイアウィンド!!』」



先ずはこの先制で三匹を片付ける。その際一撃で倒したからなのか彼らは非常に驚いた様子だったけど、今はそんなことを考えている暇はない。



「『ファイアウィンド!!』」



続いて2発目で更に3体を巻き込んで倒す。この時スキルレベルが上がった。


残るは4体だけ。これなら彼らでも対処可能だろうと思った僕は再び彼らに呼び掛ける。



「これでいける?!!」


「ああ!!済まない!!」



どうやら大丈夫なようだったので僕は彼らの邪魔にならない位置まで退いて彼らの戦いを見守ることにした。



「ミリア!回復頼む!!」


「ええ!任せておいて!」


「バン!!お前はそっちのヤツを頼む!!」


「ああ!任せとけ!」


「エリナ!魔法で援護頼む。」


「分かったよ!!」


「ジュン!!お前は背後のヤツを頼んだ!!」


「了解!!」



ふむ、どうやら彼らは仲が非常に良いらしくとても息が合っている。


それこそ見ている僕にも分かってしまうほどにね。恐らく彼らはこのゲームの中でも現在のトッププレイヤー達なんだろう。





そこから建て直しを図った彼らの連携は見事なものだった。


前衛の男3人がキラービーを引き付けつつ隙を伺ってはダメージを与える。


そして、後衛の女二人の内一人は前衛の男の誰かのHPが半分を割ればすかさず回復。もう一人は前衛の男が剣か盾で敵の攻撃を受け止めた後、絶妙なタイミングで魔法をぶつける。それで敵のひるんだ所を前衛の男が決め手に。そしてフィニッシュ。




気づけば僕はそれに見入ってしまっていた。それほど素晴らしい戦いだったのだ。特に彼らの連携は鮮やかでこれこそ戦いの芸術と言ってもいいのではないかと思う。ソロである僕では味わうことの出来ない経験だ。



「お見事!!見事な連携でした!!」



僕はそう、素直に感じたことを彼らにぶつける。



「いやぁ、ありがとう。こちらこそ危ないところを助けてもらったよ。おっと、自己紹介がまだだったな。俺はカイン!種族は『人間ヒューマン』だ!」


「次は俺だな。俺はバンだ。種族は『獣人ワービースト』。」


「次は僕だね!僕はジュン!種族は『エルフ』だよ!!」


「次は私ね。私はミリア。種族は『人間ヒューマン』よ。」


「最後は私ね。私はエリナ!種族は『ダークエルフ』!!」



どうやらこの流れだと僕も彼等に自己紹介しないといけないね。ここで自己紹介しないのは失礼だし─────しかし、どうしようか。僕の種族を素直に伝えるべきか?いや、彼らを信用しよう。彼らならきっと大丈夫!



「次はこっちの番だね。僕はマキナ。種族を言う前に1つだけ約束してほしい。僕の種族を誰にも言わないで欲しいんだ。いいかな?」



僕はそういった。正直あまりよくないだろうとは思ってるけど、それでも今の僕の種族を余り広めたくない。こう言っては他のプレイヤーの人に失礼だけど、僕の種族は特殊だ。



「ああ、別に俺はいいぞ。皆は?」



カインが直ぐに僕の条件を受け入れてくれた。



「俺も別に構わない。」


「僕もだよ!」


「ええ。私も構わないわ。」


「勿論私もそれでいいわ!」


「だ、そうだぞ。マキナ。」



ああ、本当に好い人達だ。



「ありがとう。カイン。それに皆。」


「いいよいいよ!マキナは私達の恩人何だから!ねっ?」


「そうよ。マキナが気にする必要はない。」


「ありがとう。それじゃあ、僕の種族は──────『混沌龍カオスドラゴン』だよ。」



僕がそう言うと皆一斉に頭にクエスチョンマークを浮かべるような顔をしてしまった。



「えっと、マキナの種族ってもしかして希少種族なのか?」



カインがふと思い付いたように聞いてくる。


まあ、それくらいなら答えても問題は無いだろう。



「その通りだよ。あと、先に言っておくけどスキルとかは聞かないでね。」


「勿論だよ。他人のスキルの詮索はご法度だからな。ま、それにしてもマキナって凄いよな!どんなステータスしてたらキラービーを一発で倒せるんだよ!?」



カインが興奮ぎみで聞いてくる。


どんなステータスって········ごりごりの魔法火力特化だよ·······近接と防御にも多少優れてるけど。



「まあ、それはご想像に任せるよ······と言いたいけど、もう分かってるんじゃない?」


「まあ、そりゃあな。あんな火力見せられたら誰だって魔法特化だと思うよな!」



まさにその通り!的を射ている。



「ねぇ、それにしてもマキナってぼくっ娘なのね!私初めてそんな()()()を見たよ!!」


「そう言えばそうだよな。アニメとかだとたまに見るけど、やっぱり現実でそういうのあんまり聞かないな。でもマキナってそれめっちゃあってるよな。」



えっ!?待って待って。


女の子!!?僕が女の子!!?確かに見た目完全に女の子ですけどこんな至近距離で気づかれないの!!?


僕って、僕って········男、なのかなぁ······



「ちょ、ちょっと待って!!」


「あれ?どうしたの?マキナ。」


「あの、その、僕は()だよ!!」



その瞬間その空間は止まった。いや、正確には凍り付いたが正しいのか。


暫くして漸く再起動できたのはカインだった。



「あー、その、ゴメン。な。いや、まさかその容姿で男だとは思わなくてな。」



カインがちょっと遠い目で謝ってきたので、僕は少しジト目で睨んだ。



「うっ。悪かったよ。ホントにごめんって!ほら!皆も謝って!」



カインがそう言うと皆一斉に謝ってくれた。



それからまた暫く経ってこの五人とフレンド登録を済ませて一緒に町まで連れていってくれることになった。







■■■■





─────始まりの町 クレセント─────





この町はこのゲームの開始地点になっている。その為、この町はこのゲームの世界でもトップクラスの大きさを誇っている。


たまにゲーム内でこの町が属している国────セレイア王国────の国王がやって来ては祭りを開くらしい。


このセレイア王国は公式での設定で世界一平和な国家とされていて、王様による独裁政治でありながらも国民の笑顔は絶えない。


そう設定されている。当にその通りで僕が町に入ってからはどの国民(NPC)も笑顔で溢れている素敵な町だ。




そして、暫く進んでいる内に気が付いたのだけれど何故か僕たち(主に僕)が周りのプレイヤーの目線を集めている。


気になったので僕はカインに聞いてみた。




「ねぇカイン。何かプレイヤーの視線がこっちに向いてる気がするんだけど······何でかな?」


「ああ、ゴメン。それは多分、俺たちってこう見えて結構ゲーム内で有名なんだ。こう言ったら自慢になるけどβテスト時代には俺たち五人で最強のパーティーとか言われてたから。多分その俺たちと一緒に居るマキナの事が気になるんだろう。」



ああ、そう言うことね。僕はβテストには当選出来なかったから彼等の事を知っていないけど、知っている人は多分、調べたのか聞いたのか、それとも同じくβテスト参加者なのか。



「ああ、そう言うことね。僕はβテストには当選してないから、君達の事を知らないんだ。ごめんね。」


「あ、いや、謝らなくていいんだよ。別に俺たちは有名人になりたい訳じゃないし。それよりもマキナこそ注目されてるし·····それこそ掲示板に載っちゃうかもしれないな。」



あれ?そうなの?掲示板にって、そんなに僕が珍しいかな?



「そう?まあ僕は構わないけどね。僕に不利益が被らない限りはね。」


「そ、そうか。」



ちょっと引かれた。僕ってそんな顔してたかな?






■■■■






都内某所『アビス』本社



サービス開始直後ということもあり、社内は喧騒としていた。



その中で、大型のモニターを見つめている女性が一人居た。




「主任?どうしたんですか?そんなにモニターを見つめて。」



その主任と呼ばれた女性はこう答える。



「いえ、ちょっと面白い(プレイヤー)を見つけてね。」



そう言って僅かに微笑んだ。







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