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守護霊なう  作者: 宇龍地
第五章
25/42

離脱

悲鳴は生贄供給の魔法陣の裏にある部屋、祭壇の魔方陣のある部屋からだった。


戦士は・・いや、ここでは祭司と表現したほうが良いか。

祭司は裏の部屋にある魔法陣の中に現れると、その部屋を一応監視していた斥候職の女性を生贄にしようと光を放ったらしい。

しかし生贄供給の魔法陣自体が常に破壊され続けているため発動せず、業を煮やして攻撃をしてきたようなのだ。


その際薄い壁を触手がぶち抜き、状況を伝えようと繋ぎだした無線機を通じて悲鳴が聞こえてきたのだった。


もはや迷っている時間はない。


無線機越しに撤退を指示すると、彼女たちの盾となるべく仮想へと急ぐ男性たち。

俺達は邪魔にならないよう疲れて倒れている(振りをした)俺を守るためにこの部屋に残った。


しかしこの状況は拙い。

女性達を危機から引き離すために魔法陣の破壊を指示したと言うのに、結果はまさかの転送術で一番危険な場所に送ってしまった事になった。

俺は意識を失った振りをし、霊体の状態で祭壇の奥へと向かった。






最下層、祭壇の間に来た・・この姿なら一瞬の出来事だ。

そこにはあまりの衝撃と恐怖に意識を失った斥候職の女性と、触手を壁に刺してしまい、その手応えの無さに違和感を感じている祭司が居た。


俺はまず斥候職の女性に重なり【躁躯】を使い憑依する。

祭司はまだ気づいていない・・今のうちに使える能力を品定めしなくては・・・【ステータス】!


【ステータス】

名前:ミナ

年齢:26

職業:【斥候】スカウトLv.30 ファイターLv.16

筋力:40

知力:30

魔力:100

体力:40

生命力:300

敏捷度:50

【スキル】

:【剣術】Lv.4

:【弓術】Lv.5

:【気配察知】

:【音感知】

:【遠方観察】

:【捕縛術】

:【遁走】

:【暗視】

:【隠密】


この場で使えるのは【遁走】と【隠密】といったところか。


【遁走】は全速力(ダッシュ)で走れる距離が3倍になるが、一時的に体力を著しく消耗する緊急避難の【スキル】

【隠密】は対象から自分への意識が逸れた時に発動する事で対象からの発見を遅らせる【スキル】


まずは【隠密】を使い距離を取る・・・祭司()はまだ気づいていない。

10m程離れた・・もう部屋の出口だ、ここまで来れば安心だろう。


「キャーーー!!」


!?

部屋から出ようとしたその時、祭司が例の光を発動しようとしているのに気付き、更に壁の向こうからまだ悲鳴が聞こえることに戦慄する。


こちらで気を引かなければ、奴は又あの光を放つ。

もしその時向こうの魔法陣が復活していたなら、もう一度破壊しなくてはならない・・その時まだ奴から逃げられる余裕があるなどという保証はない。


「【火矢】!!」


考えるのとどちらが早かったろう?

俺は後先を考える余裕すらないまま【火矢】を放っていた。


「ガァッ!」


聞こえる奴の呻き・・これで【隠密】は切れた。

本当ならここで【遁走】を使ってでも逃げなくてはならないが、壁の向こうが心配だ・・どうしたら。


怒りからか、奴はゆっくりとこちらに視線を巡らせる・・考える暇はない、まずはここから離れなければ!


急いで上の階層に行き、【遁走】で合流した瞬間ミナ(斥候女)から離れ、生贄供給の魔法陣の間へと飛ぶ。

部屋はもぬけの殻だった、奴の触手もない。

魔法陣は・・・良かった、まだ復活はしていない。


こうなると次に気になるのは奴の所在。

俺は奴の開けた穴を通って向こうの部屋に行くと、奴が部屋から出るところだった。

どうやら、奴は他からここ(・・)へ転送される事はあっても、ここ(・・)からどこかへ転送される事は無いようだ。


急いで女性陣の無事を確認する・・・十分距離は稼げているようで、ダンジョンを出さえすれば後はどうとでもなりそうだ。


俺が先ほど憑依していたミナという冒険者も無事意識を取り戻し、一緒に出口に向かっている。

とりあえず俺は後方を調べに行く事にしよう。

次回は12/12の予定です

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