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守護霊なう  作者: 宇龍地
第四章
15/42

疑念

う・・嘘でしょ?

()は【魔術師】どころか【魔法剣士】ですらないと言うの!?


「あ~・・・確かにショック受けるよな、真面目に【魔術師】になった奴から俺見たら」


彼は理解(・・)している、自分がどれほどのイレギュラーなのか。


「俺、元々知力低いくせに魔力だけはあるようなタイプだったんだよ」


何故【戦士】になったのかを彼が説明してくれた。


能力不足で【スキル】を習得できなかった事。

その結果何にも就職できなかったこと事。

辛うじて【戦士】になれたこと。

イレギュラーに合い続けた結果クレリックとメイジ、両方のレベルが異常に上がる事で、【魔術】のレベルも上がったため、今では【魔術】レベルが6になっていること。

しかし、自分に【火炎魔術】の特性が無い為か、一向に【火炎投槍】までしか身につけられない事。


だが彼の説明ではあの熱量が説明できないのだ。

あの熱量を出すためにはそれだけの高い知力が必要になる。

【魔術師】以外には彼の説明で納得が行くかもしれないが、私はそんな事じゃ誤魔化されない。


「後で・・・詳しい事を聞きに行くわ」


夜になった。


討伐結果を確認に来た【ギルド】職員に【オーガー】と【ヒポグリフ】の出てきた状況を聞かれた以外は特に何事もなく終わった。

あらかじめ向こうのパーティーが持ち込んでいた無線機によって連絡を受け、大型のコンテナと搬送用のヘリコプターを伴って来たのには驚いた。(2パーティー分とイレギュラー分なので、一度に運べるようにと言う事だったそうだ)


私たちは近くで一緒に野営をする事になったので、火の番のローテーションが合うように調整をして、みんなが寝たのを見計らって彼に確認を取る事にした。


何か気を利かせた気になっているうちのメンバーがやけにウザイけどほって置く。


「で・・・あなたの秘密はズバリ何?」


単刀直入に聞いてみる。


彼は遠くから探るように聞けば絶対にはぐらかすだろう・・が、そうはさせない。


「・・・仕方ないか。まぁ、誤魔化すにしてもご同業には難しいわな」


彼は理解が早くて良い。

とても知力20(自称)とは思えない。


「「加護」って・・・知ってるか?」


加護・・・胡散臭い話が出てきた。


「確か・・聖職者たちが言ってる奴よね? 勇者だの選ばれし者だのって言う」

「その認識で間違いない、俺はその「選ばれし者」と言われる奴だ。これは冗談でも何でもなくな」


確かに、そういう存在なら納得できなくは無い・・・

彼のギルドカードに記された知力も彼の話の裏づけをしている。

知力20ではあの威力はありえない・・が、「選ばれし者」なら話は別だ。

歴史上、彼らはステータスではありえない結果を発揮したと言われている。

最近では十数年前、世界融合の原因を作った「勇者」もその一人だ。


「俺は、不本意ながら何かの役割を持たされたらしく、成長を促すためにこの世界そのものが俺に試練を投げかけて来る様なんだ」


何を言ってるんだこいつは・・・

いや、彼らのこれまでの武勇伝が本当であるならむしろ納得するべきだろうか?


曰く、【ハタケアラシ】を退治してたら【マタタビデゴザル】に遭遇した。

曰く、クエストで治療をしに行ったら近くで【レイス】の大量発生に遭遇、解決間近で【スペクター】登場。

今回もそうだ、討伐依頼を受けて行ってみたら、そこには数匹の【ハーピー】だけのはずが群れは10倍に膨れ上がり、そこに突然【ヒポグリフ】が現れたと言う。


試練としか説明のしようがなく、そしてその悉くを解決してきたと言うではないか。

そして、他の話はさておき、私の目の前で【ヒポグリフ】の死骸は運ばれていった。

私の【結晶化(オーバーキル)】はありえない温度の【火炎投槍】で消滅した、それだけは目の前で確認した。


「一体どういう理屈ならその「加護」とやらであの威力になるのよ・・・」

「・・・」


沈黙がよぎる。


「言って信じるかはわからないが・・・」


ゴクリ・・・

思わず生唾を飲み込んでしまった・・聞こえてなければ良いけど・・・


「俺には試練を乗り越える能力は無い、俺だけの能力じゃ【戦士】の試験すらギリギリ・・むしろ落ちたくらいだ」

「それは聞いたわ」

「だから、それを補うために俺には何物かが憑けられ(・・・・)、その何者かと融合する事で今の俺が居るんだ」

「・・・」


それが・・それこそが「加護」と言う事なのだろうか?


「その何者かの能力は【スキル】を使うとき俺の能力に上乗せされる・・・そしてそいつの知力は・・100だ」


知力100!?

伝説の賢者レベルじゃない!!

そしてそれだけじゃない、彼の元の能力に上乗せと言う事は知力120・・・秀才レベルの【魔術師】の倍もある。

それであの威力に納得がいく。

並の【魔術師】の数倍の知力から繰り出される術は、魔力を最低レベルで使ってすら人外レベルの威力になってしまう。

だからこそ、それを誤魔化すための「魔力過剰」発言だったわけだ。


「わ・・かった。 確かに理屈は合うわ。 と、言う事は、あなたは自分が勇者だとでも言うわけ?」

「いや、それはないだろう。最終的にどうなるかはわからないが、少なくとも現時点では(・・・・・)「勇者」ではない」

「何の根拠があって・・・」

「俺なりにこの世界の歴史を調べた・・【フィアル】の歴史をな。その結論は「勇者」とは「負の災害」に対しての「劇薬」だ」


確かに・・・


「劇薬は病気にかかっていない者にとっては存在するだけで害になるだろう?俺ならそんな物を病気にかかる前に投与しないし、もし既に病気にかかっているのなら勇者は完成している必要があるが、俺は育成中だそうだしな」

「じゃあ「選ばれし者」は一体?」

「あれはまた違った役割があるようだな。どの道【リアース】には無かった歴史だから判断は難しい・・が、何かしら偉業を成した者は大体そう呼ばれているというので間違ってないんだろう」

「つまり、あなたは「偉業を成す者」という事ね」

「人間の認知できる範囲で何かを成すとは限らんがな」


もう何を聞いてもこれ以上わかりそうに無い・・・

と言うか本人も確信を持っていない情報なんていくら集めても無駄だ・・なら。


「わかったわ。でもその事と私の氷を溶かした事の落とし前とは別の話!きっちりけじめを付けましょう!!」

「良いけど何をするんだ?魔法の撃ち合いとか不毛だぞ?さっきも言ったみたいに、普通の【魔術師】が高レベルの術を使ったところに中級の【火炎魔術】を撃ちこむしか出来ないし、並の【魔術師】ならそれで撃退まで出来ちゃうわけだし・・」


確かに・・・自分なりに勝負の方法を思案してみる。


「まずは街に帰ってからね。何かクエストが出ていたら、それで勝負よ!!」


我ながらとんでもない事を相談も無しに決めてしまったと、軽く自戒しながら、彼と別れて交代の仲間を呼びに行く事にした。

この章は話毎にヒロインと主人公で視点を分けて書く事になります。

次回は主人公視点です。

次回更新は11/22となります。


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