初依頼
新米冒険者は懐具合が寂しいから、とりあえず寝食をどうにかできる仕事を狙うようです
俺たちが受けたのは、街の外にある農場の警備だった。
一日三交代制で、他のチームが休んでいる間に俺たちが警備をし、もし手に余るようなら起きている人間を呼ぶという形だ。
報酬は1日1チームあたり4000円+歩合として倒した魔物、害獣を【ギルド】に販売する権利がもらえる事になっていた。
食事と休憩用の宿舎付きなので、食い詰めた冒険者や初心者向けの仕事となっている。
はっきり言っちゃ何だが、報酬は安すぎるとしか言いようが無い。
4人チームなら何事も無ければ一人1000円で1日拘束だからな。
物価としては宿に一泊でも3000円するわけで、最初から食事と宿舎代で3000円づつ天引きされてるようなもんだろう。
それでもこの仕事が成立するのは、それだけ襲撃者が居ると言う事と、安全な寝床と食事にありつけるという安心感からだ。
農場からは格安で警備が雇えるという事もあって割りとどこでも仕事にありつけたりする。
俺たちはとりあえず、順番が来るまでに自分たちのスキルとステータスを確認しあう事にした。
フォーメーション等殆ど決まっているが、いざというときに出来る事、出来ない事がわかっていればそれだけ立ち回りしやすいからだ。
名前:ユウリ
年齢:16
職業:【戦士】ファイターLv.1 メイジLv.1 クレリックLv.1 ノービス Lv.10
筋力:50
知力:20
魔力:500
体力:10
生命力:100
敏捷度:30
【スキル】
:【剣術】Lv.2
:【格闘術】Lv.3
:【魔術】Lv.1
:【弓術】Lv.1
【魔術】
:【回復術】
:【火球投擲】
:【着火】
名前:セイジ
年齢:16
職業:【戦士】ファイターLv.1 ソードマンLv.2
筋力:40
知力:20
魔力:50
体力:50
生命力:300
敏捷度:40
【スキル】
:【剣術】Lv.4
名前:エリオ
年齢:16
職業:クレリックLv.1 ノービスLv.5
筋力:30
知力:50
魔力:200
体力:40
生命力:200
敏捷度:50
【スキル】
:【杖術】Lv.4
:【槌術】Lv.3
:【魔術】Lv.2
【魔術】
:【回復術】
:【回復術・大】
:【浄化】
:【解毒】
セイジ・・・本気でそれしかないのか。
しかも知力が俺並ってことは一般的な基準より頭悪いって事か、脳筋の癖に体力と魔力が逆転してる俺と比べればバランスは良いが、もしかすると【剣術】がこれ以上上がらないのって知力の問題なんじゃ・・・
エリオは【杖術】【槌術】が基準以上だから前衛でもいけるな、体力もセイジほどじゃないが一般基準以上だし。
知力も高いうえに【回復術・大】も使えるから咄嗟の回復でも頼りになる。
問題は【浄化】の腕だが、そっちは俺も使えるから気にするほどじゃないだろう、いい買い物だったというところか。
今回の仕事の特性から言って、悪霊やゾンビが来る事は無いだろうが、もしかすると下級魔族も来るかもしれないので【浄化】があるに越したことはない。
それでなくても、これだけの戦力ならよほどの大群でも無ければ俺たちだけで殲滅できるだろう。
飯を食って見回りを始める。
この仕事のいいところは、仕事前と仕事後に食事が出るところだ。
仕事時間も8時間なので、腹が悲鳴を上げる頃に仕事が終わるのでちょうど良いといえばちょうど良い。
・・・一応4時間経過で小休止が入るんで、その時に蒸かした芋とかも貰えるから完全な空腹になるのは本当に終わった直後くらいだそうだ。
ちなみに、俺は任務中5分に一度【生命感知】を使っているわけだが、なかなか農場の近くまで「何か」が来ることは無いようだ。
そうやって俺がメインで警戒をしていると、不意にセイジが話しかけてきた。
「なぁ・・・そういえばさ、ユウリって知力20だったんだな」
「ん?喧嘩売ってるのか?」
「いや、前に言ってたじゃないか。知力が低いから【魔術】のレベルが上がらないって」
「ああ、言ったな」
「それなんだけどさ・・・お前の【火球投擲】ってやっぱりどう考えても威力高いよな?」
「そりゃ5倍も魔力掛けたんだからな」
何言ってんだ?こいつ・・・
「いや、そりゃそうなんだけどさ、試験官たちも言ってたんだよ「あいつなんで【魔法剣士】受けなかったんだ?」って」
「?」
「それだけ炎の威力が高かったんだよ、【火球投擲】の火力は相手を怯ませる位は出来るけどちょっとかかったくらいであそこまで深い火傷を負わせられるはずがないって言ってた」
「気合が入ってたしな、たまたまだろ」
どういう事だ?
何か違うとすれば俺がいることくらいだが・・・ちょっと聞いてみるか。
《おい、聞いてるか?》
《聞いてるよ~、何かあったのかい?》
《こっちの会話は聞いてなかったんじゃねぇか》
《そこまで暇じゃないよ~。【念話】はともかくこっちは地上をある程度の広さで監視してるんだから》
そういえばこいつ、この世界の監視役みたいなもんだったな。
《どうも、俺の使う魔法の威力が今の数値じゃありえないほど威力が高いらしいんだが、心当たり無いか?》
《・・・ちょっと調べてみますね》
(パラパラパラ・・・)
《ああ、これですね。【操躯】で操った場合、その行動全てに使用者のステータスが加算されるそうです》
《使用者・・つまり俺のステータスって事か》
《そうです、現在のあなたのステータスを加算した状態をイメージしてステータスを呼び出すと、能力がよくわかります》
加算した状態でイメージ・・・
【ステータス(加護)】
名前:ユウリ
年齢:16
職業:【戦士】ファイターLv.1 メイジLv.1 クレリックLv.1 ノービス Lv.10
筋力:50(10)
知力:20(100)
魔力:500(100)
体力:10(10)
生命力:100(100)
敏捷度:30(10)
【スキル】
:【剣技】Lv.2
:【格闘術】Lv.3
:【魔術】Lv.1
:【弓術】Lv.1
:【念話】
:【生命感知】
【魔術】
:【回復術】
:【火球投擲】
:【着火】
:【浄化】
:【操躯】
おおっと!
加護込みでも標準以下の体力かよorz
それはともかく・・・知力が元の6倍、エリオの倍以上か・・・なら【回復術】も相当高い効果が・・・本気で後衛向きのステータスだな。
《待てよ?これならもしかして高レベルの【魔術】も覚えられるんじゃないか?》
《それは無理ですね、本人のレベルが上がれば低い知力でも上の【魔術】を覚えられるようになりますが、習得に必要なステータスはあくまで本人のステータスであって、加護は習得後の使用にのみかかるものですから》
《そういえば、俺の仲間のセイジだが・・・あいつの【剣術】のレベルが上がらないのってもしかして・・・》
《想像している通り、知力が低いためです》
《やっぱりか~》
あいつはレベル上がるまで【剣術】が上がらないわけか・・・
《あ、でも【スキル】を覚えるだけなら彼のレベルが低いままでも可能かもしれませんよ?》
《どういう事だ?》
《あなたが他の高レベルスキルを使用できる人を操って何度かスキルを使うとですね、そのスキルをあなた自身が覚えられる場合があるんですよ》
《なるほど、それで覚えたスキルなら【操躯】で操ってるときも使えるから問題無いと》
《そういうことになりますね》
《わかった、じゃあまた何かあったら連絡する》
《はい、ではまたですね~》
そうこうしている内にもうじき3時か・・・ん?この反応は・・・
反応の方に目を向けるとサルが森の奥からこっちを覗き込んでいる。
「おいっ!なんかサルがいるんだが」
「よく見えたな、あんな遠くの・・・あれはやばいな、【ハタケアラシ】だ」
「【ハタケアラシ】?普通のサルと違うのか?」
「あいつらはゴブリンと同じだ、群れで畑を襲いに来るから、こっちも人海戦術で行くのが基本だ」
「じゃあ、誰か呼んでくるか?」
「そうだな、誰が行く?足ならエリオだが」
「いや、行くならお前だろ、セイジ。エリオは戦闘が出来て回復も出来る、俺は範囲スキルで蹴散らせる事が出来る、お前は剣振り回すしか出来ない上に1対多の戦闘は苦手じゃないか」
第一俺じゃついた途端に体力切れだしな。
「ってことで行って来い、俺もなるべく蹴散らす方で行く」
「わかった、死ぬなよ!」
「サル相手で・・・俺なら死ねるか」
さて、エリオにもあいつのことを教えて・・・森から出てきたところに投げつける準備だな。
よし・・・来いっ!!
ユウリは果たして生き残れるのか!?
次回は11/10日予定です