親のレール
もう一度戻れるなら、高校でもっと色んな事をやりたかった。
「やばい、また寝ちゃった」
朝起きた真由美は焦った。
宿題と小テスト、授業の予習が終わってない
どうしよう、顔が青ざめていく。
「朝ご飯よ。早くしないとバスに遅れるよ」
幸江の大きな声がする。
殆ど無言で朝食をとり、バスに乗る。バスの中では英語の小テストの勉強をする。
真由美の通う高校は県では有名なスパルタ進学高だ。8時5分から1限が始まり、5時5分に8限目が終わる。
7時50分からは小テストが毎日ある。
1年の頃は頑張らなきゃという思いで必死に授業をうける。中学と違って予習をしなきゃついていけない。解っているが一日8時間も授業があると大変だ。友達と遊んだり、部活する余裕もなかった。
音楽や保健体育、美術等の授業が楽しくて仕方ない。
思いっきり歌ったり、走ったり、絵を描いたりすると心が落ち着く。家に帰るとテレビでプリンプリン物語を「火星人って誰かに似ている」
何て考えながら見ている。時間は刻々と過ぎていく。
「早く宿題やらなきゃ」
解っているが腰が重い。2階の部屋に行くとため息がもれる。ラジオをつけて好きな音楽を聞きながら数学のプリントを解いた。
「高校3年間は目標の為に頑張りなさい」
両親からは言われていた。解っているがたまには息抜きが必要だ。喫茶店でチョコパフェを食べたり、インベーダーゲームをしたりした。
告白はしなかったが好きな人も出来た。バスで出会った上級生だ。
「何てカッコいい人何だろう」
バスの中で会うたび胸が高鳴った。手紙は書いたが渡せずに終った。素敵な先輩は素敵な彼女らしき人と楽しげに話している光景を見て自分の心にピリオドを打った。
「受け身ではいけない。自主的に動きなさい」
「人に感化されてはいけない」
父からは色んな事を学んだ。
しかし、課題が多く、テストが多く、毎日がクタクタだった真由美の精神は壊れる手前だったのかもしれない。課題が終わらなくて苦しむ夢は何度もみた。
嫌いな国語の授業中に爆発した。先生の何げない言葉が引き金となって、机の物を両手で振り払って落としたのだ。自分でもビックリしたが、クラスメイトはもっとビックリしたようだ。休み時間に担任に呼び出された。
「大丈夫か?疲れているんだったら休むか」
将来なりたい職業になるには資格がいる。そしてその資格を取るためには大学で学ぶ必要がある。だから勉強しなくてはいけない。何度も自分に言い聞かせた。
家計が苦しい事を考えると国立を受ける事を勧められた。しかしその為には共通一次が必須で嫌いな国語、社会も勉強しなくてはいけない。色んな事を学ばせる受験制度が余裕のない高校生を生んでいる。学んだ事が無意味だとは思わない。しかし余裕があったら部活をやりたかった。
暗い高校生活で手に入れた大学合格。これからは親元から離れての生活。不安と喜びを噛み締めていた。




