悪役令嬢に転生したので、破滅フラグを回避するために魔法銃を作って自衛します。~王子様が浮気している間に私は軍事大国のトップになりました~
気づけば、婚約者の王子様はヒロインといちゃいちゃしておりました。
しかも私は、乙女ゲームで破滅する予定の悪役令嬢。
婚約破棄、断罪、家の没落、最悪の場合は処刑。
そんな未来、受け入れてたまるものですか。
というわけで私は考えました。
王子の愛を取り戻すより先に、自分の命を守ればいいのでは? と。
なので作ります。魔法銃。
護身用です。たぶん。きっと。おそらく。
王子様が恋に夢中なあいだ、私は私で生き残る準備を始めます。
その結果、なぜか国の軍事まで握ることになるのですが、それはまた別のお話。
どうぞお楽しみください
温室には、春を先取りした花が咲いていた。
白い薔薇。淡い桃色のつぼみ。青く小さな花々。王立学園の温室は、いつだって絵画みたいに整っている。
その真ん中で、さらに絵になる二人がいた。
「エミリア、その髪飾りがよく似合う」
「で、殿下……そんな、もったいないお言葉です」
金髪の王子フェルディナンドが、栗色の髪の少女にやさしく触れる。
その瞬間だった。
私の頭の奥で、何かが弾けた。
王立学園。攻略対象の王子。ヒロインのエミリア・ローゼン。そして、婚約者の私。
レティシア・ヴァルクール。
ここは前世でプレイした乙女ゲームの世界で、私は王子ルートにおける悪役令嬢だ。
このまま進めば、私はエミリアに嫌がらせをしたことにされ、卒業記念舞踏会で婚約破棄を宣言される。さらにヴァルクール公爵家は王家に睨まれ、軍事機密流出の責任まで押しつけられて没落。最悪、私は処刑。
恋の修羅場?
違う。
処刑台への助走だ。
フェルディナンド王子がようやく私に気づいた。
「ああ、レティシアか。少し話があるのだが」
「結構ですわ」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
王子が眉をひそめる。エミリアがびくりと肩を揺らす。周囲の令嬢たちがざわついた。
「……何だと?」
「急ぎの用を思い出しましたの。どうぞごゆっくり」
私は淑女らしく一礼し、くるりと踵を返した。
廊下に出て、人目がなくなったところで壁に手をつく。
「恋だの浮気だのしてる場合じゃないわ」
胸は痛まなかった。代わりに、背筋がすうっと冷えた。
「まず、撃てるようにしないと」
◇
その日の夜、私は机いっぱいに紙を広げた。
悪役令嬢の破滅ルートには、きれいなくらい共通点がある。
王子に執着する。王都に残る。家の力を王家に取り込まれる。
なら逆をやればいい。
王子を追わない。王都から離れる。家の技術を、王家が気軽に奪えない形にする。
そして何より、自分で自分を守れる力を持つこと。
この世界の魔法は杖と詠唱が基本だ。強力だが遅い。奇襲に弱い。非力な者ほど不利になる。夜会帰りの馬車で襲われた令嬢が、悠長に詠唱して助かるわけがない。
だったら、もっと速く、もっと単純に、もっと確実に。
私は紙の上に線を引いた。
短い筒。握り。引き金。術式を固定するための刻印。魔石を込めた弾。
杖の代わりに握る、小型の魔導発射機構。
魔法銃。
「悪役令嬢? 結構」
インクが紙に染みていく。
「でも、死ぬ役だけはお断りよ」
◇
「北辺の工房を視察したい?」
王都から帰還した父は、応接室で私の言葉をそのまま復唱した。
ヴァルクール公爵。北辺を守る公爵家の当主であり、舞踏会の噂話より国境線の報告書が似合う男だ。銀の髪に鋭い灰色の瞳。無駄を嫌い、現実を好む。
「ええ。王都で飾り物をしているより、うちの強みを知るほうが有益ですわ」
「急だな」
「殿下の気まぐれに付き合うのにも飽きましたの」
父は少しだけ目を細めた。
「泣いて王都にしがみつくかと思ったが」
「そんな趣味はありません」
「それは結構だ」
低く笑い、父は立ち上がった。
「では見せてやろう。鉱山も、鍛冶場も、兵器庫も試験場も。ヴァルクールの現実をな」
北辺は冷たい土地だった。
白い城壁。黒い岩肌。赤々と燃える炉。工房には鉄と油と魔石の匂いが満ちていた。
だが、並ぶ武器を見た私の口から出たのは感想ではなく欠点だった。
「重い」
「詠唱が長い」
「持ち替えに時間がかかる」
「令嬢ひとりでは扱えない」
「随分と簡単におっしゃいますね、公女殿下」
低い声が飛んできた。
振り向けば、煤のついた作業服に軍用外套を羽織った青年がいた。黒髪、切れ長の目、愛想はまるでない。
「カイル・ヘイデン。工房と試験場の統括補佐です」
「レティシア・ヴァルクールよ。知っているでしょうけれど」
「もちろん。王都で殿下の婚約者をなさっていたご令嬢として」
棘のある言い方だった。
私は笑顔のまま、机の上の杖を指で軽く弾いた。
「では技術士官殿。非力な者でも扱えて、詠唱を短縮できて、持ち運びやすく、奇襲にも即応できる魔道具は作れますか?」
「そんな便利なものがあるなら、とっくに作られています」
「誰も本気で必要だと思っていなかっただけでは?」
私はその場で紙を広げ、線を引く。
筒状の本体。握り。引き金。装填部。術式の流れ。
カイルの表情が、少しずつ真面目になっていく。
「魔石を弾として使います。詠唱は使い手の頭の中ではなく、道具側の術式に埋め込むのです。引き金は起動の合図。杖より短く、片手でも扱える形にする」
私は顔を上げた。
「私は戦争がしたいわけではありません。襲われても死なない仕組みがほしいのです」
カイルはしばらく黙り込んでいたが、やがてぽつりと呟いた。
「……理屈は通っています」
「作れそう?」
「試作なら」
「なら作りましょう」
父が愉快そうに笑った。
「面白い。やれ」
◇
試作は、派手に失敗した。
一号は術式暴走で地面を抉った。二号は発射が遅すぎて役に立たなかった。三号は本体が凍りつき、撃つ前に沈黙した。
「令嬢、兵器開発は遊びではありません」
「知っています。だから続けるのです」
四号で、ようやく形になった。
黒銀色の短い銃身。握りやすい形。引き金の下に補助陣。装填部には小さな魔石弾。
「名称は?」
「まだありませんわ」
「では試作四号で」
「夢がありませんわね」
「兵器庫は夢で動きません」
私は肩をすくめ、試験場の的へ向き直った。
「まず、結界弾」
引き金を引く。乾いた音とともに淡青色の光が飛び、的の手前に半透明の壁が立ち上がる。
「次、閃光弾」
白い光が弾け、周囲の兵士が思わず目を細めた。
「最後に、衝撃弾」
反動は軽い。次の瞬間、的が吹き飛び、後ろの藁束に突っ込んだ。
静まり返る試験場。
だが、その沈黙を破る咆哮が響いた。
訓練用の魔獣が柵を破って飛び出してきたのだ。兵士が慌てて動く。しかし、最も近くにいた若い整備兵が足をもつれて転ぶ。爪が振り下ろされる。
私は考えるより先に銃を構えていた。
「結界弾!」
整備兵の前に壁が出る。爪が弾かれ、火花が散る。
「衝撃弾!」
横から撃ち込み、魔獣の体勢を崩す。
「もう一発!」
足元を吹き飛ばし、魔獣を柵際へ転がした。その隙に兵士たちが拘束網をかける。
やがて魔獣が押さえ込まれ、試験場に安堵の空気が戻った。
整備兵が尻もちをついたまま、呆然と私を見る。
「た、助かった……?」
「見れば分かるでしょう」
父がゆっくり近づき、私の手元の試作品を見つめた。
「これは戦場を変えるな」
「だからこそです」
私は銃を握り直した。
「撃てることより、誰に撃たせるかのほうが大事です。どこで使うか、どう管理するか、そこまで決めなければ意味がありません」
カイルがはじめて、はっきりと頷いた。
「……運用規則まで作るおつもりですか」
「当然でしょう。道具は使い方まで設計して完成ですわ」
その日の夕方、試作四号の名前は決まった。
護身魔導銃。
最初の目的を忘れないための名前だった。
◇
そこから先は、嵐みたいな忙しさだった。
女性貴族向けの小型護身モデル。商隊護衛用の中型。国境守備隊向けの安定型。魔石加工の規格統一。訓練場の整備。整備手順書の作成。保管庫の入出庫管理。
私は机と工房と試験場を飛び回り、父は諸侯を説得し、カイルは改良を重ね続けた。
「連射性を上げれば暴発率が上がります」
「なら安全装置を二段階に」
「重量が増えます」
「女性でも扱える範囲で抑えて」
「要求が多い」
「死なないためですもの」
一方で王都から届く噂は、別の星の天気みたいだった。
王子が学園祭でエミリアに花冠を贈った。湖畔を二人で散歩した。レティシアはきっと嫉妬で泣いているはずだ。
「泣く暇があったら仕様書を一枚でも進めたいのですが」
「向こうはお暇なのでしょう」
「羨ましいこと」
「少しも羨ましそうではありませんね」
「ええ、まったく」
王子が愛の詩を読んでいるころ、私は魔石供給路を増やしていた。
王子がエミリアに耳飾りを贈っているころ、私は北辺三伯と共同防衛協定を結んでいた。
王子が浮気の言い訳を考えているころ、私は平民兵でも扱える簡易照準術式を完成させていた。
気づけば、北辺の鍛冶街は昼夜を問わず炉が燃え、守備隊の装備は見違えるほど洗練されていた。小国の使者が視察に来て、辺境伯が導入を求め、商隊は「北辺経由は安全だ」と口をそろえる。
「これはもう自衛の範囲を越えていますよ、公女殿下」
報告書を抱えたカイルが半眼で言う。
「出発点はあくまで自衛ですわ」
「結果が国防です」
「少し大きめの自衛ですわね」
「だいぶ大きいです」
だが笑ってばかりもいられない。
前世の記憶では、断罪イベントの前後から北辺で不穏な動きが起きる。王都が恋愛劇に夢中な間に、隣国が牙を研ぐのだ。
卒業記念舞踏会の招待状が届いたとき、私は迷わず立ち上がった。
「行きましょう。王都へ」
◇
舞踏会は、息が詰まりそうなほど華やかだった。
シャンデリアの光。磨かれた床。着飾った貴族たち。その中心に立つのは、まるで自分が世界の主役だと信じて疑わないフェルディナンド王子。
隣にはエミリア。青ざめてはいるが、まだ舞台から逃げられない顔だった。
私が会場へ入ると、空気が変わる。
黒を基調とした北辺式のドレス。銀の刺繍。腰には装飾に見せかけた細身のホルスター。
「レティシア・ヴァルクール!」
王子の声が会場に響く。
「よく来たな! 今宵ここで、貴様の罪を明らかにする!」
来た。乙女ゲーム名物、断罪イベント。
「貴様はエミリアに嫉妬し、学園内で脅迫と嫌がらせを繰り返した! 加えて、王家の許可なく危険な兵器を製造し、私兵を強化した! その野心、もはや看過できん!」
会場がざわつく。
私は静かに一礼した。
「では、事実確認をいたしましょう」
「……何?」
「感情ではなく証拠でお話ししましょう、と申し上げておりますの」
私は合図し、後方のカイルに記録魔石を差し出させた。
「まず、エミリア様への脅迫について。そのような事実はありません。代わりにこちらをご覧ください」
空中に映像が浮かぶ。
学園裏手。私の馬車。飛び出す黒装束。倒れる護衛。初期型の護身魔導銃を抜き、閃光弾で隙を作って逃げ切る私。
どよめきが走った。
「襲撃!?」
「レティシア様が?」
「聞いていないぞ……!」
「犯人は王都貴族の私兵崩れでした。資金の流れは王子派の一部と重なっております」
王子の顔色が変わる。
「そんなもの、捏造だ!」
「でしたら王家の監察官にご照会くださいませ。写しはすでに提出済みです」
続けて、私は書類束を差し出した。
「次に兵器開発について。危険な私兵化とのことですが、北辺防衛の一環として開発申請を提出し、受理されております。こちらが承認書類です」
王子は書類を受け取らないまま立ち尽くした。
「そ、そんなもの、私は知らん!」
「ええ。殿下はご覧になっていないのでしょう。北辺からの報告書は、学園での花選びより退屈だったでしょうから」
会場の端で、誰かが息を呑んだ。
王子の頬が赤くなる。
「無礼だぞ、レティシア!」
「無礼ではなく事実ですわ」
そのとき、エミリアが震える声で口を開いた。
「あ、あの……わたくし、レティシア様に脅されたことなんて、ありません……」
「エミリア!?」
「わたくし、ただ……殿下がそうだと……」
王子の断罪劇が、目に見えて崩れ始める。
私は最後の一手を出した。
「そして最も重大な件を申し上げます。北辺では現在、隣国軍が国境を探っております。すでに小競り合いも発生しました。けれど王都は、学園の色恋沙汰に夢中で対策が遅れております」
ざわめきが恐怖に変わった。
「嘘だろう……」
「国境が?」
「なぜ報告が上がっていない?」
「報告は上がっておりますわ。ただ、届いていない方がいるだけです」
王子が言葉を失った、その瞬間。
高い場所から金属音が響き、黒い影が躍った。細い刃が私へ向かって落ちてくる。
悲鳴。
私は反射で銃を抜いた。
「衝撃弾」
乾いた音。刃が弾き飛ばされ、柱に突き刺さる。
凍りつく会場の中、私は静かに銃口を下ろした。
「これが危険なのではありません。危険が、すでにここにあるのです」
◇
断罪劇が崩れた直後、北辺からの急使が飛び込んできた。
「ご報告申し上げます! 隣国軍、国境線を越えました!」
会場は一気に騒然となる。
「王都防衛を優先しろ!」
「いや、北辺へ増援を!」
「兵站が間に合わん!」
「誰が指揮を執る!?」
誰も決められない。誰も現実を見ていない。
父が一歩前に出た。
「陛下。北辺の現状を最も把握しているのは我らヴァルクールです」
私も並ぶ。
「出撃許可を。いえ、許可がなくても領民は守ります」
王は迷いを隠せない目で私を見た。けれど、ほかに選択肢はない。
「……任せる」
「承りました」
私は踵を返した。
「カイル、第二防衛線を上げて。結界弾を前列、閃光弾を側面、狙撃班は高所。補給班は夜通し動かす」
「承知」
「お父様、三伯へ共同防衛の発動を」
「すでに走らせている」
王都の貴族たちが呆然と道を開ける中、私は会場を出た。
恋愛劇の幕は、そこで終わった。
◇
戦場には雪混じりの風が吹いていた。
低い空。黒い敵旗。隣国軍は騎兵と魔術師を主軸にした突破型。正面から受ければ押し切られる。
でも、こちらには準備がある。
「第一列、結界弾。撃て!」
淡青色の壁が何枚も立ち上がり、敵の先頭がぶつかって勢いを削がれる。
「第二列、閃光弾。三、二、一、今!」
白光が雪の中で弾け、敵魔術師たちの詠唱が乱れた。
「狙撃班、右の指揮旗を落として!」
乾いた発射音が連なり、敵の前列が乱れる。馬が嘶き、隊列が崩れる。
私は馬上で全体を見渡した。
大事なのは、殺すことではない。止めることだ。進軍を止めて、崩して、帰らせること。そのために必要なのは気合ではなく、配置と訓練。
「前へ出すぎない! 生きて帰るために撃ちなさい!」
兵たちの返事が重なる。
平民兵も若い騎士も女の整備兵も、同じ装備を握り、同じ手順で動く。血筋ではなく、訓練と仕組みで動く軍。
敵は最初、それを侮っていた。
だが前線が崩れず、魔術師が潰され、補給路が断てないと知った瞬間、空気が変わった。
「敵、後退!」
「追撃は限定。深追いするな!」
「了解!」
私は最後の一発を敵後方の雪壁へ放った。衝撃弾で崩れた雪が退路を狭め、敵軍は混乱のまま後退していく。
静寂が戻った。
私は白い息を吐き、銃を下ろす。
勝った。
護身用に始めた魔法銃は、国を守る防衛体系になっていた。
◇
戦後、事態は一気に動いた。
北辺三伯に加え、周辺小国もヴァルクール式防衛網への参加を希望。共同訓練、装備供給、補給路の共通化。王家はもはやそれを無視できなかった。現実に国境を守ったのは、私たちだけだったのだから。
王都に戻ると、フェルディナンド王子は以前よりずっと小さく見えた。
婚約は正式に解消。継承権は停止。政治への関与も制限。取り巻きも、もういない。
「レティシア……私は……」
王宮の廊下で呼び止められ、私は振り返る。
彼は苦しげな顔をしていた。たぶん初めて知ったのだろう。自分が主役ではない場面があることを。
「何ですの、元婚約者殿」
「こんなはずではなかった」
「そうでしょうね」
私は淡々と答えた。
「殿下は、私がいつまでも貴方を見ていると思っていた。でも私は、自分の未来を見るほうが忙しかったのです」
彼は何も言えなかった。
少し離れた場所で、エミリアが深く頭を下げた。
「レティシア様……申し訳ありませんでした」
「貴女に恨みはありませんわ」
「わたくし、守られることばかり考えていました……」
「それに気づけたのなら、次は自分で選びなさい」
エミリアは涙ぐみながら頷いた。
私はそれ以上何も言わず、前を向く。
◇
新設された王国北方防衛連盟総司令部は、北辺の要塞都市に置かれた。
石造りの広い執務室。壁には国境線の地図。机の上には各地からの報告書と、新型魔導銃の設計図。窓の外では訓練場の号令が響いている。
「公女殿下。いえ、総司令」
カイルが分厚い書類を抱えて入ってきた。
「東部同盟国から導入要請です。あと、新型軽量モデルの試験報告も」
「置いて。……その呼び方、少し大げさですわ」
「もう公女殿下の仕事量ではありませんので」
「ひどい言い方」
「事実です」
私は苦笑して椅子にもたれた。
「もともとは、破滅フラグを避けるための自衛でしたのに」
「随分と遠くまで来ましたね」
「ええ」
「護身用から始まったはずなんですが」
「私もそう思っていたのだけれど」
窓の外では、兵士たちが整然と動いている。北辺三伯の旗、小国の旗、王国軍の旗が、同じ風にはためいていた。
私は机の端に置いた最初の試作品を手に取る。
あの日、温室で王子とヒロインを見たとき、私は自分が捨てられる側の女だと思った。
でも違った。
あれは、別の舞台へ降りる合図だったのだ。
「結局」
私は小さく笑った。
「王子様が浮気している間に、私は軍事大国のトップになってしまいましたわね」
カイルが珍しく口元を緩める。
「ええ。見事に」
私は魔法銃を机に置いた。
恋は失ったのかもしれない。けれど、命も、家も、未来も守った。
それなら十分だ。
悪役令嬢の役なんて、もう誰にも押しつけさせない。
この先の物語は、私が私のために選ぶのだから。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今作は「悪役令嬢もの」と「成り上がり」と「自衛・軍事」を組み合わせて、
“婚約者を取り返す話”ではなく、
“自分の人生を取り返す話”として書きました。
王子の恋愛劇に付き合わず、さっさと見切りをつけて別の盤面で勝つ主人公が好きなので、レティシアにはかなり思い切りよく動いてもらっています。
また、魔法銃という要素も、強い武器そのものより
「非力な立場の人でも自衛できる」
「仕組みと運用で世界を変える」
という方向で描きました。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
面白かった、続きが読みたいと思っていただけましたら、評価や感想、ブックマークなどで応援していただけると励みになります。
本当にありがとうございました。




