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レッドキャップ  作者: 髪槍夜昼
二章 追跡者達
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第二十一話 理想


「国王様も軍事強化なんて…また戦争が起こるんかねー」


「またってお前、前の戦争は二十年前だろ? 当時の俺達なんてまだガキだぞ?」


エインセル王城を警護する兵士が会話をしていた。


この欠伸が出るくらい平和な時代、


軍人の仕事と言えば、妖精狩り程度だったが最近は違う。


最近のエインセル国王の動きがおかしい。


以前から現状に不満を抱いていたのは明らかだったが、エイブラムが死んでから動きが更に激しくなった。


軍備を整え、反乱の機会を窺っているようだ。


「…王がいないとはいえ、大国タイターニアに勝てると思うか?」


「さあな、でも一応エインセルにも『秘密兵器』がない訳でもないだろう?」


「ああ、あの妖精か」


思い出したように男は呟いた。


いつのことだったか、国王は一匹の妖精を懐柔することに成功した。


妖精の魔法は絶大だ。


あの力を手にすることが出来れば、ヒト相手の戦争に勝つことが出来るかもしれない。


問題は怪物である妖精が、ヒトの言うことを聞くかどうかだが…


「まあ…戦争になると決まった訳でも………ん?」


「どうした?」


「いや…」


男は首を傾げながら、それを指さした。


「あんな所に『木』なんてあったか?」


その瞬間だった。


地面に敷かれた石の床が、頑丈な城壁が、蠢く植物へと変化していく。


人工物が侵食されていく、悪夢のような光景だった。


「な、何が…あ…ああああ!」


「おい、どうし…!」


次の異変は、兵士達の身体に起こった。


皮膚が、腕が、足が、頭が、緑に変色し、植物へと変化していく。


狂ったように悲鳴を上げ、逃げ出そうとするが手遅れだ。


「何事だ!」


「これは、敵襲…」


悲鳴を聞き、十数人の兵士達が駆け付ける。


しかし、その場に残っているのは兵士ではなく、二本の樹木。


丁度、人と同じくらいの大きさの…


「う、うわああああああ!」


「人が、人が植物に…!」


その事実に気付いた者が叫ぶ。


混乱は伝染する。


皆、意味もなく走り回り、そして植物に触れた者から順番に侵食されていった。


「鎮まれ! 落ち着いて対処すれば…」


「おいおい、いい感じにパニクってんだから水を差すなよ」


その事実に気付いた一人の男が叫ぶが、その声は届かなかった。


男の首は宙を舞い、兵士達の混乱に拍車をかける。


狂乱の中、男の首を落とした赤帽子の男は笑った。








「奴隷にだって、妖精にだって人権はあると思うんです!」


唐突にキャロルは叫んだ。


本当に明るく、激しい子だ。


「ラバーキン様はアタシに優しくしてくれるけど、他のヒトは皆、奴隷ってだけで蔑んだ目を向ける。ラバーキン様もそう、貴族の地位を与えられているけど妖精ってだけで蔑まれる。そんなのは間違っています」


「………」


奴隷の少女に、リアは返す言葉がなかった。


確かに妖精と言うだけで、リアとホリーは差別していた。


ラバーキンは何もしていないというのに。


むしろ、友好的に接してきてくれたと言うのに。


「だからアタシは平等な世界が欲しいんです。アタシ達が自由に暮らせる居場所を手に入れたい!」


「…そうだね」


それは何て綺麗な言葉だろう。


もし、そんな世界が訪れるのなら、妖精も奴隷も受け入れられる。


赤帽子も、ヒトを嫌悪せずに済むかもしれない。


「…ところで、ラバーキンはどうして貴族の地位を持っているのですか?」


ホリーが疑問を口に出す。


この国でも妖精は蔑まれる者なら、どうやって貴族の地位を手に入れたのだろうか?


確かに疑問だった。


「私の魔法が、ヒトにとって有益だからかな」


「?」


「まあ、見てくれた方が早いか」


そう言うと、ラバーキンは徐に右手で握り拳を作る。


「さて、ギャンブルのお時間だヨ。この手の中に金貨がある。信じる? 信じない?」


拳をリアに見せて、ラバーキンは言った。


先程拳を作った時は、金貨など持っていなかった。


しかし…


「えっと、信じる」


「正解! 賭けはリアの勝ちだヨ」


笑いながら言うラバーキンの手の中には、いつの間にか一枚の金貨があった。


目を丸くするリアへ、金貨を指で弾いて渡す。


「それは君の物だヨ」


「あ、ありがとう…」


「今のが、ラバーキンの魔法ですか?」


困惑するリアに代わってホリーが聞いた。


ラバーキンは手品の種明かしをするように、両手を広げる。


「その通り、今のが私の魔法『レプラコーン』だヨ。この世界に存在する金銀財宝を感知し、その全てを掌握する魔法」


財宝を持ってくる魔法。


攻撃的ではない、妖精らしからぬ魔法だ。


これならまだ、ホリーの魔法の方が戦闘向きと言える。


「この魔法で私はヒトに取り入ったのだヨ。平和的にネ」


「なるほど…」


確かに妖精にとってはそうでもないが、財宝はヒトにとって効果は絶大だ。


危険性が低いことも、プラスに働いたのかもしれない。


「…ハッ! そう言えば、こんなことをしている場合じゃないですよ。ラバーキン様!」


ラバーキンの様子を黙って見守っていたキャロルが叫んだ。


すっかり忘れていた。


何の為に自分はここへ来たのか。


「ドゥエイン様が呼んでいるのですよ! 急いで下さいー! また怒られちゃいますー!」


「了解。それじゃあ二人とも、またネ」


「早く早くー!」


慌ただしく、その妖精と奴隷のデコボココンビは去って行った。


ヒトと妖精。


種族が違うと言うのに、二人は本当に友人だった。


互いが互いを思い遣っている。


「…私達も」


あの頃まではそうだったのかな、赤帽子。


赤帽子さんの妖精解説コーナー


「どうも、最近暴れるしか能がないんじゃないかと思われていないか不安な赤帽子ッス」


「一応、俺も考えて行動しているからな? ちょこっと短気だが、馬鹿じゃないよ?」


「…まあ、解説始めますか」


「今回の妖精はレプラコーン。地中の財宝の在り処を知っていると言われ、捕まえるとそれを教えてくれる妖精だ」


「ちなみにラバーキンもレプラコーンの別名の一つで、青い鳥みてーな所謂捕まえたら幸福になれるタイプの妖精だな」


「と言っても、そう簡単には捕まえられず、大抵は悪戯を仕掛けられて逃げられちまうらしい。ギャンブルみてーなものか。世の中、そう上手くはできてねえ」


「魔法としての効力は、この世のどこかにある財宝を手元に持ってくることだな。望むものをいくらでも引き出す魔法だ」


「幸せの青い鳥は案外身近な所にある。幸福ってのは他者に求める物じゃなくて、手に入れてから気付くものなんだぜ?」


「と言う訳で、今回は以上。また次回!」

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