短編 兵器の部品の『じさつ』の話 ※少々暗い話です
ふと思いついた、創られたものの話です。
かなり暗い内容になっています。
暗いというか、悲しい?なのか黒いのか。
俺は、なぜ『創られた』?
俺をなぜ『人間として』創った?
俺はただの戦闘機械で良かった筈だ。
機体に乗り込み、戦い、そして限界が来れば殺される。
そんな道具として生み出されたはずだ。
では、何故だ。何故、彼女は俺を助ける。
ここは『敵』の領地。ならば彼女も敵の筈だ。
……わからん。
「大丈夫、あなた?」
彼女はいい、木の下に血まみれで倒れていた俺を救ってくれた。
「貴方凄いのね。あんなお怪我から一週間で動けるんですもの」
彼女はそう言い、俺が始めてみる表情……『笑顔』を浮かべる。
俺みたいな兵器に対して。
そんな日々が流れさらに一週間。
俺が頼まれた仕事を済ませ彼女の家に戻ると、燃えていた。
家は吹き飛び、瓦礫が燻り、彼女が可愛がっていた犬という生き物が死んでいる。
……なぜだ。
そこでただ立っている俺に、一人の男が歩み寄ってきた。
俺を創った男。作らせた男。
「お手柄だったな、*****」
男は俺の識別名を言い、淡々と語る。
始めて見た時から変わらん、にやにやとした顔で。
「ここは敵の高官の家でな。守りが堅かった故、家ごと吹き飛ばさせてもらった」
にやにやと。ただ顔を変えず男は語る。
「彼女は……どうした」
「彼女……ああ、あの高官の娘か。欲しければくれてやろう。
なぁに、我々が散々楽しませてもらったからな。もう必要ない」
男が言い、指を鳴らすと二人の男が彼女を連れてきた。
彼女は……死んでいた。体は生きているが、心が。
「……なぜ殺した?」
「ふん、敵に感情移入でもしたか?*****一号機。貴様は兵器だ。
私の命令に従っていればいい。では、次の作戦だ」
指定された目的地は、彼女の友人が数多く居る隣の街。
「作戦開始時間だ。*****シリーズ、起動せよ」
言われ、俺はその機体を動作させる。
「*****シリーズ、殲滅開始」
命令が下り、俺の『同型兵器』達が町を焼き払う。
逃げ惑う人々。焼け落ちる家。そして……死んだ子供。
「あ……ああ……」
俺の中で生まれかけていたらしい、何かが壊れる音が聞こえる。
いや……『歪んだ』音だったのかもしれない。
「し、指令!*****一号機、メンタルデータ、異常確認!
このままでは強制命令も失効します!
ああ、ダメです!*****一号機、暴走します!!」
誰かが叫ぶ声が聞こえる。ああ、あれは通信士の声だったか。
……どうでもいい。
「彼女を殺した『俺』……そして、俺を創った人間。
そして、残る『俺』の群れか。……今までで、一番苦戦するだろう。
だが、俺の存在が、彼女を殺した。ならば俺自身で、俺を殺す。
リミッターカット。逝くぞ……『プルートウ(冥王)』一号機。
本部からの命令、すべて拒絶。これより、戦争根絶のための自立行動に移る。
『プルートウ』二から七号機、そして『俺を生み出した存在』を殲滅する」
俺は、ふたたび彼女に逢うべく、俺は枷を外し自分を『殺した』。
その後、プルートウ一号機は同型機全てを破壊し、敵味方問わず全ての『人間』を殺し、
一人の女性の亡骸を抱き深い海の底へ没したと言う。
これが、かつて世界を滅ぼした、悲しい冥王の『殺戮』の物語。