復帰
どうもシファニーです! 最近投稿時間が遅くなってるような!? でもご安心を、こうして投稿してるので。
翌々日。
1日の休暇を経て回復した俺は、軽やかな心持で学校に向かっていた。
病み上がりで辛い、なんてこともほとんどなく、極めて健康な状態だ。
ここまで清々しいままでいられるのは、愛可のおかげなのだろうと思う。いやほんと、マジで。
そのまま教室に向かい、自席を確認。すると、すでに愛可の席の周りには人だかりが出来ていて……そこに、男子が紛れていた。
「え、愛可もあのバンド好きなのか?」
「Yes! I love J-pop!」
「俺も俺も!」
そんな風に愛可と楽しそうに会話するサッカー部所属、相生博人。クラスでも中心的人物で、みんなの人気者。包み隠さずに言うのなら、俺が苦手な、いや、嫌いなタイプだった。
何にだって一生懸命。それに実力が伴っている。それゆえに人気もある。
自己満足で頑張って来ただけの俺とは違う、言うなれば愛可と同類の、純粋な努力が出来る人間。
愛可で多少慣れたかと思ったが、俺の席に堂々と座り、演技っぽさを微塵も感じさせない爽やかフェイスで笑顔を浮かべるのを見ていると、近寄りがたさを感じてしまう。
なんかこう、俺がいてはいけない空間が生み出されているような気がする。
ちなみに他のメンバーはいつもの奈央、美鈴、飛竜の3人だ。
さて、しかしどうしたことだろう。自分の席に座りたいのは山々なのだが、声をかけるのがはばかられる。俺の席なんだけど……って言った後、は? だから何? てかお前誰? って言われる未来が浮かんで足がすくむ。
いや、たぶんそんなこと言わない。言わないんだけど、最悪の未来が頭をよぎり続ける。てかなんでだろう、想像しただけで怖すぎて泣きそう。
俺が自分の席の、黒板を前にして右後ろ当たりで固まっていると、愛可の正面に立っていた奈央がこちらを向き、自然と目が合った。
ども、と頭を下げると、奈央は愛可と博人の会話に割り込んだ。
「ねね、泰河来たからそこ退いたほうがいいよ」
「ん? ああ、悪い悪い、今退――」
「タイガ!」
俺の顔を見て、席を立とうとした博人を押しのけ、愛可がこちらに詰め寄った。
立ち上がり、ここまでたどり着くまでにかかったのはほんの一瞬。縮地でも習得しているのだろうか。
「元気になったデス!?」
「まあ、おかげさまで」
「Become cash!?」
「キャ、キャッシュ? ビカム……って、誰が現金だ、このキャッシュレスの時代に」
あれだろうか。これがバイリンガルジョークってやつか。
ビカムキャッシュ。直訳すると、現金になる、だ。
親父ギャグじゃねぇか。
「Oh! Nice突っ込みデス! タイガが元気になってるデス!」
「まあ、1日しっかり休んだからな。その、心配かけて悪かった」
「Don't worry about it! タイガが元気なら、それが1番、デス!」
「お、おう……ありがとな」
そうやってお礼を言えば、愛可はいつも通りの笑顔を浮かべる。
何か本当に、よかった。
あの時愛可と縁を切ることにならなくて。また、こうして愛可の笑顔を見ることが出来て。
もしかしたら猫弧にもお礼を言うべきかもしれない。こうしてい愛可との関係を保てたのも、猫弧がいてくれたおかげだろうし。
……いや、俺今大分恥ずかしいこと考えてるな。やっぱり忘れておくべきかもしれない。
そんな感じの思考にかかった時間、やく3秒。気を取り直した俺は博人が退いてくれたおかげで空いた席に座る。
すると必然的に先程まで愛可を囲っていたメンツに囲われるのだが……ここは鋼の意志で石像になろう。いないものとなるのだ。そうすればきっと、誰も俺のことなんて気にせずに雑談を楽しめるはず。
そんな前向きなのか後ろ向きなのかよく分からない、たぶん後ろ向きな考えをしていると、博人が喋り出した。
「なあ愛可、今週末どっか遊びに行かないか? 今度歓迎会はやるけどさ、個人的に色々見せたいものとかあるし」
おおーっと? こいつ、本当に俺をいない者として会話再開したな? あれか? 悪気はないってやつか? いじめてるつもりは無くてもいじめられてると感じたらいじめなんだぞ? ああ? 来月のいじめアンケートに書いてやろうか。
しかし、こうして実際に始まってしまった以上、俺は透明人間に徹するほかないだろう。
そう思って黙り込む支度を始めていると、同じく椅子に座り直した愛可が少し申し訳なさそうに言った。
「So sorry、ワタシ、今週末は予定あるデス」
「あれ、そうなのか? なにするんだ?」
へえ、てっきり遊び最優先なのかと。それとも家族とどこかに行くのだろうか。日本に来てからまだ日も浅いだろうし、行きたいところもたくさんあるだろうからなぁ。
あ、お土産買ってきたりするだろうか。期待する訳ではないが、愛可なら買ってきそう。そうなると本当に貰ってばかりになるよなぁ。何かお返しを考えたほうがいいだろうか。そうは言っても女子が好きな物とか分からないし……ここは不服ではあるが猫弧に聞いて――
「タイガとデートデス!」
――最近女子に人気のスイーツとか小物を教えてもらうか。
「ええ!?」
「ほ、ほんと!? マジ!?」
「激熱展開! どこ、どこ行くの!?」
「う、嘘だろ? おいおま、えっと、と、友倉? だっけ。それホントか?」
それともやっぱり消耗品? そっちの方が女子も受け取りやすいってどこかで聞いたことが
「え!? 俺とデート!?」