第一章 続×9
――その頃、神界中央浮遊都市オリュンポスでは――
「ゼウス様。雷神トへロス、神位継承を終え、ただいま戻りました。」
トへロスは今、神界でも最も神聖なオリュンポスの神殿を守るオリュンポス12神の中でも最も偉く最も強い「神王ゼウス」に頭を垂れている。
そもそも、トへロスはこういう場所が苦手だ。
普段からおちゃらけているトへロスは、仲間と楽しんでいる時のような、明るく楽しい雰囲気を好む。
だが、このオリュンポス神殿に、そんな雰囲気はない。
だから苦手なのだ。
そして、重々しい空気の中、ゼウスが口を開いた。
「うむ。ご苦労であった。そなたはもうヴァルハラで休んでいるといい。」
「はっ、ありがとうございます。」
普通、他の神はここでゼウスの言葉は終わりなのだが、トへロスはそうはいかなかった。
「トへロス。ちょっと待て。」
「は、はい!?」
トへロスは一気に不安になる。
ゼウスに呼び止められると言えば、ゼウスの機嫌を損ねてしまった時ぐらいだ。
ゼウスの機嫌を損ねるというのは、死を意味する。
ゼウスによる処刑で跡形もなく消し飛ばされてしまうのだ。
トへロスは、死を覚悟した。
そして、次にゼウスが発した言葉は、意外なものだった。
「次の雷神は、どんな奴だ?」
トへロスは、心底ほっとした。
そして、次期雷神、来人を召した経緯を語るのであった。