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「まさかですけど、戻る方法がない。なんてこと、無いですよね?」


「……お、お湯をかけたら直ったりしませんかね〜?」


「らんま2分の1じゃないんですから。そんな馬鹿げた話しは無いですよ。ほら沙織さん。教えてください」


「……分からないです」


 分からない。言葉の意味が悠太には、理解出来なかった。

 山本沙織が分からないなんて言ったことは、1度もなかったのだから。


「んふ、あは、あはははは!……あはははは!」


「えへ、ふふふ」


「がはは!はははは!」

 悠太は笑う。沙織の言った言葉の意味を理解し、万策尽きたと、笑うしかなくなって。

 沙織も笑う。悠太が笑っているから、笑うしかないのだ。


 大吾も笑う。娘がしでかした不始末も気にせず、とりあえずみんなが笑っているから。


 あは、あはは!がはは!ふふふ!

 三者三様、笑い声が和室にこだまする。楽しくはなさそうに。


 この中で、唯一笑っていない麗奈ですら、肩透かしを食らったまま、和室の照明をただただ見つめている。



「あはは……はぁ。なんか解決策はないの?」


 ひとりきり笑いあった後、悠太の口からため息が漏れた。


「えぇっとですね……過去にしようして女性になった方が1人だけいるんですけど」


「おお!その人は今どうしてるんですか!?」


「服用したその日に事故に遭ってしまって……この世には居ません」


「じゃあ実質私が1人目じゃんかー!なんでそんなもん麗奈に渡したんですか!」


 悠太がぷりぷり怒る。


「……えっとー」


 麗奈のプライバシーに関わるため、沙織は口をつぐみ、麗奈の方をチラチラと見ながら言い淀んだ。


「麗奈に媚薬なんて渡したら、馬鹿なんだから私に使うに決まってるじゃないですか!そんなことも分からないんですか!?」


 悠太の言った馬鹿と言う言葉麗奈の心にささった。

 

「女の子だって獣のように性に狂いたくなる日だってあるんですよ!だから麗奈さんも……そうなのかと思いまして」


「麗奈は性癖で性欲を満たしてるから、沙織さんと違って1人でえっちなんかしません!ね?麗奈」


 しない。とは言いきれない。けれども悠太の言う通り、性癖で賄っているため余程昂った時以外はしないのが答えだった。

だけども、

 

『うん。しないよ』

 

 彼が手放しで自分の事を信じてくれているのだ。心を痛めながらもそう答えるしかない。

 


「ほら!うちの子もしないって言ってるじゃないですか!」


「嘘に決まってますー!」


「無表情で言ってることも動揺ひとつしてないのに嘘ついてるわけないです!うちの子は嘘なんてつきません!」


「彼女は元々無表情ですし文章にわざわざ動揺を載せるわけないですー!」


「私はずっと麗奈を見てきたんだから、この子が嘘をつかないって信じてます!」

 

「麗奈さんほど性欲強そうな人が1人えっちしないなんて有り得ませんー!自分がしないからって麗奈さんに夢見すぎじゃないですか?」

 


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