倒れたとしても
どうもシファニーです! そろそろ冬アニメの時期ですよねぇ。今期は何を見ましょうか。
頭が重い。頭痛がする。倦怠感に覆われていて、体中が汗でべたついている気がする。
それは、最悪の目覚めだった。
「うっ……ここは……」
こめかみのあたりが強く痛み、反動で目覚めたらしい俺。辺りを見渡せばカーテンで外界と遮られている。見覚えは無かったけど、保健室だとなんとなく察した。
そこで布団を被せられて寝ていて……。
何があったんだったか。教室で突然具合が悪くなったことは覚えている。それから愛可たちに声をかけられて、それで……。
「あ、起きた?」
不意に声が聞こえて来た。
ただ、愛可ではない。流暢な日本語だ。じゃあ奈央たちかと言われれば、それも違う。ずっと落ち着いた声をしている。
じゃあ誰だろうと顔を横に向けると、カーテンの隙間からどこか見覚えのあるような、大人の女性が顔を覗かせている。場所と状況から考えるに保険の先生、だろうか。こういう時、顔を覚えられないと面倒だよな。
「どう? 調子は大丈夫?」
「えっと……まだ、怠いです」
「そっか。熱測れる?」
「それくらいなら」
よかった、と言いながら体温計を手渡された。
受け取って脇に挟む。挟みながら、熱あるんだろうなぁ、と思う。全身が熱い。
なんでなんだろうと思いつつ、夜更かしをしたり、慣れない寄り道をしたりと負担になることはそこそこしていたのを思い出す。今年の春はやけに短かったし、季節の影響もあったかなぁ……。中学まではこんな風に体壊すことは無かったんだけど。
そんなことを考えながら体温を測り終わるまでの時間。先生に色々聞かれた。
「教室で倒れちゃったらしいけど、朝から具合悪かったの?」
「特に……ああいえ、ちょっと怠かったですね」
「なるほど。これで熱があったらご両親に連絡するけど、誰か迎えに来れそうな人いる?」
「どう、でしょう。共働きなので」
「歩いて帰す……わけにはいかないし。うーん、家は近いの?」
「まあそれなりに」
状況と、今後のための確認を一通り済ませれば体温計が音を鳴らす。
取り出して覗き込めば38度、バッチリ熱があった。
「これは駄目ね。帰ってゆっくり休んでもらいたいんだけど……まあ、一先ず連絡するわね」
「お願いします……あれ、そう言えば、今何時ですか?」
「え? えっと、11時くらいだけど」
「ああ、それなら母がいます。たぶん、迎えも来てもらえるかと」
「そうなの? それは良かった、すぐ連絡するわね」
「はい」
明日は午後から別の職場。だからお昼は家で食べてから行く、とか昨日言っていた気がする。猫弧と話していたのを盗み聞きしただけだが、聞き耳を立てておいてよかった。
先生が電話を取りに離れたのを見て、枕に頭を下ろす。
これは、本格的に体調不良だ。熱がある時点ではっきりしたが、こうしている内にもどんどん悪くなっている気がする。というか11時って、3時間くらい寝てたってことか?
確か、俺はここまでクラスの男子に肩を貸してもらって来た。愛可に付き添うと言われたが、遠慮したのもなんとなく覚えてる。
こんな状況になってまで断ったのは、偉かったと思う。正直意識もあやふやだったけど、自分の不調を理由に、なし崩し的に距離を縮めてしまったら、いよいよ惰性の関係性が始まってしまうから。
自己満足でしか生きてこなかった俺が、誰かと対等に関係を持つなんて望むだけで的外れなんだ。誰にも頼らず生きる、なんて大それはことを言うつもりはない。けど、誰かの隣に立つとか、そう言うのは、違うと思う。
だから……
俺は、ひとりのままのほうがいいんだ。