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レッドキャップ  作者: 髪槍夜昼
二章 追跡者達
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第十六話 無垢


「赤っちー、赤っちってどんな魔法が使えるのー?」


「………」


「ボギーのはね、グリーンマンって言って自然を作る魔法だよ? ねえねえ、赤っちのも見せてよー」


「………」


懐かれてしまった。


厄介なことになったと、赤帽子は喧しいボギーと言う妖精から目を逸らす。


森の中で偶然リア達を見つけ、相手をするのも面倒だったので、暫く様子を見ていた。


すると、このボギーと言う妖精はあっさりとバーゲストと言うヒトに倒された。


別に助ける義理はなかったのだが、ボギーの妖精らしい性格が赤帽子の琴線に触れたのか、助けることにした。


その結果、


「ねえ、無視しないでよ。赤っちー」


これ程、懐かれてしまった。


赤帽子自身、マイペースで傍若無人な性格をしているが、それ以上にボギーはマイペースだ。


「大体赤っちって何だよ。俺は赤帽子レッドキャップだ」


「レッドって赤じゃん。それにお兄ーさん、全体的に赤いじゃん。だから、赤っち」


「………」


短気な所もあるが、基本的に赤帽子は余裕を持って、小馬鹿にして、相手に接している。


赤帽子の意外と計算高い一面と、その実力がそれの元になっているのだが、一つだけ苦手としている物がある。


それは、自分のペースを乱されること。


敵意や反抗ならまだしも、自分の予想を超えた行動や、思考が何より苦手なのだ。


その為、予想外なことが起こると…


「あ、お兄ーさんより、お父ーさんって呼んだ方がいい?」


「俺はまだ二十代だ! お父さんなんて呼ばれる筋合いはねえ!」


激怒する。


案外、赤帽子がリアに対して特に辛辣に接するのも、裏切られても慕うその思考が理解できないからもしれない。


「大体、お前とそんなに歳離れてねえだろ。若作りしてんじゃねえぞ、コラ」


「…え?」


赤帽子の言葉に、ボギーは本気で首を傾げた。


言葉の意味が分からない。


ボギーの外見は、リアと同じくらい。


まだ二十にも満たない少女のように見えるが…


「妖精の身体は成長が遅い。稀に歳が止まる奴もいる。お前もそうだろ?」


「そう…なの? じゃあじゃあ、ボギーって何歳くらいなの?」


「…二十代…少なくとも二十は超えている」


その言葉は、ボギーにとって割と衝撃だった。


記憶がないので、自分の年齢はヒトに比べて十代くらいだと思っていたのに、


実は自分は割ともう子供じゃない年齢だったとは…


「ボギーって、いつの間にか立派なレディになってたみたいー…」


「…まあ、中身は全然ガキのようだな」


言葉は解するが、知性が低い方なのか。


それとも、記憶喪失が影響しているのか…


「大人になったら…何しなきゃいけないんだっけー?」


そう言って、暢気に首を傾げているボギーの精神年齢は、外見相応のようだ。


やれやれ…と赤帽子はため息をつく。


気が合いそうだったので気まぐれに拾ったのは、早計だったか。


早くもそんな後悔が、赤帽子を包んでいた…


「そうだ! 子供を産まないとー!」


「ゲホッ! ゴホッ!」


思わず咳き込んだ。


何てことを大声で叫ぶガキだ。


「子供だよ、子供! 大人は子供を産み、育てる義務があるとか、何とか、前に読んだ本に書いてあったような…」


「自信ねえなら、叫ぶな!」


「と言う訳で、赤っち! 協力して!」


「…はあ?」


「だって、妖精の知り合い…赤っち以外にいないし…」


じゃあ、するな。


子供など、望むな。


「大丈夫! やり方なら分かるから! こうめしべとおしべが…」


「それ以上喋るな」


「痛い痛い! やめて、斧を押し付けないで! ハード過ぎるよー!」


この耳年増が…


吐き捨てながら、赤帽子はボギーに向けていた斧を消した。


「それだけ元気なら、先を急いでも問題ねえな」


「先? どこに向かってるんだっけー?」


「さっき言ったろ、旧エインセルだ」


赤帽子は目的地を呟いた。


バーゲストが教え、リアの向かっている場所を…


当然、リア達の会話は聞いていたので、向かっていることは知っているが…


それでも優先することが、旧エインセルにはあったのだ。

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