あ
私は降りようと思ったが、私があんまり走ったのでそれより先に鬼は「誰だ誰だあ」と言って大木が四十本はあるかという手を伸ばしてきた。私は必死に走ったが手の方がずうっ早いと見えて追いつかれてしまった。もう少しで潰されそうになったが、死にたくない!と思い、間一髪でしゃがんだので手は私の上をかすめていった。私はもう転がり落ちんばかりの勢いで降りていったが、酷いことに鬼は体を起こしてしまったのである!私は真っ逆さまに落ちていった。地が迫ってくる。危ない。ここで私は手に触れたものがあったので、引っ張ってぶら下がってなんとかよじ登って助かった。よくみるとそれは鬼のパンツなのだった。私は青ざめ上を見上げると鬼は歯をギラギラさせてにたにたしながらこちらを見ている。私はもう逃げられないと思って目をつぶった。「お前はなぜここにきたのだ。」と大声で鬼が言うので、えいもうどうにでもなれと思って「鬼を退治しに来たのだ。」と叫んだ。鬼はもうにたにただけでは抑えられないらしくわははと笑った。ごうごうと風が鳴り、木が何本も吹き飛ばされた。あともう少し鬼が下を向いて笑っていたら、あともう少し私がパンツを掴み損ねていたら、間違いなく死んでいたろう。だが、私は運良くどちらにも当たらなかった。「お前たちの退治するような悪い鬼はここにはおらんぞおお。」と鬼が言うので頭のぐわんぐわんするのをおさえながら「だまれだまれ。現にお前は私を殺そうとしてるじゃあないか。」というと鬼はとても驚いた顔をして、うおんうおんと泣き出した。その大粒の涙は例えようもなく、一粒でも落ちれば村は洪水になるかと思われた。「どうしたんだ。」と聞くとやっと泣き止んで「わしはただ友達になろうとしたのにいいい」と吐き捨てるように言うので私はこの鬼は少しの力で生き物を殺めてしまうこと、またそのせいでみんな近寄らないことに気づいた。




