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「悠太は見込みのある男だ!小さい体躯でうちに乗り込んできて度胸もある!」


 ――それは実の母親に話す事じゃないでしょ。このおっさん、母ちゃんに会ったら舞い上がってペラペラ話しちゃいそうだね。


 褒められるのは悪いことでは無いけども、母と実際に会うことがあるかも、と思うとため息が出そうになった。


「ど、どうした!?何か気の触ることを言ったか!?」


 悠太の表情が憂いげのあるものに見えた山本大吾は彼女を心配して、身を乗り出した。


「ううん。あの子昔からやんちゃだからね。心配してるのー」


 母は過保護で、彼の元をベッタリくっついて離れてくれなかった。

 姉と同じくらい、悠太に歪んだ愛を向けてくれていた。

 姉が亡くなり悠太が反抗期を迎えた時には、母が差し出してくれた手を振り払って、外へと飛び出した。


 家に近寄らなくなり、夜遊びを繰り返す内に、母とも疎遠になった。

 そんな母を自分の中に投影して話していると胸が張り裂ける思いになった。


 ――ごめんね。母ちゃん。大好き。会いたい。


 言えば、直ぐに会いに来てくれるだろう。だけど、合わす顔が無かった。


『お姉ちゃんが居なくなって……悠太まで居なくなったら……お母さん』


『うるせぇ!ほっといてくれよ!』


 あの日振りほどいた手の温もりが、忘れられない。会おうと思えば会えるのに、なんて言って謝ったら良いのだろうか。


 父から謝罪を受けた。放っておいて済まなかったと。

 だが自分はどうだ。母に謝ってないじゃないか。父よりも言葉にした分自分が犯した罪の方が大きいのでは無いか。


 考えていると、彼の瞳は湿気を帯び始めた。


「灯さん……そこまで悠太の事を心配していたのか。大丈夫!あいつは俺の見込んだ漢だ!少しばかり危なっかしい所もあるが、あいつには沢山の仲間がいる!少し羨ましくなるくらいにはな!がはは!」


 大吾は娘や若頭から聞いた話を知っているかのように話した。

 だけど、話しを聞けば聞くほど、泥臭くも誰かの為にと、懸命に戦う彼の姿は、大吾の中で大きい物に聞こえていた。

 


「……大吾くんは沙織ちゃんに、差し伸べた手を振りほどかれたことある?」


「あるぞ!むしろ日常茶飯事だ!撃たれそうになった事もある。だけど、それがうちの娘だ」


「そう」


「あいつと会ってないのか」


「うん。中々会いづらくてね」


「がはは!会えるうちに会っておいた方がいいと思うぞ。灯さんは見た目も若いままだが、歳ってのはどうしても取っていく。遅くなっても知らんぞ?」


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