出発
クリスマスイブなのでラストまで一気に更新します(ぉぃ
東王の都で出発の準備をする。
あの高位魔族は管理者の話を聞き、俺達に協力をしてくれる事を決めたらしく、俺たちの元には魔族から寄せられた魔道具が集められていた。
それらは特に魔力を使わずとも魔法の効果を発揮できる物や、魔力を生命力に変換する事で、魔力が続く限り生命力を供給してくれる物などがあった。
特に魔力<->生命力変換の魔道具は「魔力変換の指輪」と言い、その変換効率は魔力1に対して生命力100・・・ユウリが使えば無限に近い循環となるだろう。
一発で100以上ダメージ食らった時はどうにもならんが。
ダメージに関しては、合計で90%軽減してくれる装備も提供してもらったのでたぶん大丈夫だろう・・・
あの後高位魔族とも話しをした・・・ユウリはもはや必要ないので、守護霊モードで別室にてだが。
彼の名前はアルバ・トロン・ヴァーンと言うらしく、気さくに「アルバ」と呼んで欲しいと言われた。
アルバはトモツに現れたとき、「厄災の器か?」と聞いてきた。
それは新たな厄災の種を潰して回る為だったらしく、祭司の起こした儀式による瘴気と俺の魔力を遠くから見て「厄災の器の再来」を危惧したらしい。
魔族の側からしても厄災の器は忌むべき物だったと言うのは、人間社会において衝撃だった。
アルバはこれから全世界の高位魔族に連絡し、北極を目指す器たちを導いてくれるらしい。
俺達はまず北極圏に行く足を手に入れる為、北王の都を目指す事になった。
流石に高位魔族が助けてくれると言っても海の魔物がひっきりなしに来る状況では海路は難しい。
空路を使うと言う手もあるが、しばらく前から空路は使えなくなっているらしい。
理由については不明だ。
世界が無差別に器を作っていることも何か関係するのだろうか?。
それと、以前あったヤママール遺跡での邪神騒動についてアルバに問いただしてみたところ、意外な事がわかった。
実を言うと、高位魔族の中でも人間と友好関係を結ぶ派閥と言うのは極僅かで、むしろ引き篭りが大半で次に多いのが強硬派だそうだ。
強硬派は人類に対して非常に敵愾心を持っており、下級魔族などを引き連れて各地の遺跡にある封印を解いて回っているそうだ。
強硬派には辺境の領主が多く、ここ100年ほどの人間の侵攻の被害に遭った者が殆どのようだ。
又、辺境には年老いた魔族が多く、非常に頑固なのだと言う。
あれだな、某国の老害と一緒だ。
とりあえずアルバと別れた俺は、ユウリ達と合流した。
ユウリ達・・・と言うかセイジ達と言うか。
仲間達は俺の事を意外とすんなり受け入れてくれた。
マーリィは俺がある程度の事情を言っていたのもあるし、俺が直接会話をしていた相手でもあったので受け入れが早かった。
セイジとエリオは結成した時から自分が会話をしていた相手が俺だったと言う事を理解したので、関係性はあまり変わらなかった。
問題はユウリ本人だ。
こいつの身体こそ周りから見れば馴染んだ存在ではあるが、こいつの人格はまったく見ず知らずの誰かな訳だ。
って言うか俺だって初対面だしな。
仲間として扱うには少々問題があると言えなくも無い。
「これからは中身が別だし、俺もみんなとは初対面なんでぎこちなくはなると思うけど、よろしく」
《俺からもよろしく頼む》
俺は管理者から複数の相手に同時に言葉を伝える【念話】の使い方を教えてもらえたので、仲間内であれば問題なく会話が出来るようになった。
外部の人間が見れば全く声の聞こえない第三者が居る会話になるのは仕方ない。
ユウリはアルバの持って来た魔道具に因って超人的な【戦士】に変貌する事になった。
まず前述した「魔力変換の指輪」とダメージを90%軽減してくれる防具に因って非常に耐久力がついた。
次に、知力を30ほど追加してくれる装備があったので、それを使うことで俺が使うほどではないにしろ、凶悪な【魔剣士】となった。
体力・筋力・知力・魔力全てが天才レベルの【戦士】になってしまったのだ。
もう俺居なくても良くね?
ちなみに、俺が【操躯】で操っている間習得・開発した【スキル】は全てユウリ本人も使える。
もう、ある程度のモンスターならどうにかできるよな・・・
一行も装備が一新された事で強化された。
まず全員がユウリと同じ装備を手に入れた。
その他にセイジは魔剣を手に入れた。
魔剣とセイジの相性が良かったらしく、本来はちょっと強めの攻撃が出来る程度だった武器のはずなのだが、セイジが使うと【オーラブレード】と言うスキルが発動し、剣圧が飛んだり魔法攻撃を弾いたりととんでもない事になった。
エリオは「聖者の証」と言う杖を手に入れた。
【浄化】【滅魔】更に【破邪】と言った【スキル】を強化する杖で、その昔【僧侶】タイプの勇者が使っていたらしい。
これに因って、ちょっとした高位魔族なら退ける事が出来るようになった。
レニは魔剣ではなく戦斧を選んだ。
この戦斧には魔法がかけられており、魔剣の様な超人的な動きが出来ない代わりに、気合に応じて進行方向に強力なGが発生する破壊力重視の武器だった。
かかるGは込められた気合しだいなのでどこまで威力が上がるかは不明だ。
ラスは魔弓を手に入れた。
この弓は自動追尾の魔法がかかっており、撃ち出される矢には任意の属性が付与される優れものだった。
付与できる属性は四大属性に限らず、「こんな能力を付けたい」と思うとそれに近しい属性が付けられる。
例えば「麻痺させたい」と思えば雷の属性が矢に付与される。
雷属性で麻痺しない相手には意味が無いが非常に便利な能力だ。
アナは「大いなる慈悲」と言うケープを手に入れた。
このケープは自動で発生する魔法障壁だけでなく、大型の魔法障壁を任意で展開する事が出来る。
しかし、この魔法障壁は自身の魔力を一切使用しない、大気中にある魔素を吸収し、そのまま発動用の魔力とする。
実にチートなアイテムだが、これを作ったのは数百年前の大賢者で、彼も選ばれし者だったと言われているらしい。
最後にマーリィだが・・・彼女は元から知力が高いため知力追加の装備と俺が教えた【スキル】だけで十分チートだった。
そのためか、それ以上の装備は要らないと頑なに断るので自身の魔力を使う形の魔法発動装置【四大の知恵】をとりあえず持ってくれと押し付けた。
この装置は人間がそれまで作り上げた個人用の【魔術】を自分の【魔術】レベルに応じて使うことが出来る。
マーリィの【魔術】レベルは既に10、理論上全ての魔術が使える状態になったわけだ。
そして・・・
《これは?》
俺の目の前には真っ白なマネキンに似た人形があった。
身長は190cmとかなり長身だが、決して胴は長く無い・・むしろ四肢が長すぎるくらいか。
「「魔王の名残」と言う名がついている。何代も前の魔王が作った影武者人形だ」
アルバは人形の説明をしたが今一ピンと来ない・・これがどうしたと?
「この人形は元々悪霊を取り付かせて動かす物でな、魔王が影武者として作ったくらいで、これにどんな霊がついても魔王と同じ【スキル】が使えると言う優れものだ」
《つまり、これを俺に預けて俺も自由に動けるようにということか?》
「察しが良いな、さすが守護霊殿だ」
便宜上そう呼べと言ってから、特に新しい呼び名をつける事もなく俺は「守護霊」と呼ばれ続けていた・・・良いんだけどさ。
《じゃあ、お言葉に甘えて・・・》
【操躯】を使って乗り込むと、【ステータス】を確認してみる。
【ステータス(加護込み)】
名前:魔王の名残
年齢:不明
職業:【影武者】ファイターLv.100 メイジLv.100
筋力:100(10)
知力:100(100)
魔力:300(100)
体力:100(10)
生命力:1000(100)
敏捷度:100(10)
【スキル】
:【剣技】Lv.10
:【魔術】Lv.10
:【念話】
:【生命感知}
【魔術】
:【爆滅】
:【爆裂】
:【暴風】
:【雷撃】
:【紅蓮】
:【転移】
:【転送】
以下略
・・・なんだこのチート。
《なんだこりゃ、とんでもないな》
「元々【レイス】程度の低級の悪霊をつける予定だったからな」
《なんだってこんなもんが残ってたんだ?》
「これを作った魔王は完成と同時に老衰で死んだのだ」
・・・
《なんだその切なすぎる話・・・ってかそんな歳になってまだ影武者作るとかある意味元気だな》
「いや、彼はそもそも老衰で死ぬような歳ではなかったようなのだが・・・どうもこれを作る際の呪術で生命力を使い切ってしまったらしい」
《余計切ないわ!!》
とりあえず、俺は肉体(?)を手に入れることになった。




