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「ああ、そういう事ねー!口を閉じて笑う癖の事かと思っちゃった」


『灯も菜月も写真で見た葉月も悠太も顔そっくり。みんな可愛い。本当にお母さん?姉妹じゃなくて?』


「やぁねぇ!こう見えても41歳なのよ?」


『蓮も灯も歳を取らない』


「んふ。蓮も昔から変わらないわね」


『秘訣を教えて欲しい。私も蓮と灯みたいに若い見た目のままでいたい』


 麗奈に煽てられた灯は気を良くして、秘訣を考えてみたが、何も思い浮かばなかった。

 

 アンチエイジング的なものをやってる訳でもない。エステに通っている訳でもない。ただただ専業主婦として、日々家事に勤しむのみ。たまに旦那の立食パーティに社長夫人として、顔を出すが、別に関係ない。


「恋。かしらね」


『恋。大和に?』


「ううん。悠太に」


『ううん。大和に?』


「いいえ、悠太よ」


『いいえ、大和だよ』


「悠太」

『大和』


 灯は気づく。目の前の少女は、息子に恋をしているのだと。

 

 だから互いの思想を押し付け合った。将来の義母と義娘(仮)。先程まで仲睦まじく絆を育んでいた。だが残念な事に蓋を開けてみれば恋敵だったようだ。


「もしかしてだけど、悠太の事が好きなの?」


 ギロリと眼光鋭く麗奈を睨む。暴走族時代に培ったガンつけだ。

 並の人間ならこの時点で、怯んだ。けれども、目の前にいる少女は臆す事無く、当然と言わんばかりにこくこくと頷いた。


「……す、き」


 それから掠れるような声で好きと呟いて見せた。


「私の睨みにビビらないなんてやるじゃない」


『灯こそ、旦那がいるのに旦那以外に恋してるってどうなの?』


「大和さんは私と悠太の仲を引き裂いたのだから、嫌いよ。愛してるけど」


『愛してるなら大和だけを好きでいればいい。悠太はお姉さんのだから』


「悠太は私のよ?息子は元来母親が好きって相場で決まってるんだから」


 両者睨み合う。


「いいねぇ。昔の血が騒ぐわ。麗奈ちゃん、あなた戦えるの?」


『お姉さんを叩いたら、悠太が灯を許さない』


「なにその他力本願!しかも私の弱点を的確についてきた!」


『昨日。悠太に告白された』


「嘘よ!悠太は葉月一筋だったもの!ぽっと出の麗奈ちゃんに心を奪われるはずがないわ!」


『残念!どうやらお姉さんはあかりの子供と遺伝子的に相性が良いらしい!』


「なにぃ!?」


『その証拠に灯は甘える私を直ぐに娘だと言ってくれた。菜月も、妹にしてくれた。悠太は私のことを好きだと言ってくれた!!』


「ぐっ、確かに、麗奈ちゃんが可愛く見えて仕方ないのは事実……だけど悠太との交際を認める認めないは別の話よ」


『お姉さんと悠太は付き合ってない』


「悠太から告白してもらって付き合ってないの!?なんて贅沢!もしかして……セ○レ!?そんなの認めないわ!」


『そんな不純な関係じゃない。諸事情で付き合って無いだけ。でも、それが終わったら付き合う。これは事実。灯がどれだけ騒いでも変わらない』

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