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悠太は、悠太の体をチラチラと見ては、自身の体と見比べている灯を、春日家のリビングへと通して、ソファーに座らせた。


 リビングに控えていた菜月と沙織には、作戦は失敗だ。とアイコンタクトを送った。

 2人はあちゃーと額に手を当てたのを見て、流石に急ごしらえの作戦では、母を騙すことは出来ない。そもそも騙せるとは思っていなかった悠太は口角をくいと持ち上げた。


 ――大丈夫。ここは私が何とかする。

 意気込んで、自分は母の隣に座って、麗奈を隣に呼んだ。


「凄いよね。どこからどこまでお母さんそっくりなんだよ」


「そうね。私の若い頃にそっくりだわ」


「騙そうとしてごめんね。私は別に隠すつもりはなかったんだけど」


 母の視線が菜月に向き、姉の肩がぴくんとはねた。

「違うよ。私のミスだからお姉ちゃんは関係ないよ」


「関係ないことはない。お母さんは菜月に悠太のことをお願いしてあったの」


「じゃあお姉ちゃんを怒るの?私が勝手に頭痛薬と間違えて薬を飲んだせいで、この体になったのに?その薬も家にあったものじゃないのに?」


「うぐっ」


 矢継ぎ早に事情を説明すると、灯は分かりやすく狼狽えた。悠太は母の隙を見逃さない。


「そもそも16歳を過ぎた息子の失敗を姉の所為にするのはおかしいと思う。私を叱るならいいけど、お姉ちゃんを怒らないで」


 母が口篭ったのをいい事に一気に畳み掛けた。

 言い切った。母が変わってなければ、これ以上この話を掘り下げるようなことはしない。悠太は確信していた。


「最初から怒ってないわよ。説明が欲しかっただけよ」


 灯は朗らかな笑みを浮かべた。

 その割りには菜月に叱責の目を向けられていて、彼女もおずおずと成り行きを心配していたのだが。


「んふ。見た目でバレた?」


 悠太は悪びれずに聞いた。


「バレバレよ。お母さんにはね。何年あなた達の親をやってきたと思ってるの?」


「じゃああのまま学校に行ってもバレないと思う?」


「涼夏ちゃん以外にはバレないんじゃない?シルエットも少しなら制服で誤魔化せると思うわね」


「よし。じゃあ苦しいのを我慢すれば学校行っても平気だね」


「誤魔化せるとは思うけど、そもそもなんで女の子になっちゃったのよ。頭痛薬がどうとかって言ってたけど」


「沙織さんの家で頭痛に見舞われて、謎の媚薬を間違えて摂取したらこうなったの」


「お母様、山本沙織と申します。ご子息を女体化させてしまって責任は私にあります。申し訳ございません」


 悠太が簡単な説明を終えると、沙織が1歩出てきて頭を下げた。


 ふざけた謝罪を真面目にしている沙織を見て、悠太はふっと笑った。


「沙織さんは悪くないって昨日言ったじゃん。自己責任だよー。ね、お母さん」


「ええ、そんなものが実在することにも驚きだけど、高かったんじゃない?弁償させてください」


「私の不注意ですからお気になさらず」


「んふ。じゃあこの話は終わり!私がしたいのは、お母さんにごめんなさいだから」

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