8:再会
「はぁ…幸せ…」
セアは羊の肉を噛みしめている。
「お風呂も食べ物ももらっちゃって、ありがとう」
「気にすんな!可愛い弟と妹のためだ」
森を抜けた村で、2人に声をかけてきた男の名はイアン。
アーシルとセアの孤児院での先輩だ。3年前に2人に先駆け退所している。
「しかし、大きくなったな」
イアンは、アーシルとセアの頭をわしわしと撫でる。
「イアンの方こそ、すごく大人っぽくなったね!」
「うん…その髭は変だけど…」
「なんでだよ、かっこいいだろ?」
イアンは笑いながら、無精髭をしょりしょりと触る。
「それで、だ…2人はどうしてこんなところに?」
イアンに問われ、2人はこの村にたどり着いた経緯を話した。
仕事が見つからず、仕方なく街を出たこと。途中で巨大な熊型のモンスターに会い、道を逸れたこと。そして森の中で迷い、結果としてここにたどり着いたこと。
顛末を話したところで、イアンは突然笑いだした。
「そうか!お前達もか!」
イアンはくっくっと笑いながら膝を叩いている。
「お前達も…?」
「俺もなんだよ!3年前だけどな」
イアンも、3年前に街を出た後、同じように熊型のモンスターを避けて森に入り、この村にたどり着いたらしい。
「さらに笑えるのが、あの熊型のモンスター…人を一切襲わないんだと!」
「えっ?」
イアンも、この村で教えてもらったらしいのだが、あの巨大な熊型のモンスターは、基本的に木の実や蜂蜜しか食べない。また、巨体ゆえに襲われる心配がほとんどないため、自分から攻撃をしかけることもほとんどないそうだ。
「でも、セア達を真っ直ぐ追いかけて…」
「森に入った後、ナイフで木に傷をつけて進んだだろう?」
「うん…」
「あの森の木は、傷をつけると蜜がでるんだ。それが、あの熊型モンスターの好物なんだと」
つまり、ただ蜜を舐めていただけで、襲うために追いかけてきたわけではないと。
アーシルとセアは、はぁっと肩を落とす。早とちりで苦労してしまったらしい。
「それでも、だ。知らないモンスターを警戒する判断は間違っちゃいねえよ」
イアンは2人を見て、にかっと笑う。
「結果的に、俺はこの村にたどり着いて、傭兵として雇ってもらえたしな」
イアンはモンスターや盗賊の襲撃からこの村を守ることを条件に、住まわせてもらっているらしい。
この村に住んでからの生活を聞かせてもらった。
それから、3人は昔話に花を咲かせた。
人心地ついた頃に、アーシルがふと思いだし、イアンに聞く。
「そういえば、村の入り口に男の人達が集まっていたけど、あれは?」
「ああ、あれはな…」
イアンの表情が少し暗くなる。
「昨日の夜、家畜がモンスターに襲われたらしい。それも、目撃した奴の話では、聞いたこともないタイプのモンスターだ」
イアンは真剣な表情に変わり、ぎゅっと拳を握り、2人に向き直る。
「なあ、ひとつ手伝ってくれないか?」
イアンはそう切り出した。