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口の中に液体を流し込まれ、悠太が目を覚ました。大きな目を見開く。
咳き込むことも許されず、苦しいままに水ごと嚥下した。
喉が上下したことを確認して、麗奈はそっと口から手を離した。
「れいなっ!ごほっ、なっすんだ!ごほっ、ごほっ」
彼は喉をおさえた。頭の中はパニック。状況を理解出来ず、恐らく何かしたであろう同居人を睨みつけた。
『喉が乾いてそうだったから、お口開けて寝てたし(;´・ω・)』
ここまで来れば、どれだけ嘘を重ねようと、彼女には関係の無い話だ。
彼が納得しようと、しまいと、もう後戻りはできない。
「あー、確かに……でも少し体が熱いような、風邪でも引いたか?」
元々ハスキーボイスの声が上擦って聞こえる。
「でも寝てる人間に無理やり水を飲ませたらダメだぞ?器官に入ったらどうするんだ」
麗奈は服の胸元をキュッと握った。
嘘を信じた上で諭してくれる悠太の優しさに、欠片は残っていた良心が傷んだ。
『ごめんね?……でも熱があるなら大変だね:(;゛゜'ω゜'):ちょっとおでこ貸して』
悠太の額に自分の額を当てた。
熱を測るふりをして少年の顔色を伺う。
頬は既にほんのり桜色に染まっており、いつもはキリッとしていた目は垂れ、水色の瞳は湿気を帯びていた。
柔らかそうな桃色の唇からは、艶の入った吐息が漏れている。
「麗奈……どうだ?」
もう、触ってもいいかな。
自らの様態を確認してくる悠太に、性欲が我慢の限界を迎えていた。
『熱がある。汗もかいてるみたいだから早く体を拭こう、脱がすよ』
優しくて冷静沈着なイメージを悠太に持たれていて、絶大な信頼を得ている。
それでも彼は堂々と裸を晒すような真似はしない。
寝起きと熱のダブルコンボでボーッとした頭では、正常な判断なんて出来るわけもない。
意識が混濁する中で悠太は両手を上げた。
麗奈の魔の手が彼に迫る。
「ふー、ふー」
麗奈は理性の爆発を咬み殺す。夕日みたいな目も血走っている。
熱に魘されている彼は、優しい姉を重ねていた。もう逃げ場はない。
麗奈と悠太を隔たる壁はTシャツが一枚。これを剥ぎ取れば悠太はめちゃくちゃにされるだろう。
麗奈の手が悠太の服に触れた瞬間。
悠太が突然上げていた両手で胸を押さえた。突拍子も無い悠太の反応。
麗奈は思惑がバレたのかと思って心臓をドキッとさせた。
どうやら彼の様子がおかしい。
「はぁ……はぁ……うぅっ……れい……な……胸が痛い……」
悠太が苦悶の表情を浮かべる。嗚咽を漏らし、胸の痛みを訴え始めた。
媚薬にそんな効果があるとは聞いていない。そもそも副作用が無いものを用意してもらったはず。
麗奈は記憶から、沙織の発言をさらったが、思い当たる節はない。
だからこそ、胸を押えて苦しんでいる理由が、彼女には分からなかった。
もしかしたら本当に体のどこかに不調があるのかもしれない。悠太の背中に手を当て、症状が落ち着くように摩る。
「……ゅーた」
声を絞りだし、蚊の鳴くような掠れた声で、愛しい少年の名前を呼ぶ。
「……っ!!!がぁぁあ!!!」
悠太は更に胸の痛みが強まった様子で目を見開くと、唸り声を上げた。
しばらくすると、落ち着きを取り戻して、意識を手放した。
リビングを静寂が満たしていく。
麗奈は悠太の胸に耳を当てた。心音は安定している。何故こうなったか理由は分からないけども、麗奈は別の事に気がついた。
(少し膨らみがあるような……)
悠太の胸に触れる。指が沈み込む、豊かな膨らみがあった。
麗奈の頭の中は疑問符でいっぱいだ。
ズボンの中も確認してみることにした。
右手で彼のズボンと下着を少し浮かした。恐る恐る左手を差し入れる。




