お昼ご飯
どうもシファニーです! 2週連続で体調不良、普通にきついですが必死に生きてます!
「Japanese 寿司デス!」
ふたつのお店を巡って終わると、ちょうど昼時だった。
お昼どうする? と聞くよりも早く、愛可が足を運んだのはお寿司屋さん。と言っても供給寿司店だったりはせず、高校生でもい比較的訪れやすいリーズナブルなチェーン店だった。
これで高級寿司店に連れていかれて奢られてしまったらただでさえボロボロだった俺の面子がさらに潰されてミンチにされてしまっていただろう。
今日はほとんど使い道のなかったお小遣いを握り締めてきたので、昼食代くらいなら払えるだろう。
十数分の待ち時間が過ぎ、俺と愛可は席に案内された。
家族と出来た時は狭いと思っていたテーブル席はふたりで使うと広く、向かい合っているとスペースがありすぎてむしろ居心地が悪かった。
午前中、確かに俺は愛可と街を歩いたが、正直あんないらしい案内は出来ていない。それに、ずっと隣で見ていただけで、一緒にいてあまり意味がなかった気がする。反省しつつも、正直どうしていいのか分からない部分が大きかった。
だが、今からは分からないながらも頑張ることにしよう。午前中は、ただただ一緒にいただけだった。こんなんじゃきっと、愛可に見放されてしまう。そうじゃない。今日ここで愛可に、少しでも俺を気に入ってもらう必要があるんだ。
与えられた時間は限られている。しっかりやれよ、俺。
「まずは何を食べるデス? マグロ、いくら、アジ……おすすめはあるデス?」
早速来た!
これはチャンスだ。ここで的確な返しをすることで好感度アップを狙え!
「そうだな。愛可は寿司は初めてか?」
「1回だけ家族で行ったことがあるデス」
「そうか。初めてなら代名詞とも言えるマグロがおススメだったけど……そうだな。サーモンなんかは慣れた味だと思うし、エビはアメリカだと珍しいだろうから試して欲しい。玉子も刺身ではないけど、やっぱる外せないよな。まあ、とりあえず気になるもの全部頼んでみてもいいんじゃないか? せっかくだし、色々食べてみたほうが楽しいと思うぞ」
「なるほどデス。なら、鮭、海老、玉子を頼むデス」
「それが良いな。俺も、とりあえず同じのにしよう」
言いながら、電子パネルを操作する。最近導入されたが、スマホに慣れ親しんでいる俺たちの世代なら特段困ることも無い。愛可にワサビを入れるかだけ確認し、ワサビ抜きをそれぞれ2皿ずつ注文。特段手間取ったりはせず、スマートに作業を終えた。
パネルから手を放し、一呼吸。とりあえず、格好いい注文を終えられ……。
「いや、別に格好良くは無いな」
「Hoh? 何か言ったデス?」
「あ、ああいや! 愛可は緑茶は飲むのかなって!」
「おお、聞いたことがあるデス! 手を洗うとか洗わないとかってやつデス!」
「洗っちゃだめだからね!?」
叫び、大きな声を出し過ぎたと慌てて口を塞ぐ。迷惑になってないかと見渡すが、特段気にしている人はいない様子。子どもの客も多いし、ある程度は許してもらえるかもしれない。と言っても、高校生が突然大声出すのは普通に問題な気もするが……。
そんなことは気にしない。ひとまず誤魔化せたことだし、緑茶をふたり分、火傷しないように気を付けながら汲む傍ら、俺は胸をなでおろした。
「楽しみデス! タイガは寿司、好きデス?」
「え? ああ、まあ人並み程度には。でも、たまにしか来ないから、よく分からないな。愛可は?」
「ワタシもまだよく分からないです。Japanese soul food寿司、ラーメン、照り焼きは一通り食べたデスが、deliciousなのは分かるのですが、I love! とはならなかったデス」
「そうだよなぁ。全部美味しいけど、たまに食べるくらいで十ぶ……え? なんでそのラインナップに照り焼きが入るんだ?」
「入らないデス?」
なんて、愛可は小首を傾げながら聞いてくる。
照り焼きも美味しいとは思うけど、寿司ラーメンと同列かと言われると、少なからず日本の代表って感じではないよな。
「日本と言えば、それこそ味噌汁とか、卵かけご飯とか、そっちの方が有名じゃないか?」
「もちろんどっちも大好きデスが、Amerivcanは照り焼きが好きな人多いデス。照り焼きバーガーとかデス」
「んーマクド」
なるほど確かに、知名度で言ったら某大手ハンバーガーショップが照り焼きバーガーを販売しているおかげで照り焼きは断トツなのかもしれない。てか、日本限定商品だと思ってた。
「なるほど、照り焼きはJapanese soul foodではなかったデスか」
「いや、そんなことも無いけど……」
小声で呟く愛可に突っ込みを入れながら、なんか、いつもの調子が戻ってきたような気がしていた。
何か大層なことをやったわけではないが、初めて出会った頃のような、身軽な会話が、自然体で出来ているように思う。
これも、愛可の力だなのだろうか。
それからしばらく続いた談笑は、本当に楽しいものだった。