始めに…………
開口そうそう小っ恥ずかしい限りだが、俺こと、存材・空樹は幼馴染みの女の子に恋している。
隣に引っ越してきた彼女に恋をしていると気づいたのは、38度の高熱の時だ。
感情を表に出す事が余りない俺は、その代わりと言うように、どうやら体の体温の上げ下げによって、それを表すらしい。
感情が高ぶればホッカイロの如く熱を上げ、ショックな事があれば、氷水に浸かったかのように青くなる困った体だ。
特に、幼馴染みが絡むと俺も知らない内に熱で倒れたり、冬でもないのに凍死仕掛けたりする。
さて、俺の事は大体話したので、幼馴染みの話をしよう。
幼馴染み、伯東・美朝は大金持ちの令嬢で、容姿端麗、頭脳明晰、非の打ち所がない優等生だ。
平民の俺では、隣にいるのであつかましいと思う。
しかし、幼少の頃からの付き合いもあり、彼女は気さくに話し掛けてくる。
その度に俺が熱を上げたり下げたりしているのは、言うまでもないが、そんな完璧超人の彼女にも一つ秘密がある。
いや、自分でさえ知らないのだから秘密ではないか。
ともかく、人には言えないし、見られてもいけない物だ。
それは、彼女にはもう一つの人格があり、それが大変残念な人格なのだ。
自身の事を元魔王と言ったり、その魂が彼女の体を乗っ取ったとか、悪堕ちだとか言ったりと、伯東美朝の人生をぶち壊しにするような人格だ。
だから、俺は彼女にも周りにもその人格を隠し、生活している。
これは、そんな悪堕ち少女と、平熱を愛する俺の物語。