牛肉カレー
食べる事は一番大切な事
「こっちの方が大きい」
「いや、こっちの方だよ」
トンカツがテーブルに並ぶと真奈美と浩一で必ず大きさのチェックが入る
「どれも同じよ」
と母は言うが二人の眼差しは真剣だ
隙あらば皿を入れ替える
成長期の二人は夕飯が肉の日にはエキサイトする。
すき焼きの時には必ずこう言われる
「肉だけじゃなくて野菜も食べなさい!」
そう言われても肉の量は決まっている。自分の事しか考えていない二人はなくなる前にと肉を口に入れる
誕生日やボーナスが出ると寿司屋に家族で出かける。
この日が楽しみで仕方ない
真由美と浩一は1人分では足りない。
父はシャリを多めにと注文時に必ずお願いして、握りとかっぱ巻きを頼んでくれる
「食べることは生きること、1番大切なのよ」
母はいつも言う。
決して裕福ではなかったが、食事が毎日楽しみだった。
エンゲル係数は裕福度に反比例するとならったが、そんな事はないんじゃないか、食にかけるお金は人それぞれで、かけられる額も所得によって変わってくる。
例えばカレーを豚肉でする人と牛肉でする人、月に一回外食する人と毎週する人、所得の高い人はそれなりに美味しい高価な食事をしているのではないか。
父母会でクラスメイトの母が牛肉のカレーを作ってくれた。初めて牛肉カレーを食べて美味しかったのを覚えている。
「家の子は牛肉じゃないと駄目なのよ」
と言った言葉と母のキョトンとした顔が浮かぶ
「お金持ちはいいなぁ」
と心の声がした。
父は普段から家族の繋がりを大切にする
朝食は父が食卓に座り、「頂きます」
と声を揃えてから始まる。
夕飯も仕事から帰って、1番に風呂に入り食卓に着くのを待って、家族が揃ってから始める。
お喋りなので笑いが絶えないし、自分の事を話すのに必死だ。小さい頃は寂しいと感じた事はなかった。
「好き嫌いしないで何でも食べなさい」
これもいつも言われた
戦争を経験している両親はその時に食べれなくて大変だった話をしてくれた。
兄弟が沢山で1つの卵を皆で食べた事。
並びは年の順、「1番末の子は食べれたのだろうか?」
病気になっても栄養がとれなくて亡くなった兄弟がいた事を聞くと戦争で亡くなった人、残された家族、辛かっただろうと胸が痛む。
「ご飯は残さず食べなさい」
いつも言われていたので食べ物の好き嫌いがないのは取り柄かもしれない。
ただ、納得のいかない事もあった。
私がサンダルを選んだ時の事だ。
ヒールの高いサンダルを買った時、
「ませた事をするんじゃない」と叱られた。
買ったサンダルは投げ捨てられた
「なぜヒールの高い靴を履いてはいけないのか?」
小学生の私にはわからなかった。
父への反抗心はこの時から始まったのかもしれない
だから学校で無視されていた事は話せかった。
「話していたらどうだったのだろう?」
自分への無視がそんなに長くは続かず、中学は他の場所へ引っ越しが決まってホッとした。
「新しい所で、新しい友達と一から始めよう」




