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女子高生

 どうもシファニーです! 毎日かつかつです! 何がって? 更新ペースです! とってもぎりぎり!

「お昼休みデス!」


 ということです。

 

 午前中にやるべきことは一通り終わった。朝のSHRで委員会等を決めてしまってあったおかげで1日でやらなければいけなかったはずのものが片付き、午後は暇となってしまった。

 俺としては去年同様図書委員をやるだけなので口を挟むことも無く、配布物を受け取って名前を書けばそれで終わり。その間に驚いたのは愛可の字の綺麗さだった。ちらっと見たのだが余裕で俺なんかよりうまい。ひとつ気になることがあるとすればめっちゃ書道の書体だっていうことだけ。


 それはそうとして午後の暇が約束された俺たちのクラスは昼休みとなり、それは愛可が待ちわびていた時間でもある。

 ただここで疑問なのは、愛可がまたしても俺の方を見てること。

 別に俺以外とご飯食べてもいいんだからな? 女友達の方が楽じゃないか?


 なんて直接言えるわけもない。


「そうだな。ところで――」

「これがトモクラの分デス!」

「あ、だよね。ありがと」


 昨日のが冗談なら購買に、と言いかけることも出来なかった。しかしまさか本当に作ってくれるとは。

 そこには昨日一緒に購入した弁当箱があり、愛可の白く細い手で持ち上げられていた。昨日の光景がフラッシュバック。ほれほれ、と軽く振りながら渡そうとしてくる弁当箱を、俺は居たたまれない空気を感じながら受け取る。


 背中が、痛い。

 別になぜとは言わない。ただ現状を振り返ると、実質転校してきた美少女からお弁当を貰っている地味高校男児はいごめんなさい犯罪してます許してください!

 あらぬ誤解が生まれないように言い訳したいのは山々だが、俺のクラス内コミュニティーは壊滅的。下手なことを言えば余計に悪評が広まりかねないのでここはあくまで自然体で振る舞うことにする。そうすればきっと、なんかよく分かんないけど奇跡的に付き合いだして急にそう言う話になったんだよな、となってくれるはず。いやそれはそれで不味いな。

 

 ……ま、まあ、みんな案外人のことなんて気にしないのが常で――


「え、お弁当作って来たの? 友倉に?」

「ええっ!? もしかしてふたり、もうお付き合いしてるとか!?」

「愛妻弁当」


 駄目でした。

 俺が許しても世間が許さないらしく、3人の女子生徒が声をかけて来た。その3人は流石の俺とは言えど顔を知る3人、いわゆるトップカースト女子たちだった。クラス内の発言権の半分を掌握しているんじゃないかというその権力に、カースト最下位の俺は話しかけることすらはばかれるほど。俺がコミュ障なだけという話は聞き流す。

 

「付き合う、デス? そうなんデス?」

「俺に聞くな」

「ははっ、面白いね! お邪魔していいならさ、一緒にお昼食べない? 聞きたいことたくさんあるんだけど!」


 と大声で言い、俺たちが答えるよりも早く近くの椅子を引いたのは音村奈央。バトミントン部に所属している活発形で、イメージ通りの短髪はそれでもくどさを抱かせない。なんか、同じ髪型な気がしても他の人とは違う輝きを持っている。

 というのも彼女は去年の新人戦で地方大会の3位まで上り詰めたペアのひとり。スポーツに力を入れている学校でもないのにそんな成績を収められるのは、彼女の運動神経の賜物で、その才能こそ彼女を輝かせる秘訣とも言える。


「私も私も! ねね、どっちが告ったの!?」


 と奈央に便乗して椅子を引いたのが同じくバトミントン部にして奈央のペア相手、藤崎美鈴。セミロングをポニーテールに結び、ぴょんぴょんと跳ねさせるはつらつさは愛可に似ていたが、イメージ的には愛可が犬で美鈴が兎だろうか。


「同伴便乗、私も、知りたい」


 少し独特な喋りをするのが村龍むらたつ飛竜ひりゅう。あだ名はひーちゃん。なぜそんな可愛らしいのかと言えば、飛竜と言う名前と外見があまりに不似合いだから。

 飛竜はとても小柄な女子だった。小柄過ぎてむしろ群衆の中で目立ちかねないくらい。目算130cmの背丈は肘置きにちょうどいいくらいで、みんなと同じ椅子に座れば足がちょっと足らない。そんな背丈と反比例したかのように髪は長く、それこそが彼女のアイデンティティと言える。

 背中を覆ったその長髪が竜の翼に見えなくもないが、それでもどちらかと言えば猫のような愛らしさを持っている。


「トモクラ、ワタシたち、Lovers?」

「そんなつもりはないけど……まあ、というわけです。このお弁当はその、色々あって」

「じゃあ昨日の放課後デートしてたってのは?」

「そうそれ! めっちゃ話題になってたよ!」

「四面楚歌、言い逃れは出来ない」

「……なるほどここまで広がってたか」


 ぼそっ、とこぼして今朝の話を思い出す。

 担任の櫟原が委員長に密告があり、それを聞いたと言っていた。多かれ少なかれ広がっていることは覚悟していたが、トップカースト連中にも知れ渡り、興味を引いていたとは。

 いやまあ、興味を持たれたのは俺というより愛可の方だとは思うが。このクラスでは珍しい外国人だし。


「Are you my boyfriend?」


 愛可、いい加減静かにしてくれ。そうじゃないってはっきり分かってるのはお前だけなんだよ。

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