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「お母さんから見て、悠太と麗奈ちゃんはどう?」


 代わりに菜月が出したのは、2人に関しての話題だった。

「認めないわ」

 短い返答で、2人の関係を否定した母を凝視する。


「だって私の悠太だもん!蓮にも涼夏にも麗奈ちゃんにも沙織ちゃんにもあげたくないわ!勿論菜月……貴方もよ?」


「お母さんは自分の気持ちに素直だねぇ」

 ただの独占欲だったことに、菜月は呆れたと、小さくため息をつく。

 菜月はとっくに麗奈を認めている。


 自分に何かあった時、悠太をお願いすると決めているから。

 それが涼夏であっても構わないのだが、2人のうちのどちらかでも悠太の傍に居てくれたなら自分が居なくなっても悠太が自ら命を絶つことも無い。


 なので悠太が家に迎え入れたいと言ってきた時も反対しなかった。


 本当は、弟を独占したい気持ちを押し殺して麗奈を家族として迎え入れたのだ。


 だからこそ母の素直なところは羨ましく思う。


「そうは言っても選ぶのは悠太だから。あの子は葉月が好きだったから、きっと麗奈ちゃんを選ぶのでしょうね〜」


「私は涼夏にも頑張ってほしいよ。あの子もずっと悠太のこと好きでいてくれたんだもん」


「そうね〜。大穴で蓮って選択肢もあるわよ?葉月と貴方の次に懐いてたでしょ」


 それは無い。口にしようとした時に思い出したのは、酔った蓮が悠太を誘惑していた時のこと。

 菜月には思い当たる節があり、否定出来ずに口篭る。


「流石におばさんに手を出すような子に育てた覚えはないよ」


「お母さんも同い年なんだけど、ぶち殺すわよ?」


 ヘイトを買うことで話を逸らす。これ以上悠太の恋愛事情を掘り下げることは、何か開けてはいけない扉を開けるような気がした。


 悠太はモテるから。それも年上の女性に。

 上は蓮から、友達の沙織、神田美代子。彼の同級生でも思い当たる顔が3人ほど、確か葉月ちゃんに強い憧れを持ってた道場の琥珀ちゃんも悠太のことが好き。

 忘れちゃいけないのが、幼なじみの雪人と、千秋。


 我が弟ながらジャンルが色々違う人々にモテモテだね。


「一つ。悠太のことを好きなのは麗奈ちゃんだけじゃないからね」


 年増と言われて怒る母の顔を見て、告げた。

 ひとえに母が悠太を落としたいというなら強力なライバルが沢山いると菜月は伝えたかった。


 ――うん。1人だったあの子がこんなにも沢山の人に囲まれるようになって嬉しいな。


 菜月は朗らかに笑った。


「ねえ!お母さん怒ってるのに、なんで笑ってるのかなぁ?」


 母のこめかみには青筋がたっている。


 ――ヤバい。元ヤンを怒らせた。


 席を立ち、逃げようとする菜月。だが方を掴まれて止められた。


 このお説教は長くなりそうだね。菜月は覚悟を決めて振り向くのだった。

 

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