episode:003 サバイバルの第一歩
船内時間で200年、船外時間では3万年が経過していた。
ミライは他の船員を探すため、船内の探索を開始することにする。
船室を出ると、通路は闇に包まれていた。
「暗い・・・」
元来、生き物は闇を嫌う。
それは、生存本能の故なのだろうが、何も見えない、自分の置かれている状況が分からず、目の前の危険に気づけない事には恐怖を感じる。
「通路のシステムにアクセス。
明りを点けます」
うさちゃんが私の思考を読み取り、明かりをつけてくれた。
通路に明かりが灯り、通路の先まで見渡すことができた。
しかし、人の気配は全くしなかった。
船内は広い。
コールドスリープに入る前に、船内を散策したことがあったが、それでも船全体の数%程も動いていないだろう。
無作為に動くこともできなかった。
扉一枚の向こう側が真空の宇宙空間だという場合もあるのだ。
「サツキ様。制御室は右です」
「どうしてわかるの?」
先ほど、うさちゃんは地図にはアクセスできなかったといわなかったか?
「目の前のマップに表示されています」
見れば、目の前には案内図があった。
「ふふ、そうみたいね。気づかなかったわ」
目覚めてから、初めて笑った気がした。
■制御室
宇宙船において、操縦室(または制御室)が飛行機のように宇宙船の先端部や軍艦のように甲板を見渡せる部分にある必要はない。
周囲の状況は何万というセンサーで監視され、隕石や有害な宇宙線、スペースデブリ(宇宙ゴミ)等の監視を行っている。目視でこれらの危険性を監視、把握することは不可能であり精密な計測と演算によって安全な航路を選択している。
移民船においては、航路の選定は何万というシミュレーションを行い常に最善の航路を導き出す。
そこに人間の勘や経験は介入せず、完全なる自動化によって成り立っている。