7:森を抜けて
森をさ迷って2日がたった。
相変わらず方向感覚が掴み辛い森だ。元の道からどれぐらい離れてしまったんだろう。
幸いにして、食料には困らなかった。
セアは口に木の実を放り込みながら、ため息をつく。
「お風呂…入りたい…」
「さすがに、水浴びくらいはしたいよね」
アーシルは自分の髪を弄りながら、セアの独り言に同意する。
孤児院にいた頃にも、野営の訓練はしてきたが、所詮は街で育った2人。ベッドなし、風呂なしが数日続くのは地味に辛かった。
「あとは…美味しい羊のお肉…」
セアがそんな話をするものだから、アーシルもお腹がすいてきた。
気のせいか本当に肉を焼いた匂いがする気がする。
「お肉の…匂い…」
セアは鼻をすんすんと鳴らした。セアまで幻覚を見だしたのだろうか。
「アーシル…お肉の匂い…!」
セアはアーシルの肩をぱんぱんと叩いた。
アーシルははっとして、注意を凝らして匂いを嗅ぐいだ。
「…?本当に肉を焼いた匂いがする」
近くに人がいるのかもしれない。2人は弾かれるように走りだした。
木々をかき分けて進むと、だんだんと光が射し込んできた。
「森から出れるよ!セア!」
「…うん!」
森を抜けた2人は、久しぶりの明るさに目を眩ませた。
少しずつ慣れてきた目で辺りを見回すと、丘の上に小さな集落を見つけた。
「村だ!」
アーシルとセアは、久しぶりの人の気配に喜んで駆けていく。
近づくにつれ、先ほどした肉を焼いた匂いも強くなる。太陽の位置からすると、昼ご飯の時間だろうか。
村の周りには、柵で囲まれた広い土地がいくつも見える。その中には、牛や羊が数多くいる。牧畜を営んでいる村のようだ。
村に近づくと、入り口にあたるであろう、木でできた門のようなものが見えた。
そこに、村の男らしき者達が集まり、何やら話し合いをしているのが見えた。
アーシルとセアが近づくと、その中の1人が気づき声をかけてきた。
「お前達!もしかして…アーシルとセアか!?」
そこには、アーシルとセアの見知った人物がいた。