夏休み前の文芸部
登場人物名前一覧
日向碧
二年生
檜垣卯月
二年生
土屋誠市
二年生
会話中登場人物名前一覧
木村啓
二年生
金村和喜
三年生
三水一姫
一年生
色々と読みにくくてすいません。
by作者
太陽が熱線の如くアスファルトを照りつけ、蝉が喧しく鳴き喚く七月中旬。
とある高校の分館東校舎は生徒から部室棟とも呼ばれる。
その中の一室、扉に文芸部と書いた紙が貼ってある部室で私は期末テストの勉強をしていた。
長机に向かって勉強をしていた私はペンを動かすのを止めずに、ふと向かいの席に呟いた。
「皆は夏休みってなにか予定有ったりするかな?」
すると少し間を開けてから返事がきた。
「1学期末テストがまだ控えているのにもう夏休みとは、余裕だな」
目の前の女子生徒、卯月はこちらを見ず皮肉げに言い。
「余裕ってわけじゃないけど少し気になって、そういえば去年はあまり外出しなかったなって」
確かに安全圏ではありますけど。
私は困ったように微笑みながら答えた。
「海とか行ったんじゃないのか、啓と」
「行きはしましたけど、海なんて少し歩けばすぐ着くし遠出と言えるかは」
海なんて飽きるほど見てきましたし。
私は苦笑しつつ言って、自身の左側、整頓されていない本棚や乱雑に三段ほど積み上がった段ボールがある部室の奥、この部屋で唯一の窓の向こうを見た。
一階にあるこの部室からは、学校によくあるフェンスと道路をまたいだ先に、白い砂浜と広大な海が見えた。
「まあ海なんてすぐそこだしな、それにしても近すぎだろ」
言いながら卯月もペンを止め窓の向こうに目をやっている。
「今度は山とか登ってみない?」
そう提案すると卯月は再びペンを動かしながら答えた。
「金村先輩とかは喜びそうな提案だな、まあ私は車で行くが」
「それじゃ山登りの意味無いでしょ」
こんなふうにどうでもいい会話をしながら勉強をしていた。
陽も暮れ始め、話のネタも底をつき、部室がペンの音で充満した頃、それを裁つようにふいに部室のドアが開いた。
「おはようございます」
そう言いながら疲れたふうに入ってきたのは一人の男子生徒だった。
「放課後だからこんにちわだろう、間違えると頭悪く見えるぞ誠市」
入って来た誠市に卯月が指摘すると、言い返す気力も無いのか面倒臭そうに、どっちでも良いだろ、と言いたげにこちらに視線を向けてきたので、苦笑いしつつ話題を変えてあげた。
「疲れてるみたいだけど、こんな時間までどうしたの?」
「いや、先生のお使いで走り回っててね」
聞かれた疑問に答えながら誠市がドアから一番近い席……卯月の右側に崩れるように座ると卯月は呆れたように馬鹿を見るような視線で誠市に言った。
「断ればいいだろうそれぐらい」
「そういうわけにもいかないだろ」
「これだからお人好しは」
「いいんだよこういう性分なんだよ、俺は」
苦笑しつつ答え、バックから教科書やノートを出していた誠市に、卯月は何を思ったのか閃いたようにこう言った。
「そのうち借金取りを頼まれて取り立てに行くのが目に浮かぶな」
「どんだけシュールな頼みだよ、普通は逆だろ!」
盛大に誠市がツッコミをいれた。
「いや、誠市なら頼まれればやるな、うん」
「だから何で取り立てる方なんだよ」
私は二人のそんなやり取りを微笑ましく向かいの席から眺めていた。
「おい碧、何を笑っている?」
卯月に聞かれ私は笑みを作りながら答えた。
「いや卯月と土屋くんは仲が良いんだなと思って」
「まあ誠市は私の嫁だからな、この程度普通だ」
「なに恥ずかしげも無く言ってんだよ、あとそれを言うなら婿だろ」
誇らしげに小さな胸を張って答える卯月に呆れながらツッコミを入れる土屋くんを見て、私は本当に仲が良いなと思った。
――――――――――――
全く、卯月はああいうことを恥ずかしげも無くさらっ言うからこっちが恥ずかしくなって困る。
そんなことを考えながら勉強に励んでいた俺は先輩から碧に伝言があったのを思い出した。
「そういえば金村先輩は今日来ないって」
「そうなんだ、理由は?」
こちらを見ずに聞いてくる碧に理由を言った。
「一姫ちゃん連れてデートに行くって」
「またですか、あの人は」
それを聞いた碧は呆れたようにがっくりと頭を落とした。
「諦めろ、幼馴染みだろ馴れろ」
「いや、幼馴染みは関係ないし、何様だよお前」
卯月の意味不明な根拠に俺は呆れつつ反射的にツッコミを入れる。
「まあ、大体は予想はついてましたけど、全然来ませんし」
ハハっ、とかわいた笑いをしつつ頭をあげる碧の目は全然笑っていない。
「おーい、大丈夫か?キレるなよ、キレるなら啓か先輩相手にしてくれよ」
「大丈夫です、理由も無く無関係な人に怒ったりしませんから」
いや、マジで目が笑って無い、というか理由が有ったら無関係じゃないし。
そんなことを考えていると、横から卯月が参加してきた。
「用事でもあったのか?」
すると碧は一度ため息をついてから言った。
「先生が明日からテスト期間で部活は皆活動停止だから、忙しい運動部の部長とかも時間が空くし明日は部長会を開いて部費の話をするって言ってたから」
「それを伝えておきたかった、と」
卯月は一人、納得したような顔で言葉を遮り言うと、碧はうん、と頷き、再びため息をつきながら頭を落とした。
「メールでよくね、それぐらい」
「携帯、家に忘れたから会って伝えよう、と思って」
「あー、なるほど」
まああるよな、たまに携帯忘れるぐらい。
すると卯月はニヤニヤしながらわざとらしく聞こえる様に呟いた。
「しかし、こうしている今、金村先輩は一姫とイチャイチャしてるわけか」
何かがキレる音がしたような気がした。
「空気読めバカ!、今ここで言う……日向さーん大丈夫?なんかすげえ怖いんですけど」
実際には見えないがどす黒いオーラとも怨念ともつかない威圧感が碧の周囲に漂っていた。
「もう我慢できません、よく考えればなんで私が先輩のために時間を無駄にしなきゃならないんですか!家に帰って電話で直接文句を言ってきます!」
長机を力一杯叩きながら立ち上がると、無駄の無い素早い動きで教科書などをバックに入れ、また明日、と言うと足早に部室を出て行ってしまった。
「先輩、ご無事で」
紛れもなく先輩の自業自得なのだが、こういうときほど何となく無事を祈ってしまう自分に苦笑していると、後ろから卯月が袖を引っ張ってきた。
「どうした?」
「先輩無事だといいな」
振り向くとドヤ顔で卯月が親指を立てていた。
「お前が焚き付けたんだろうが」
「みぎゃっ!?」
先輩に何の怨みがあるかは知らないが他人事の様に聞いてくる卯月に、俺はため息混じりに呆れながら軽くチョップするのだった。
妄想を書き連ねるだけにとどまらず、投稿してしまった事に後悔中。
by作者