マラソン大会
無視っていつから始まったのだろう?
高学年になった真由美は最近朝起きると憂鬱な気持ちになる。
「休みたいな」
クラス委員だった彼女は、教室に入ると窓を開け新しい空気を入れる。
冬は「寒い」と男子が叫ぶ。
みんなに「おはよう」と声をかけて1日が始まる。
しかし最近クラスの様子がおかしい。声をかけても無視されるのだ。
「いったい何をしたのだろう。何か悪いことでもしたのだろうか?」
いくら考えても答えが出ない。自分の問題だと自覚していた真由美は両親に相談出来ずにいた。
「きっと数日の事だろう」
しかし、女子の無視は続いていった。仲良くしていた秀子も離れて行ったのだ。
「学校行きたくないな」
初めてそんな気持ちになった。
小声で話す会話が自分の悪口に思えて仕方ない。
秀子の家はお肉屋さんで、遊びに行くと鶏肉を揚げてくれる。これが美味しくてたまらない。肉屋の子になりたいと何度思ったことか
二人で明星や平凡の雑誌を広げ、秀樹が良いだとかひろみが可愛いとか芸能の話で盛り上がる。クラスの男子では誰がカッコいいなんて話も秘密で話していた。
しかし、ある日真由美が達也が好きな事がバレてしまった。女同士の約束なんてこんなものかとがっかりした。しかしそんな秀子に口をきいてもらえなくなったのは正直こたえた。
どのくらい時間が過ぎたのだろう。
秀子とまた友達付き合いが出来るようになるまで。
休み時間は誰とも話をせずに読書して過ごす毎日だった。
人を傷つける事にはさほど苦しみを感じない。集団であればもっと薄まる。そう思っているのは加害者だけで当事者はそうはいかない。苦しくて苦しくて、心の中で助けてと叫ぶ。しかし誰にも届かなくて孤独に陥る。
このとき誓った。
「私は決して人を無視しない。虐めない」
冬になるとマラソン大会がある。高学年は校庭から外に出る。勿論母は応援に来ている。
一生懸命走ると嫌なことも忘れる。
冷たい空気が心地良い。
頑張れの言葉に一層速くなる。
もっともっとと抜いていくうちに2番になっていた。さほど息も上がっていない。
「よし、今年こそ!」
校庭に帰ってきた真由美は最後の力を振り絞った。先頭の子を抜いて1番になった。
ラストスパートとはこれかと実感した。
走るって気持ちいい
「まだまだこれから」
真由美は自分に言い聞かせてゴールを切った。




