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世界をまたいだ恋~植物状態になった恋人も異世界に転生してました~  作者: 田鶴
番外編2 正体不明の男

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20.泥酔時の本音

 コンスタンティンは、ワインを自分のグラスに注ごうとした時、ローズマリーの視線に気付いた。


「ねえ、私もそのワイン、飲んでもいい? 実はまだ飲んだことなかったのよね」

「ええ、もちろん、元は若奥様が持っていらしたものですから」


 コンスタンティンは食器棚からグラスを取ってワインを注ぎ、ローズマリーの前に置いた。


「思ったよりもフルーティね。飲みやすいわ」


 ローズマリーは、そう言ってグビグビ飲んだ。そのペースは落ちず、あっという間に1本目のワインが空になった。彼女は、飲みながら普段よりずっと饒舌にコンスタンティンに色々話し、2本目にも手をかけた。


「あっ、若奥様、それはゲハルトの分では?」

「ゲハ()()トには他のワインあげるからいいわよ」

「若奥様、飲みすぎでは……?」

「そんなことぜん()()んないわよ!」


 コンスタンティンは瓶を取り上げようとしたが、ローズマリーは素早く自分のグラスにワインをドボドボと注いでしまった。ぐびっとワインを一口飲んで、ローズマリーは座った目で語りだした。


「ねえ、聞いてく()()る? 私ね、クレメンスのこと、愛していちゃのよ。だけど、彼がい()()()()って1年以上経って、段々彼の顔も声も思い出せなく()()っちゃって……私って薄情よね?」

「そんなこと、ないですよ。いなくなった方をいつまでも覚えてあげているのもいいとは思いますけど、ある程度は忘れて前に進まなきゃやっていけないですよ」

「本当に?」

「ええ」

「……俺にもそんな時が来るんでしょうか」

()()にか言った?」

「いえ」

「それよりね、クレメンスのことより、ほ()()の人のほうが気になってきちゃって……私ってひどいおん()()かしら? そ()()とも浮気も()()?」

「そんなことないですよ。いなくなった人より身近にいる人のほうが気になってくるのは当然です。ゲハルトは若奥様のことを慕っているでしょうから、若奥様の気持ちを聞いたら嬉しがると思いますよ」

「ち()()う! ゲハルトじゃない! 貴方なの!」

「え、俺?!」

「私じゃ駄目? そんなに魅力ない?」

「い、いえ、そんなわけでは……」

「それじゃ、忘れられ()()ひとがい()()のね?」

「こ、これ以上は勘弁して下さい……」

「私、振られちゃったの?」


 ローズマリーがおんおん泣き出したので、コンスタンティンは困り果てた。『そんなことはない』と言うのは簡単だっただろうが、嘘はつきたくなかった。彼女は感じの良い女性ではあるが、マリオンに対するような胸を焦がすような想いを彼女に対して持ってはいない。コンスタンティンがオロオロしてどうしようかと迷っている間に、ローズマリーは泣き疲れたようで食卓に突っ伏して眠り込んでしまった。


「若奥様?」


 コンスタンティンが肩を揺らしてもローズマリーが起きる様子はなかった。彼はため息をつくと、ローズマリーの側にかがみ、膝裏と背中を持って彼女を持ち上げた。痛めている身体で持ち上げるのは、軽い彼女でも結構な負担だったが、こんな所で寝かせるわけにはいかなかった。


 やっとの思いで自分の部屋の寝台にローズマリーを寝かせると、コンスタンティンは食堂に戻り、グラスを洗ってから食卓に突っ伏して目をつぶった。


 翌朝、具合の悪そうなローズマリーが食堂にやってきて決まり悪そうにコンスタンティンに謝った。


「おはよう、コンスタンティン……頭が痛いわ……貴方と飲んでいたところまでは覚えているんだけど……貴方が私を寝台に寝かせてくれたの?」

「ええ」

「あら、嫌、本当に?! ごめんなさい!」


 コンスタンティンの顔には腕に押し付けられた痕が赤く残っており、髪の毛はボサボサだった。


「え、もしかしてここで座ったまま寝てたの? 大丈夫?」

「そのぐらい大丈夫ですよ。騎士だった時は、野営で仮眠したことだってしょっちゅうあったんですから」

「そう? それならいいんだけど……ねぇ、私、昨日、何か変なこと言ってなかった?」

「いえ、特には……」


 コンスタンティンは、生来、嘘が上手くない人間なので、よく見ればそれが嘘だと分かっただろう。でもその時ちょうど、ゲハルトがパンツ一丁で食堂に入って来たので、ローズマリーの目はゲハルトの恰好に釘付けになってしまった。


「キャー、ゲハルト、貴方、何なの、その恰好!」

「え、若奥様?! いついらしていたんですか?!」


 彼はローズマリーがいるとは思っておらず仰天した。すぐに両手を股間の前にかざしてパンツを隠そうとしたが、全然隠れていないし、上半身は裸のままで隠しようがない。


「あ、ええ、マイケ達がいないから、貴方達の様子が気になってね。それより貴方の格好、どうにかして!」

「あ、すみません! すぐに着替えてきます!」


 ゲハルトは顔を赤くしてすぐに食堂を出て行った。だが二日酔いながらも、ゲハルトの目は、食卓の上のワインの空瓶や、ローズマリーの昨日と同じドレス、乱れた髪型をしっかりとらえていた。

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