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ジャパニーズ下校

 どうもシファニーです! 可愛いヒロインを描くのって難しいですよね。

 結論から言えば、愛可の弁当は美味しかった。

 おかずとオムライス、それぞれ半分ずつくらい貰ってしまったのは、その美味しさに気を取られたせいだと思いたい。俺はそんなにがめつい人間じゃない。


「いや、マジで凄いな」

「本当デスか⁉ I'm delighted!」

「ほんとほんと、よっぽど練習したんだな」


 正直英語は聞き取れなかったがきっと喜びの言葉だろう。

 にしても高校生でこれだけ作れるとは。いや、それ以前に日本に住んでいるわけでもないのによくここまで日本のお弁当を再現できたものだ。よっぽど日本を楽しみにしていたに違いない。

 そんな中の第1作目のお弁当を見るのが俺だけというのが少し申し訳ないが、その分大いに褒めておくとしよう。


「正直毎日でも食べたいくらいだよ!」

「なら作ってきまるデス? 同じのでよければ作れるデス!」

「おお、いいな、それ!」


 ……あれ? ちょっと待て。今なんかかなり勢いで喋ってたんだが、流れで愛可にお弁当作ってもらうことになってないか? と言うか毎日食べたいは比喩表現のつもりだったんだけど……毎日君の味噌汁が飲みたいなんて告白する人もいたなと思いだし、そう受け取られなかっただけマシかと思うことにする。

 なんか凄い喜びようの愛可を見ていると今更やっぱなしとは言えなかった。実は美味しくないと思っているんじゃないかと思わせてしまったら可哀そうだし、まあ、お弁当を作るのは手間だとお母さんも言っていた。お母さんの苦労が解消されて愛可が喜ぶ、一石二鳥と言えなくもない。

 ……ほんとに言えるか?


「そうと決まれば、新しいお弁当箱が必要デス! トモクラ、少し待っていてくださいデウ! 食べたら一緒に買いに行くデス!」

「ああ、分かった。……一緒に?」


 ここでひとつ白状したいのは、俺の女性免疫が決して高くないということ。そして、そのためかなり適当に会話しているということだ。今の返事も、とりあえず頷いておけばいいかの先行入力で発せられた暴発で意図したものではない。俗に言う、やってない、なのだが当然キャンセルは利かない。

 俺がどうしようかと慌てふためいている間にも、愛可は夢中でお弁当を食べていた。自分でも美味しいと思えているらしく楽し気で、初めての日本でのお弁当を汚すのも申し訳なく、結局声をかけることは出来ないのだった。


 そして帰り道。結局俺は愛可と並んで歩いていた。


「La la la~」


 隣を見れば、愛可は上機嫌で手と足を大きく振り、鼻歌交じりに歩いていた。ジャパニーズ買い食いをするんだと言っていたので、それを楽しみにしているのだろう。

 対する俺は隣の人が輝かしすぎて萎縮している一般学生。

 いやマジ、並んで歩ける身の丈じゃないっす姉御。片やイギリス産まれの金髪美少女、片や量産型インドア系男子。釣り合いがとれるわけがない。あれか? とりあえず愛可の荷物を持つところから始めるか? 物理的な重さで釣り合いを取らなければどうしようもない気がする。


「えっと、愛可、荷物、持とうか?」

「Huh? いいんデス?」

「いやほら、お弁当貰っちゃったしお礼と言うか。まあ、よければあんまり気にしないで任せてくれ」

「おお! トモクラは優しいデスね! お願いするデス!」

「ああ、任せろ」


 受け取った鞄は少し軽かった。と言っても俺の鞄も軽く、恐らくは教科書が入っていないからだと思われる。これならまったく問題ないなと思いつつ両方左肩にかける。

 ま、大丈夫だな。


「それでどこ行くんだ?」

「100yen shopデス! あそこなら何でも売ってるし、日本の商品はカワイイのでお安く買えてI loveデス!」

「なるほどな。となると、あそこか」


 家から近い高校を選んだだけあって地元のことはそれなりに知っている。あまり訪れたことはないものの100均の場所を思い出し、ちゃんとそちらに向かっていることを確認して、ふと疑問に思う。


「あれ? 100均の場所知っていることは、もしかして家が近いのか?」

「Yes! ワタシの家はここから10分くらいのところにあるデス。トモクラは? どこデス?」

「俺もそのくらいだな。方向はあっちだけど」


 と言って進行方向と逆を指すと、少し期待していた様子だった愛可は肩を落とした。


「ワタシはあっちなので残念デス……」


 と進行方向を指さし、見事に真逆だった。

 まあ、これで同じ方角だったとしたらそれはそれで偶然が重なりすぎてむしろ必然を疑うところだった。一安心と言えば一安心。


 ただ、愛可は大分本気で落ち込んでいる様子で肩を落とし、歩幅が見るからに小さくなっていた。感受性豊かだなと思いつつ、何かフォローを入れようとした瞬間、愛可の体が起き上がる。

 そして、本日2度目のアニメだったら頭に電球が浮かんで光るやつ。


「ピコーン! トモクラ、いいこと思いつきました!」

「ど、どうした?」


 声をかけようと思って近づいていたので、いきなり顔が上がったことで驚いてしまった。目と鼻の先にいた愛可から少し距離を取りながら聞き返すと、離れた以上の距離を詰められ、先程よりも近い距離で愛可が言ってくる。

 愛可さん近いです照れちゃうから離れてくださいお願いします。


「今度、この街を案内して欲しいデス! 私、まだまだ知らないこといっぱいあるデス!」


 突然の発言に困惑する。何で急にそんな話に? と思っていたのだが、恐らく俺が近くに住んでいるらしいので案内しろ、ということなのだろう。これが引っ越せばいいデス! とか言われなかっただけありがたいと思うことにするか。

 

「それくらいならいいけど……週末でいいか?」

「Holidayデスね! 分かりマシた! 休日デート! デス!」

「……ん?」


 愛可の発言に、俺は声を詰まらせることしか出来なかった。

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