兄妹
どうもシファニーです! 今日は遅くなっちゃいましたが更新です!
「うわ、何してんの」
「うっさい……」
家の中、ソファの背もたれに寄り掛かっていると、帰宅直後の妹、猫弧が気持ち悪がるような顔で言って来た。
「こっちは自分の不甲斐なさにへこんでるんだからほっといてくれ」
「面倒くさ……いいから退いて、昨日録画したドラマ視るんだから」
「容赦ないなお前……」
中学3年生、バスケットに励むショートヘアガール。普段から制服とバスケのジャージ姿しか見てないから分からないが、最近体重が増えたと悩みを言っていた。
最近思春期がやって来たのか俺に対しての当たりがきつくなってきてるのだが、今日も相変わらず尖っていた。
「うじうじしてる兄貴とか雑に対応して当然でしょうが」
「ちょっと前までにいにとか呼んでくれて可愛かったのに」
「……死ねよ」
「酷くない? 俺へこんでるって言ったよな?」
「自業自得でしょうが」
顔を背け、俺と距離を開けてリモコンを握り、テレビを起動した猫弧。
「着替えぐらいしたらどうだよ」
「ブーメラン」
「そりゃそうだけど」
制服姿のままでテレビを見始めたのを注意すれば、割と妥当な返しをされた。
そうは言っても帰ってきてひと休憩しているだけの俺とがっつり居座るつもりだろう猫弧とでは違うわけで。
「てか兄貴ぃ」
「なんだ?」
「デートしてたってホント?」
「……」
猫弧の視線は、テレビに映し出されたドラマに向いている。
だから、俺が苦虫を噛み潰したような、歪んだ表情を浮かべていることには気付いていないことだろう。
しかしまさか、猫弧の耳にまで入っているとは……。地元の商店街だからありえないとは言わないが、伝達があまりに速すぎないか?
「……どこで聞いたんだ?」
正直今考えたくない話題ではあった。あったが、話題が広まった原因を知りたい気持ちもある。少し悩んだ末に尋ねれば、猫弧は興味無さそうに返してくる。
「うわ、じゃあホントなんだ。私の同級生にコロッケ屋の娘がいてね。お母さんから聞いたんだって」
「そのお母さんはなんで俺って認識出来たんだ……」
「そりゃ結構な頻度で通ってたから」
「それもそうか」
親ってのは怖い。こっちに面識がないと思っても一方的に知られていることが結構ある。突然、友倉さんちの子よね? とかって言われると何て返していいのか分からなくなるから止めて欲しい。
「あと、誤解がないように言っておくがデートじゃない」
「女の子と歩いてたのは否定しないんでしょ?」
「……デートかどうかは重要じゃないと?」
「そもそも兄貴が誰かと歩いてること自体成長じゃん。おめでた」
猫弧は、横目を向けながらそんなことを言ってくる。
確かに、ここ1年の俺なら誰かと一緒に街を歩くなんてことはしなかっただろう。ただ、それを成長と言われてしまうとなんか癪に障る。別に俺は誰かと歩けなかったわけではない。歩かなかっただけだ。
そんな言い訳を呟こうとする直言、猫弧が相変わらずドラマに視線を向けた状態で呟いた。
「兄貴、最近引き籠ってばっかだったから誰かに連れ出してもらえるならいいことかなって」
「……」
「それに相手は結構可愛かったらしいし? そのまま兄貴連れて家出てくれれば、私も気楽かなぁって」
後半は余計気味だが、納得できる部分もあった。
高校に入学直後、突然引き籠り始めた兄弟を持つ。それはこれから高校生になろうとしている猫弧にとっては不安の種だろう。それが今回女の子と外で歩いてるなんて話を聞いた。それは安心できるというものなのかもしれない。
ただ別に、俺はその相手、つまりは愛可とどうこうなるつもりはないのだが。