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レッドキャップ  作者: 髪槍夜昼
二章 追跡者達
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第十九話 魔法


旧エインセル国。


二十年前の戦争でタイターニアに征服された小国。


戦乱時代の『最後の戦場となった場所』


「ここが…旧エインセル…」


王都ほどではないが、賑わっている街並みを見ながら、リアは呟いた。


かつて戦場だったとは思えない程、活気に溢れている。


当然と言えば、当然か。


戦争が終わってから、二十年も経つのだ。


国が変われば、人も変わる。


戦争には負けてしまった国だが、戦乱時代に比べれば明らかに豊かな暮らしをしている。


「この国に、何か赤帽子の手掛かりがあるらしいね」


「そうですね…」


そう言うと、ホリーは黙り込んだ。


いつもとは違う反応だ。


最近はずっと上の空。


悩み事でもあるのだろうか?


「盗人だー! 捕まえてくれー!」


リアがそんなことを考えていると、そんな叫び声が聞こえた。


エインセルについて早々に物騒な。


活気は良さそうだが、意外と治安は良くない国なのだろうか?


白昼堂々と盗みを働いたのは、人相の悪い男だった。


大きな鞄を抱えて、こちらへと走ってくる。


「…丁度いいですね」


「え?」


それを見て、小さくホリーが呟いたのをリアは見た。


丁度いい?


一体何が?


首を傾げるリアの隣で、ホリーは人差し指を伸ばした。


ゆっくりと盗人の男を指さす。


「…眠れ」


囁くような静かな声だった。


子供を優しく寝かしつけるような、穏やかな声。


何かの『呪文』のような、声。


「…ッ!」


変化はすぐに起こった。


盗人は眩暈がするかのように、一瞬目を擦るとそのまま地面に倒れた。


男は糸が切れた人形のように、動かない。


それは睡眠と言うよりは、失神に近かった。


「…ホリー?」


「嘘…」


それを見ていたリア以上に、ホリー自身が驚いているようだった。


向けていた指が震えている。


今のは、まさか…


「…リア…私も…」


驚愕を顔に張り付けたまま、ホリーはリアの方を向いた。


「魔法使いに、なっちゃったみたいです」








「健康なヒトの身体にも、僅かなら魔力があるのだから使えないか…って、この国へ来る途中にずっと思ってたんですよ」


「でも、ヒトが魔法を使うなんて聞いたことが…」


「この間、出会ったばかりじゃないですか。あの人を参考にして私も魔力を使えないか試してみたんです」


モデルなら既にいた。


バーゲスト。


ヒトでありながら、並の妖精以上の魔法が使える魔法使い。


ヒトでも魔力を使うことは出来る。


それをヒントにホリーは自身の中に残された魔力を使おうとしたのだ。


「でも、やっぱりヒトの魔力では精々眠りの魔法が限界みたいです。見習い魔法使いってところですかね?」


「さっきのアレが、眠りの魔法?」


「はい。ただ眠らせるだけの弱い物ですが、魔法ですよ…『アルプ』って名前はどうでしょう?」


笑みを浮かべながらホリーが言う。


最近悩んでいたのはこの件だったのか。


ホリーがどうしてこんなに嬉しそうなのかは分からないけれど、まあ悩みが晴れたならよかった。


「危なくは、ないんだよね?」


リアが少し心配そうな顔をして聞く。


ホリーは一瞬、言葉に詰まった。


魔力の危険性をホリーは誰よりも知っている。


魔力に利用価値を見出す輩に激昂したこともあった。


だが、それを差し引いても、ホリーはリアの助けになりたいのだ。


リアも、リアの追いかける赤帽子も、他の妖精達も、皆ヒトであるホリーを凌駕する力を持っている。


妖精達と張り合い、リアを守るには力がいる。


もう、無力で守られるだけの自分は嫌なのだ。


「…大丈夫ですよ。この程度の魔力、子供にだってありますから」


安心させるように笑みを浮かべる。


リアはそれに納得したように笑ってくれた。


自分の命を救ってくれたこの子に恩を返したい。


それだけが、ホリーの望みだった。


「おやおや、たまには散歩もするものだネ。麗しい少女が二人も」


その時、二人は声をかけられた。


軽い感じだが、独特のテンポの口調。


二人の前には、いつの間にか一人の男が立っていた。


「こんにちは、私は『ラバーキン』…妖精さ」


その男は笑みを浮かべながら、言った。


赤帽子さんの妖精解説コーナー


「また新キャラかよ…出たり消えたりの主人公様オレの地位が危ういぜ」


「さて、と。今回は………はあ? あのガキも魔法が使えるようになっただと?」


「流行のアクセサリーじゃねえんだから、そうヒトにポンポン持ってもらうと困るんだが…まあ、いいか」


「えーと、名前はアルプ。アルプってのは夢魔。サキュバスとかインキュバスなんかに近い妖精だ」


「ちなみに知ってたか? サキュバスが女性型で、インキュバスが男性型なんだぜ?…ってどうでもいいか」


「魔法としての効力は対象を眠らせる。ただそれだけの弱い魔法だな。まあ、ヒトのカスみてえな魔力じゃコレが限界だな」


「魔法をかけると言う行為の本来の意味である。魔力で対象を汚染するのも、上手くいってないみてーだしな。まあ、魔力の汚染を嫌うあのガキなら、逆に喜ぶか?」


「…見本を一度見たことで、案外簡単に魔法を手に入れたが…まあ、その内思い知るさ。力には犠牲が伴うってことをな」


「くはははははは………また次回!」

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