表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

第15話『傷跡の記憶と、新たな誓い』



 記録の封印が解かれるとき、空気が震えた。


 咲良とミナトの前に浮かび上がったのは、一つの“記憶”──

 それは、かつて《女神の器》を受け継ごうとした者たちの、破滅の記録だった。


 ──少女がいた。名を、レイナという。

 清らかな心で選ばれたはずの彼女は、次第に力に飲まれ、そして、崩れた。

 大地が裂け、空が悲鳴を上げる中、レイナは自らの記憶ごと世界を封じた。


「これが……過去に起きたこと……?」

 咲良の声が震える。


「まさか、女神の器が……人を壊すなんて……」

 ミナトは拳を握りしめた。


 カイトが静かに頷いた。


「器とは、強さを量るものではない。

 それは、いかに傷を受け、なお進む覚悟を持つかを問う“器”だ」


「……レイナは、それを……」

「一人で抱えすぎた。誰も、彼女を支えなかった。

 その過ちを、記録に残し、私は沈黙した」


 咲良は目を伏せたまま、口を開く。


「なら、私は違う。ミナトと一緒に進む。たとえ傷ついても、支え合って──」


「咲良……」


 二人は静かに目を合わせた。


「過去は変えられない。でも、未来は変えられる。

 この記録は、絶望の証じゃない。もう一度、歩き出すための道しるべになる」


 その瞬間、ルナ・アーカイブの天井がわずかに開き、

 夜の帳を破って一筋の光が降り注ぐ。


 女神の像が、微かに微笑んだように見えた。


 ミナトがそっと咲良の手を取る。


「行こう。これが、新しい誓いだ。

 記録を背負って、未来を創る。それが……俺たちの使命なんだ」


 カイトが目を閉じ、静かに告げる。


「ならば、次なる道を開こう。器が満たされるその日まで、記録は導くだろう」



---


次回予告

第16話『鏡写しの祈りと、偽りの都』

記録に導かれた咲良たちは、“偽りの神”が支配する都市へと足を踏み入れる。

信仰と欺瞞が交錯するその地で、咲良は自らの信じる祈りの形を問われる──。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ