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レッドキャップ  作者: 髪槍夜昼
二章 追跡者達
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第七話 魔石


「さてと、先ずは…」


どうしようか。


城を抜け出したリアは、早速道に迷っていた。


元々、世間知らずなお姫様だ。


赤帽子を探すとは言っても、何から始めればいいか分からない。


「前途多難だなぁ…」


リアは自分の耳につけてある星のピアスに触れた。


三年前に父親から貰った御守り。


今では形見となってしまった大切な物。


(きっと、怒るだろうな)


あの心配性な父親は、今のリアを怒るに違いない。


だけど、立ち止まる訳にはいかない。


リアは、何も知らないままではいたくないのだ。


「よし…!」


リアは改めて決意し、意気揚々と歩き出そうとして…


誰かに手を掴まれた。


「お嬢ちゃん、コレ欲しくない?」


人相の悪い男だった。


その手に、何か粉末の入った小瓶を持ち、笑みを浮かべている。


「何それ?」


「最高の気分になれる物さ、頭の中が真っ白になって嫌なこと全部忘れられる」


男は相変わらず、嫌な笑みを浮かべていた。


その目の焦点は、リアに向いていない。


幻覚でも見ているかのように、ぼんやりと虚空を見つめている。


「嫌なこと…」


「そう、現実なんて嫌なことばかりさ。幻覚の世界は楽しいぜ? な?」


悩むリアへ男は小瓶を差し出した。


そして、リアはその小瓶を…


「何やってるんですか!」


受け取る寸前で、叩き落とされた。


横から突き出た小さな手によって、


「チッ、またお前か…邪魔すんなよ」


「あなたが魔石中毒になって堕落するのは自由ですが、何も知らない子を巻き込まないで下さい!」


片目を隠すように前髪を垂らし、全身を隠すようにボロ布を纏った少女だ。


リアと同じくらいの背丈だが、歳は少し上に見えた。


男は暫くその少女に文句を言っていたが、やがてどこかへ去って行った。


「あ、あの…」


「そこのあなた! 自分が何をしようとしたのか分かっているのですか! アレは魔石の粉…毒物ですよ!」


男が去ると、少女は怒ったようにリアに叫んだ。


「魔石の粉には、確かに幻覚作用がありますが…夢を見る時間と比例して現実の身体は侵食されていきます! 汚染された身体は、二度と戻らないのですよ!」


「は、はい…ごめんなさい…」


少女の剣幕に思わず、リアは頭を下げた。


「分かればいいのです…随分と世間知らずのようですが、あなたは?」


「…リア」


「リア?…リアって…もしかして、行方不明になったお姫様ですか…!」


驚いたように、少女は叫んだ。


もうこんなに広まっているのか…とリアは他人事のように考えていた。


「お姫様がどうして、こんな場所に? あ、いえ、自己紹介が先ですね」


そう言うと、少女はボロ布についた埃を叩き、出来る限り身なりを正してから言った。


「私はホリー、しがない町娘Aですよ」








「なるほど、つまりあなたは赤帽子を探していると…」


貧民街にあるボロ小屋の中で、二人は会話をしていた。


少し強い風が吹けば、跡形もなくなりそうな家だが、れっきとしたホリーの住処だ。


「赤帽子と言えば、国王殺しでタイターニア中の妖精狩りが狙っていると聞きますが…」


「………」


「更に言うと、最近セドリックと言う妖精狩りの隊長が返り討ちにあったとも聞きます…あなたは本当にアレを許すのですか?」


セドリックと言う人物は知っていた。


父の戦乱時代からの旧友で、リアも何度か会ったことがあった。


彼が、殺された。


また、赤帽子がヒトを殺した。


そんな殺人鬼を、許せるのか?


リアの答えは決まっていた。


「…許さないから知ろうとしない、知らないから許さないじゃ、いけないんだよ」


自然にリアの口から言葉が紡がれる。


「怒るにしても、責めるにしても、相手のことを知らないといけない。何も知らないで、自分の都合だけで相手を責めるのは駄目なんだよ」


「…慈悲深い人ですね」


「初対面の私を助けてくれたホリー程じゃないよ」


「むう…」


リアが笑みを向けると、照れたようにホリーは目を逸らした。


暫く困ったように唸った後、一つため息をつく。


「諦めさせて城へ帰らせるつもりでしたが…無理そうですね」


「うん、私って意外と頑固なんだ」


「そのようです…仕方ない、協力しますよ。私としても、赤帽子には用が出来ましたし…」


「用?」


「はい、赤帽子はあなたの呪いを解いたことがあるらしいので…」


そう言うと、ホリーは纏っていたボロ布を脱いだ。


ボロ布で隠していた、肌が露出される。


「『私の呪い』も解いてもらえないかと思いまして…」


露わになったホリーの右腕は、緑に変色していた。

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