捜索開始
今回でこの章は終わりなのですが、次の章とは繋がっているのであんまり間は開けたくありません。
と・・とりあえず鋭意努力します。
街に到着して三日。
特に大きく遅れたパーティーも無く、15のパーティー、総勢55名の冒険者が捜索に当たる事となった。
任務の概要はこうだ。
捜索対象:30名ほどの盗賊団
捜索範囲:トモツ盆地内の未開発地域
既に逃亡している可能性について:街道は常に検問されているため、逃亡の可能性は低い
既に死亡している可能性について:期間内に大型モンスターは未確認、その為、仮に死亡していても装備品などは残っている可能性がある
捜索期間:現時点から一週間
ちなみに生死は問わないと言う事で、交戦になった場合は遠慮なく止めを刺して良いそうだ。
っていうか、明らかに捜索対象に対してこっちの戦力少なすぎるだろ。
国から強制参加を命じられている高レベル冒険者も居るがあくまで少数、俺たちの逆サイドから来た連中は俺たちほど苦労するわけじゃないから戦力的には微妙でも上がってこられるので当てにはならない。
ちょっとヤバイ気がしないでもないな。
対象が集まっててくれれば範囲攻撃で大分削れるが敵もそこまでバカじゃない・・はずだ。
捜索は2パーティーずつ、7チームと残った1パーティーに検問担当の兵士を少しずつ分けた計8チームで、盆地内の潜伏の可能性が高いと思われる範囲を8つに分けて捜索する事になった。
俺たちの担当は小高い丘を含む地域で、古墳の可能性もあるらしい・・嫌なフラグだ。
はっきり言って、8つに分けたところでウンザリするほど広い事に変わりは無い、ちょっとした北海道の牧場くらいの広さがある。
そんなところを、とりあえず見渡す限り【生命感知】をかける、めぼしい物が無かったらさっさと通り抜ける。
何かしら大きな反応を見つけると【豪雨火矢】を放つ・・・大体は野生動物だが、本数を増やす事で威力を抑えているためビックリして出てくる程度だ。
やがて、丘の周りを調べつくしたところで今度は丘を中心にぐるっと【生命感知】をかける。
何かしら大きな反応が見つかったが・・・これは明らかに人間じゃないな。
こういうのは下手にちょっかいかけると怖いので避けるに限る・・・みんなを連れて隣の地区に報告に行くことにしよう。
っと・・・その前に休憩にするか。
俺は一休みと称して守護霊モードで気になるところを見回る事にした。
守護霊モードになると動きが軽く、瞬時に広範囲へ移動が出来る代わりにたいしたことができないと言うデメリットがある、実に困った話だ。
だが、偵察には十分過ぎるくらいの高性能だ。
まずは丘周辺の大きな反応の確認・・・何のことは無い、モンスターだった。
【ノウメンゾウ】・・・一見するとナウマン象のようだが、尻を守るように能面の様な甲羅があるモンスターだ。
何でそんなモンスターが居るのかなんて考えちゃいけない、【マタタビデゴザル】なんかもっと理不尽だったし・・・なんだよ、三度笠って。
まぁ、奴はおとなしいモンスターで、一度止まると十日は眠り続けると言われるくらいののんびり屋なので大丈夫だろう。
今度は逆側、これから行こうとしている方角を見回る。
特に大きな戦闘がある様子は無い、生命反応も固まっているのが6箇所くらい・・・一際大きな反応が何者かを調べる必要があるか・・あれは個体ではなく団体だった。
霊体での移動は至極簡単だ、意識を向けるだけで良い。
瞬時に移動を完了すると、今度は意識を草むらに向ける・・・人の集まりだった。
霊体での欠点は、個々の判別が付けにくい事、だが、捜索隊とは別だろう・・人数的に。
ざっと数えて10人・・特に跳びぬけて強そうな者は居ないが、個の能力は並みの冒険者以上と言ったところか。
本隊ではないな。
俺は意識をユウリに戻すと【躁躯】で自身を動かす。
「ん~~~っ!っぷはぁっ!!よく寝た~」
「あの短時間でよく眠れるな」
「例え10分でも仮眠を取れればそれだけ脳の疲れが取れる、長期戦では必要な能力よ?」
「そう言うもんか?」
同じ脳筋でもラスとセイジでは経験の差でもあるのかその辺の感覚に差がある。
いや、恐らく【狩人】と言う斥候職において脳の疲労回復が重要だと解っているんだろう。
前衛職でも重要は重要だが、基本的に接近戦の連続でここまでの余裕があることが無いのでそもそものロジックが違うのかもしれない。
「それはまあ良いとして・・次は隣のエリアに行くぞ、とりあえず無線で現在地を確認してくれ」
隣のエリアを担当しているパーティーに連絡入れてもらう。
向こうのパーティーが確認していない範囲から捜索を始めることで挟み込むように包囲する事が出来るからだが、どちらかと言えば現在地を知る事で自分の確認した集団からどれだけ離れているかの確認を取りたいと言うのが本音だ。
遠すぎない程度に離れていれば【豪雨火矢】で炙り出せるし、近すぎれば【破裂風】を投げ込んで炙り出す必要がある。
【破裂風】の優先順位が低いのは有効効果範囲が狭い為で、普通の範囲型【烈風魔術】では威力が高すぎて炙り出しには使えない。
【豪雨火矢】であれば範囲に合わせて魔力を増やせば範囲が広くても十分な威力を与えられるし、魔力を必要以上に込めなければ延焼の心配も無い、また、間違って捜索対象でもなかった場合には軽い火傷程度で済ませることも可能だ。
とにかくそう言う作戦で行く事にしたのだが、困った事に俺が確認したときから捜索隊が大きく動いて例の集団から離れすぎたようだった。
仕方ないので、現地を確認できる位置まで移動し、特に潜む必要の無い者ならば飛び出してくる程度で【豪雨火矢】を撃ち込む。
範囲は広めに撃った・・たまらず出てくる野生動物たち、しかし集団は動かない。
例え寝ていたとしても数人は起き出すレベル・・つまり連中は息を殺す必要があると言う事だ。
「・・」
無言のままマーリィに合図を送る。
即座に準備していた【破裂風】が【豪雨火矢】の範囲の中心に投げ込まれると、たまらず叫び声を上げ吹き飛ばされる数人の人物。
手には狩りに使うには似つかわしくない短剣が握られ、動物相手と言うよりは人間相手であろうと見られる。
「何か居たのか!?」
奥の方から捜索隊のパーティーが叫びながら近づいてくるのが見えたので忠告をする。
「多分捜索対象です!注意してください」
膨れ上がる緊張感。
張り詰める空気を解することなく近くにあった石を投げるセイジ・・・うん、相手の隙を呼ぶのは理解した。
その石を合図に、潜んでいた影全部が俺たちに向かってくる。
こちらの主軸は【魔術師】の上若い、実力的に与し易いとの判断だろう・・・俺たちでなければ正解だ。
こちらを侮った人間の集団など野生動物より扱いやすい。
俺とマーリィは相手の死角から【火矢】を多重発動して撃ち込む。
別に当たる必要は無い、後方に複数の【魔術師】が居ると思わせるだけで十分だ。
案の定後方に意識を向けた数人を狙ってこちらの攻撃が飛ぶ。
セイジとレニはマーリィの魔法に因って起こされた風に乗り一気に間合いを詰めて袈裟懸けに切りつける。
ラスは矢を連続で打ち出す【スキル】で後方に居た連中を打ち抜く。
俺は残った連中から【僧侶】二人を守るべく剣と盾を構えて待つ。
あらかじめ決められた作戦に従って動く俺たちに翻弄される盗賊を、今度は本当の援軍が襲う。
特筆するほどの戦闘も無くひとまず10名の盗賊が無力化され、【ギルド】の搬送担当を呼び無力化した盗賊を運んでもらう。
これで残りの盗賊は20名程度、こちらの戦力は倍を超えた事になる。
このエリアはもう他には居ないと見て4パーティで分担し、ローラー作戦で残りの範囲を見ながら隣のエリアに進む。
残り6エリア・・・他のチームが残りの盗賊を始末してくれていれば良いのだが。
日も傾き始め、続々と捜索範囲を狭める報告が無線に入ってくる。
俺たちはその後遭遇する事が無かったが、他のチームがやはり盗賊に遭遇したらしく、盗賊の残りは事前情報から見れば12名と言うところだ。
しかし他の遭遇したチームは不意打ちを食らったらしく、3名ほど戦力に数えないで欲しいとの連絡もあった。
これで12対55・・全員が同じ場所で一度に遭遇できれば勝ち目がある戦力差だが、間違っても残党全てを1チームで迎え撃つとなったら突破されるのは火を見るより明らか・・・まだ油断は出来ない。
時は進み、空がオレンジがかってきた。
残りは大きな遺跡の中・・・となったところで、遺跡から矢が放たれた。
未開地と言う事でこちらは遺跡を崩すわけに行かないと踏んだのか、向こうからは遠慮の無い遠距離攻撃が降りしきる。
しかしそんな物は俺たちに通用はしない。
【魔術師】全員に俺が教えた【豪雨火矢】は、威力さえ抑えれば遺跡を穿つ様な威力は無い。
しかしその熱は我慢しながら矢を放つには少々熱過ぎる。
自然と止む矢の雨を確認して前衛が走り出す。
それを確認しながら追い討ちに【豪雨火矢】を撃ち込む【魔術師】たち。
接近戦を覚悟した盗賊たちは手に手に武器を持ち替えるが、その一瞬の隙は歴戦の冒険者を相手取るには致命的過ぎた。
圧倒的な数の前衛に無力化される盗賊たち・・・おかしい、頭目らしき奴が居ない。
遠く、遺跡の向こうに逃げ出す人影を見て【火矢】を撃ち込むもどこかしらに潜り込まれた。
ベテランたちに事情を話し、捜索を続けるかの協議をする事にする。
未開の遺跡探索ともなれば新人の出る幕は無い、俺たちは討論が激しくなったリーダー会議から離れて、逃げ込んだ遺跡の外れを監視する事にした。
「ここからはベテラン任せとは言え・・・結局決着とかうやむやだよな、このクエスト」
「そうね、結局同じチームで共闘だもんねぇ」
マーリィと決着についてどうするか相談しようとマーリィの方を見るとその瞬間、遺跡の外れ・・頭目の消えた辺りから何かしらの咆哮が聞こえたのでそちらに注意が集まる。
見るとそこには何かしら異形と融合した人間が姿を現していた。
異形は体中から触手を生やした芋虫のような姿に、頭部と思える位置に人間を生やしていた。
その人間は膝から下を異形と融合され、上半身を触手に支えられ、苦悶の表情を浮かべながらも口は何かしらの粘液で塞がれているようだった。
異形は恐らく遺跡に封印されたモンスターだったのだろうが、既に何を基にしたモンスターかも判別がつかない。
不意に異形が禍々しい光を放つと、周囲に居た女性が悲鳴を上げ、倒れこんだ。
彼女たちの足を確認すると、何かしらの呪いにでもかかったのか、石のように硬く・・いや、正しくそこは石と化していた。
間に合いました
次回は12/4の予定です




