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スリーピングナイト  作者: 深崎藍一
1章 出会いと呪いの交錯
10/18

1章ー8話 屋敷探索と桃色魔法使い

更新滞っててほんとにすいません。Twitterとかでも言ったんですがインフルエンザの後に見事に肺炎で入院してました。2018年一発目の更新どうぞ!

ーーー屋敷を見て回ってこられてはいかがですか?


 そんなユキノの言葉を受けてエスメラルダ、そしてグレイの両名と屋敷の案内をしてもらうことになったのだが。


「なあ...やっぱり言うけどさ。」


 二人の少し後を歩きながらおずおずと小さく挙手して発言しようとする。


「ん?」


「え?」


 二人は同時にこちらを振り返ると二人とも疑問の声を漏らす。その態度を見て俺は大きく息を吸い込むと精いっぱい声帯を震わせた。


「この屋敷広すぎだろぉぉぉぉぉぉお!」


 そうやって今は自分の記憶にしか残っていない空白の三日前に街の中叫んだ声を再び轟かせたのだった。


 ぜえぜえと肩を上下させる俺を二人がキョトンと見つめている。それも当然だ、突然後ろの目付きの悪い男が奇声を上げたのだ、驚くのも無理もない、ないのだが少し俺の話も聞いてほしい。


「なんなの!?まだこの世界に慣れていないとはいえ俺がおかしいの!?もうすでに紹介すべき箇所が両手の数を超えてるってどういうことだよ!まだ三つある棟の一つ目の三階だよ?しかも大体の紹介がここはあんまり使わないね...ってどういうことだ!?」


 そう追加で叫び終わると、エスメラルダもグレイも思うことがあるのか気まずそうにフイっと目線をそらす。


 ユキノの提案を受け食堂を後にし、広大な屋敷を二人の後をついて回りすでに約30分。初めの方は目新しいものばかりで目を輝かせていたのだが、食堂のある一階を回り切ったあたりで少し嫌な予感はしていたのだ。


 もちろん先ほどの叫びからお察しの通りその嫌な予感は当たる。


 一階はまだ良かった。大浴場に食糧庫から始まり武具庫や物資が大量に詰め込まれた物置等、日常生活で使うと言っても過言ではない部屋だったのだ。

 

 しかしながら、二階に上がってからは正直何のためにあるのか理解不能な部屋でいっぱいだった。ダンスホールだのなぜか木々が生い茂った部屋だのこの屋敷に住んで長いであろう二人が説明に困る程意味のない部屋のオンパレードなのだ。そりゃ、そろそろ叫びたくなる。


「い、いや。僕たちも疑問を覚えなかった訳じゃないよ?正直ツヅミに改めて紹介してて、あれ、そういえばこの部屋何に使ったりしたっけ?ってなったんだよ。」


「そ、そうよ!結果的に今まで使ってこなかっただけで需要はきっと...その...」


 どんどん尻すぼみになっていくエスメラルダの言葉を聞きながらやはりこの屋敷と長い付き合いの二人でも疑問を覚える部屋が多いことを感じ取り、先ほど急上昇したはずの領主、アルカナへの信頼度がまた徐々に下がっていく。まだ会ってすらいないというのに評価の上がり下がりが激しい人である。


 どんどん冷下して行く場の気まずい空気を感じ空気を破壊した張本人ながら明るい声を出す。


「き、気を取り直して次の階に行くか!」


「あ、ちょっと待って。」


 無理をしてテンションを高くし、笑顔を張り付けて発した言葉に少し言いにくそうにグレイが返してくる。


「ここから上、四、五階は君が寝ていたような客人用の個室とか僕たちの部屋しかないんだ。だからこの中央棟はもう終わりだよ。」


「...」


 どこまでも出鼻とやる気をへし折って来る建築物だ。なぜか周りの柱や壁に笑われている気すらする。無駄にテンションを上げていい顔を作ったせいで恥ずかしさが尋常じゃない。


 肩を震わせながらエスメラルダを見れば笑いを必死に堪えているのがさらに恥ずかしさを加速させ自分でも顔が赤くなっているのが分かる。


 しかしそこであることを思い出す。


「なあ、グレイ。俺が寝てたのが五階だろ?まだその上へつながる階段があったはずなんだがさらに上には何もないのか?」


 そう問いかけるとグレイは少し驚いたような顔をして返答してくる。


「へえ、意外に目端が利くんだね、そこから上は本当に使わないよ。僕もここに来て長いけど使うどころか立ち入ったことも一度しかない。アルカナの許可がないと入れないように術式が組んであるからね。」


「へえ、そんなに厳重なのか。」


 フラフラと上に昇らなかった朝の自分を褒めつつ会話を続ける。


「で、何があるんだ?上には」


「聖堂だよ。六階より上は塔のようになってるんだ。それを昇ると大きな聖堂がある。」


 そう言ってエスメラルダが少し気まずそうに答える。その態度の理由が分からず首をかしげるとエスメラルダが目線を逸らしながら、こう言ってくる。


「本当に一度も使ったことがないから...」


「ああ...」


 再びエスメラルダとグレイが目線を下に向け気まずい雰囲気が漂う。少しの痛い沈黙の時間が過ぎエスメラルダが破る。


「さ、さあ。まだまだ紹介する所は気が遠くなるほどあるわよ?アルカナが戻ってくるまでじゃ、回り切れないかもしれないわ。昼食までに東棟まで回らなくっちゃ間に合わないから急がなきゃ。」


 そう言って先程までの空気を感じさせない笑顔を見せるエスメラルダに俺とグレイは顔を見合わせて苦笑いする。そして、予定通り東棟と呼ばれる建物に向かおうとするエスメラルダをグレイが制止する。


「あ、待ってください、エスメラルダ様。東棟よりもまずは西棟に向かいましょう。」


「どうして?」


 急な予定変更にエスメラルダが首を傾げる。するとグレイが理由を説明し始める。


「昼食までに一つ区切りをつけるなら西棟の方がいいと思いますよ。何しろ東棟はアレなので、ツヅミが必ず興味を示しますし、どうせ湯浴みを済ませた後僕は毎日あそこに行くのでその時に紹介しておきますよ。」


 そう言い終わると、エスメラルダは納得したように、そうだったわね。と呟くと進路方向を真逆に変える。


「行こう、ツヅミ。残念だけど東棟はお預けだよ。風呂上がりに取っておこう。」


 そう言いながらいたずらっ子のような片目を閉じた笑顔でエスメラルダを追うグレイに笑顔で応じ少し遅れながら二人を追う...笑顔を造りながら。


(なんだ、今感じた違和感は...?聖堂の話をしたときに微妙な陰りがあった。何かあんのか。)


 実はこの高宮皷という男めちゃくちゃ洞察力が鋭い。人の癖やら違和感を感じ取るのがめちゃくちゃ得意である。しかし、本人はそれを良しと思っていないのが辛い所である、なぜならその洞察力で感じられるのは違和感まででそれが地雷かどうかまでは判断できず踏み抜く可能性大だからである。


 小学生の時に女子の秘密を暴いてはっ倒されてからはなるべく口にしないようにはしているのだがそれを違和感だと自分でも気づかずに傷口に触ることもあり完全に封じることができないのが悩みの種なのである。


 しかし今回はそのおかげでもう一度自意識を引き締めることができた。


「そうだ。俺はまだ所詮客人扱いなんだな。」


 そう、まだ自分は客人扱い。信用も信頼も少しの綻びで傾いてしまう立場。異世界という場所に未だ自分の居場所は作れていないのだ。

 それをもう一度刻み込みながら襲い来る孤独の気配に立ち向かいながら少し速足で二人の背中を追っていく。


 しかしその後は、少しの違和感にブルーになったのが馬鹿らしいように穏やかに過ぎる。違和感を感じたからと言って二人の良さが変わるわけでもなく見方も変わらない。つまらないことで疎外感を感じていた自分を恥じながら、1度1階に降りた後、西棟に通じる花に彩られた見晴らしのいい渡り廊下を進んでいく。


 そして、エスメラルダが突き当りの渡り廊下の扉を開けると中央棟とは随分と趣の違う風景が目に飛び込んでくる。中央棟は赤を基調とし、豪華な絵や訳の分からない彫像が並んでいたりしたのだがこっちは青と白を基調し無駄な装飾品はなく落ち着いた雰囲気。


「...随分と中央棟とは感じが違うな。ま、小市民の俺としては無駄に豪華すぎない方がありがたいけどな。」


「何言ってるのかよく分からないけど、そうだね。屋敷の主、アルカナの意向でね。この西棟は落ち着いた色にしたいってことなんだ。見て回れば理由もわかってくれると思うんだけどね。」


「まあ、と言ってもこの棟は1階に一つしか施設がないから紹介のし甲斐があまりないのだけれど。」


 そう言ってグレイとエスメラルダがそれぞれの反応を見せながら早速奥の大きな扉を開くと飛び込んできたのはおびただしい量の本棚と紙の匂い。小さい頃に行った図書館なんて目じゃないような本の貯蔵量に開いた口が塞がらないという言葉を体現してしまう。それを見て横の二人がニヤニヤしているのが少し気になるが。


「どうだい、驚いたかな?王都の王城図書館とかを除くと本や魔導書の量はちょっとしたものだって聞いてるよ。」


「てか、こんなに本があってコンピューター無しでいざという時本探せんのか?」


 すると、エスメラルダがフフンと胸を張り


「こんぴゅーたーはちょっと意味が分からないけどこの図書館もアルカナの魔法で制御されてて欲しい本が飛んでくるのよ。」


 例えば、と呟くと。本の題名を口にする。


「四季の魔女」


 すると、手前の本棚から光ながらするりと一冊の本が飛んでエスメラルダの手に収まる。軽い挿絵が施された本を、ほらね。と掲げながら驚く俺の反応に満足したのか、かわいらしい笑顔で勧めてくる。


「ね、ツヅミも何か本を呼んでみたら?いつかここを使う機会もあるかもしれないし。」


「ええっと...」


 勧めてくれるのは良いが何しろこっちの本など一つも知らない。エスメラルダや身なりのおかげで今は出身地やその他諸々のことは疑われていないものの、さすがに本の一つも知らないとなると疑われても仕方ない。


 それが頭に浮かび冷汗が背中に浮かぶ。後ろから二人の視線が背中に刺さりさらにそれが加速する。実際はエスメラルダはワクワクしたような期待した視線を、グレイは少し面白がるような視線で見ているだけなのだが。


「(どうする?テキトーに日本の絵本の題名言ってみるか?それで無くても言わないよりマシ...ああ、でもこの図書館かなり大規模らしいしここにもないマイナーな本言う方が怪しいか?)」


 そんな答えのない疑問が頭の中でぐるぐる回っている内に時間だけが過ぎていく。そして少しグレイが訝しむように肩を叩こうとした瞬間。広い館内に少し幼さを感じさせる高い声が木霊した。


「何を騒いでるの?ボクの研究所の階下やかましいよ~ここ仮にも図書館だよ~?」


 そう、俺たちに言いながら上へと繋がっている螺旋階段を気だるげに伸びをしながら一つの影が下りてくる。それを見てグレイが大きなため息を一つ吐く。


「文句を言いたいのはこっちだよ、またこんな時間まで寝てたんだろ?とっくに朝食は終わってるよ、むしろもう昼食の方が近いよ。いい加減君を起こすために屋敷のあちこちを探して回るユキノの苦労を汲んであげて欲しいんだけどね。」


 すると、降りてきた影は一つあくびをするとテキトーに返事をし、グレイの顔を曇らせていた。言っても無駄と判断したのかグレイは表情を元に戻すともう一度言葉をかける。


「とりあえず、おはよう。フラン」


 フランと呼ばれた人物は、桃色の短い髪の上にいかにも魔法使いと言ったような長い帽子を被り、髪と同じ桃色の寝間着に身を包んでいる。顔は可愛らしいものの中性的であり少し赤みがかった双眸には理知的な光が宿っているし、一人称が「ボク」であるため、少年と見間違えそうになるがどうやら少女のようだ。


 すると、フランと呼ばれた少女は、想像通り知的な澄んだ声で、おはようとだけ返すとグルンと俺に向き直ると興味を示したような顔で俺を見てくる。


「うーん、黒髪に黄色い目?珍しい...というよりも聞いたことないけどなんか特殊な種族なのかな?でもそんな種族も聞いたことないし特異体質かな?」


 急に目を輝かせ、ぐいぐいと質問の嵐をぶつけてくる少女に気圧されているとエスメラルダが、こーら。と優しく頭にチョップする。


「駄目でしょ、フラン。初対面で挨拶もせずに質問攻めにしちゃ。ツヅミもごめんね?興味があることを見つけるとこんな風に周り見えなくなっちゃう子だから。悪気はない...?ないみたいだから。」


 エスメラルダですら疑問を覚えるレベルなのはどうかと思うがどうやら悪気はないらしく、桃色の髪を揺らし右手を差し出してくる。


「初めまして、名前はフランという。ボクのことは気軽にフランと呼んでくれ。」


 そうやって見た目に似合わないニヒルな笑みで自己紹介してくる。俺もそれに倣い右手を差し出しながら自己紹介していく。


「おう、初めまして。名前は高宮皷だ、さっきの質問だけど別に特別でもなんでもないよ。純人間だぜ。」


 地球人、ひいては日本人がこっちでどういう扱いになるのかは分からないが人間であることは間違いないと思うし、黄色い眼に関しては原因すら全く分からないし、鏡を見る度に自分ですら違和感を感じるのだ。正直自分で自分が分からない状態なのであまり大きくは言えないが。


 すると、グレイが一段落したのを見計らって手を叩いて話を中断させる。


「はい、悪いんだけど西棟の紹介急がなきゃダメだから。フランも早く食堂に行って朝ごはん作ってもらってきなよ。続きは昼食の時にしよう。」


 そう言って屋敷案内の続行を申し出るとフランは、ふむ。と首肯すると、そろそろボクの胃袋も限界だったのでちょうどいいと言い振り返り食堂へと向かう。そして俺たちはフランが降りてきた螺旋階段を昇ってゆく。


 そんな中フランが机の上に置き忘れられた絵本を手に取っていた。


「全く、本を置きっぱなしにするとは。騒ぐだけでなく図書館のルールを軽く見ているな...」


 そう少しため息とともに文句を吐き出すと裏向けて置いてあった本を手に取る。そしてその本のタイトルを見て少し表情を憎々しげなものに変える。


「趣味が悪いな...」


 そうやって本を棚に返しながら小さく呟いたのだった。


***********************************


「中央棟といい、ここと言いホントにスケールが違うな...」


 今俺達が今いるのは、図書館の上にあっただだっ広い読書スペースやらアトリエやらが乱立した芸術スペースの二階のさらに上である3階。先ほど出会ったフランが主に使っているという研究室。


 冒頭のセリフがの原因となったほど広い階内には、魔術書が所狭しと並べられた本棚やいかにもという実験器具、進んだ先には驚くほど奇麗な石が乱立する棚があった。それに目を輝かせているとグレイが少し驚いたように説明してくれる。


「それは魔水晶って言ってね、それぞれの属性の魔力が蓄積されている水晶なんだ。勝手に触るとフランがキレるから止めといて欲しいけどね。」


「ほえー...」


 俺が魔水晶を眺めていると、エスメラルダが驚きを隠せないといった風に言ってくる。


「魔水晶を知らないの!?」


 その声を聞いてようやく自分がやらかしてしまったことに気づく。先ほど図書館であれだけ注意を払っていたにもかかわらず、早速ボロを出してしまった。


「...いやー家が辺境過ぎてな。すまないな、常識知らずで。」


 明らかに苦しい言い訳だがエスメラルダは急に違うの、常識知らずを責めてる訳じゃないの等とあたふたとしている。

 疑うことを知らないその心根の抜けきらない甘さに苦笑する。そしてグレイの方を向くとグレイも全く疑う素振りすら見せずおかしそうに俺たちのやり取りを見ている。


 またしてもこの二人に色々と誤魔化そうとしてきたことが馬鹿らしく思え、猛省しながらいっそのことと開き直り、もう一つ気になっていたことを質問する。


「なあ、さっき各属性の魔力って言ってたけど属性ってどのくらい種類があるもんなの?」


 途端、先程までの空気が一瞬で霧散しエスメラルダとグレイが顔を見合わせる。先程とはレベルの違うことを質問してしまった気がして少し背中の汗が復活してくる。


「あのね、ツヅミ。本気で言ってる...?」


 エスメラルダが恐る恐るといった様子で聞いてくるもののこっちは大まじめである。問いに頷くとエスメラルダは目を泳がせながら言ってくる。


「本来は物心ついたら真っ先に教わるはずなんだけど...」


 そう言われても仕方ない、何しろ魔法など存在しない世界育ちなもので。そんなことをいう訳にもいかず少し気まずい愛想笑いを浮かべるとグレイがさすがに困った様な顔をして説明してくれる。


「この世には主に赤、青、黄、緑の四種類の魔力があってね。使える魔力の色によって使える魔法が変わって来るんだ。例えばエスメラルダ様なら青の魔力を持ってるから氷の魔法を主に使うし、ユキノなら緑だから風の魔法を使うんだ。」


「へえ、面白いな。グレイは何色なんだ?」


「僕は、無色だね。誰でも色があるわけじゃないからね。」


「無色!?そんなのもあるのか。」


 するとグレイは少し疲れたような顔をして続ける。


「無色の魔力を持つ人は魔力はあるけど魔法は使えないんだ。そもそも、魔力を持って生まれて来る人は少ないんだ。十人に一人いたらいい方だよ。その中で魔力に色が有って魔法を使える人は百人に一人。だから魔法使いはすごい貴重なんだ。」


 その答えに少し疑問を覚える。


「じゃあ、無色の人は魔法を使えないのに魔力を何に使うんだ?」


「そうだね、普通の人なら魔力を使う道具が使えるからそれを生かして仕事についたりするんだけど...僕みたいな剣士だと」


 そういうと、グレイは近くの戸棚置いてあった教鞭のようなものを手に取ると少し力を込めるようなしぐさを見せる。


「おおっ!」


 すると、教鞭にふわふわと透明色のオーラのようなものが纏われている。それはグレイが力を抜くと霧散していく。


「見ての通り、こうやって武器にまとわせたりすると武器の強度とか切れ味が全然違うから無色でも全然使えるんだ。」


 そうなって来るとやはり気になってしまうのは、これだろう。


「なあ、グレイ。俺にも魔力ってあるのか?」


 その問いかけにグレイは、うーんと唸るとこう答える。


「ごめんね、僕には魔力の色はおろか魔力の感知すら出来ないから今はわからないとしか言えない。」


「エスメラルダは?」


 そうやってエスメラルダへ向き直り問いかけるもののエスメラルダも申し訳なさそうに首を振る。


「ごめんなさい、私も魔力の感知は得意じゃないから分からないわ。あ、でも、お昼ごはんになれば調べてもらえるわよ!フランは魔力のスペシャリストだから。あと、お昼ご飯の時が無理でもアルカナが帰ってくれば分かるわ。アルカナも魔法のことに関しては凄いなんてものじゃないから。」


「ホントか!期待が高まるぜぇ!」


 さすがはファンタジー。ようやく俺が主人公スキルを手にする時が来たかと自らの輝かしい未来に思いを馳せているとまたしてもグレイが焦ったように言ってくる。


「そろそろ急いで回らないとお昼ご飯に間に合わないよ。四、五階はパパッと見て回ろうか!」


ーーーそうして、絵や陶器が並ぶ四階、そしてパーティー用の大ホールがある五階を見て回り食堂へと向かっていくのだった。







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