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今日の三組  作者: 白稲荷
6/6

夏休み中の文芸部【山】その3続

登場人物名前一覧

日向碧(ひなたあお)

二年生

檜垣卯月(ひがきうづき)

二年生

土屋誠市(つちやせいいち)

二年生

木村啓(きむらはじめ)

二年生

金村和喜(かなむらかずき)

三年生

三水一姫(さみずいつき)

一年生

城島博人(きじまひろと)

卒業生

 色々と読みにくくてすいません。

by作者

「で、あれはいったい何なんですか?」

 碧は目の前の人体模型を指差しながら呆れつつ誠市に訊ねてみる。

「それは俺が一番聞きたいよ」

 疲れはてたというように椅子に座る誠市は力無く答える。

 さっきまで誠市達を追いかけていた人体模型は小腸や肺などが欠けた状態で大人しくなっている。

 そして一番気になるのは人体模型の後ろにいる黒子のような人物だった、大方あの人が担いでいたのだろうが垂れ布で顔がわからない。

「おい、もう良いからこっちに来い」

 唐突に卯月が人体模型の後ろにいる黒子に近づくと手をひいてつれてきた。

「えっともしかして、卯月の知人か何かですか?」

 手をひかれるがままついてきた黒子に質問してみる。

「卯月ちゃんの、と言うかここにいる皆の先輩なんだけどなあ」

「えっ?」

 聞き覚えのある声、誰だったっけ、思い出そうと頭を捻る。

 すると黒子は顔を隠している垂れ布をあげた。

「一度留年してるから覚えているかと思ったんだけどなあ」

「城島先輩!?」

 何でここにいるのかはわからないが人体模型が誰の差し金かは何となく理解できた。

「卯月に頼まれたんですね、まったく」

 呆れたようにため息混じりに呟くと城島先輩が、あはは、と笑った。

「いやあ、ごめんね、別荘探しの時に一緒に頼まれてね」

 怖かった?と城島先輩はぐったりと椅子に座る誠市に訊ねる。

「ええ、まあ、ビビりましたね、林に人体模型なんて組み合わせは……」

 誠市は空を仰ぐように背もたれに寄りかかりながら答える。

「しかし、卯月も言っといてくださいよ、こういうことは先に」

「先に言ったらサプライズにならんだろう」

「それは、そうですけど……」

 もっともな意見で反論され私は口ごもる。

「よく考えてみろ、なんのへんてつもない林で肝試しをしたって、夜間ハイキングと大して変わらん」

 何故か卯月は呆れ顔で言葉を続ける。

「という事で城島先輩に頼んでお化け役になってもらった」

「なんか突然押し掛けてごめんね」

 言いながら城島先輩が頭をさげるので慌てて止める。

「なにも先輩が謝らなくても……ほ、ほら肝試しなんですから突然なのはしょうがないですし、ね!」

 できているかはわからないが必死にフォローしてみる。

「有り難う、相変わらず碧ちゃんは優しいなあ」

 笑いながら言うと城島先輩は人体模型を担ぎそのまま林の方に歩き出した。

「えっと、先輩?どこに行くんですか?」

「ああ、林の中に荷物があってね、取ってくるよ」

 後ろ手に手を振りながらそう言うと、城島先輩は林の向こうに消えていった。

「もしかして……肝試しが始まるまで、林の中に潜んでいるつもりだったんじゃ……」

 卯月の無理難題に答える人ですし、やりかねない。

「ま、まさか、ね……」

 何とか自分を納得させようとする碧であった。



――――――――――――



「しかし、肝試しはやらなくてよかったんですか?」

 洋館一階の暖炉前で碧は卯月とチェスをしていた。

「ん?ああ、そもそも私は城島先輩の事を知っていたからサプライズにならんだろう」

 卯月は黒のルークで白のポーンを取りながら答える。

「いや、そうではなくて、結局肝試しをしたの土屋くんのペアだけでしたから」 碧は先ほどのルークをナイトで迎撃する。

「サプライズが早々にネタバレしたからな、お化け役がわかっている肝試しなんて面白くないだろ」

 そう言うと卯月はビショップでナイトを取り、ため息をつく。

「まあ、そうですけど……、それにしても人体模型なんて何処から持ってきたんですか?」

 碧はキングの前のポーンを一歩前進させる。

「あれか?あれは城島先輩の案で自分で買ってきたらしい、必要経費で落ちたとか言ってたな、何のかは知らんが」

 卯月は目の前のポーンを飛び越え黒のナイトを前に出す。

「何の経費かは知らない方が良さそうな気がします」

 碧は白のクイーンを動かして黒のビショップの前に置く。

 黒のナイトも射程圏内の位置だった。

「このタイミングでそこにクイーンが来るか……」

 少しの間考えてから、卯月がさっき前に出したナイトを白のポーンの隣に置きクイーンから身を隠す。

「そういえば城島先輩は一泊していくんですか?」

 碧がビショップをクイーンで取りながら卯月に訊ねる。

「みたいだな、まあ空き部屋はまだあるし良いんじゃないか」

 卯月はクイーンの死角になる位置にナイトを置く。

「上手く死角に入れてきますね」

 碧はルークを移動させてナイトを射程に入れる。

「しつこいな、ナイトくらい見逃してもバチは当たらんぞ」

 卯月はナイトを白のポーンの隣に戻す。

「見逃したらキング取られちゃいますから」

 碧は白のポーンを軸に、回り込むようにナイトをクイーンの射程に入れると卯月が笑った。

「かかった!」

 白のクイーンが黒のビショップに不意打ちをくらった。

「あっ!」

「ナイトに気を取られ過ぎたな」

 クスクスと笑う卯月を前に碧は呆然とチェス盤を眺める。

 クイーンを取られた白側はあっという間に隊列を崩され碧が降参する形で幕を閉じた。

「しかし、卯月は本当に強いですね、コツでもあるんですか?」

 碧はチェス盤に駒をしまいながら卯月に訊く。

「コツと言われてもな、まあ強いて言えば盤面をよくみて考える、とかじゃないか」

「基本ですか大事なのはやっぱり」

 納得しつつ次は勝とうと思う碧であった。


ネタが不足すると色々ヤバイということに気がついた今日この頃。

by作者

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