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37頁


だから自分も、触るしかない。そう思った瞬間の事だ。それが良いか悪いか判断する前に、麗奈は背中から手を回して悠太のお山に触れた。


「ひゃっ!何するの!!」


 触れるだけでは飽き足らず、揉みしだいた。

 そうなると、悠太も反撃せざるを得なくなり、なんとか身を捩って逃げ出そうとするが一心不乱に登山を続ける麗奈の魔の手からは逃れられない。

 

 ――百合って良いっすね。


 1番得をしたのは、木村では無い。胸に触れられた悠太は勿論麗奈でも無い。そう、この男だ。


 ――あぁ、山本組で良かった。こんなものが間近で見れるんすから。


 姓を羽鳥。名前は無い。山本組の1番下っ端で、半年ほど前に入門した新顔だ。

 沙織が家に帰り、台頭してきたとはいえ、まだまだ影響力のデカい大吾とは違い。だが彼は数少ない沙織派の1人で、沙織派には他に、ロリコンの伏見。女性に免疫が無く、悠太の胸に触れただけで気絶してしまった木村が居る。


 4人だからと言って組内部で力が弱い訳では無い。

 沙織は勿論のこと、伏見だって若頭だ。

 羽鳥の言う通り木村は、鬼の木村として恐れられている。


「麗奈の姉御!悠太の兄貴が外でしちゃイケナイ顔してますって!」


 羽鳥は麗奈の暴走を止めようと動き出した。

 この男は、沙織派で唯一理性的な男なのだ。


 麗奈が手を離すと、悠太はその場に崩れ落ちた。

 艷っぽい息を漏らしつつ、俯いている。


『やりすぎたヽ(;´ω`)ノ』


 最初からやり過ぎているのは露知らず、麗奈は羽鳥にスマホを見せた。


「取り敢えず俺は兄貴を屋敷に連れてくので、姉御は悠太の兄貴が落ち着いたら中に入って来てください。いいっすか?暴走しちゃダメっすよ?」


『悠太が胸を触らせたから:( ;´꒳`;)』


「兄貴の処遇はお嬢にチクって置くので許してやってください」


『分かった。沙織にキツいお仕置お願いしておいてね( ᵒ̴̶̷̥́ ᯅᵒ̴̶̷̣̥̀ )』


「ええ、獄門打首晒し首に次ぐキツいお仕置をお願いしておきます」


 そのくらい、この組では悠太の扱いが神聖なのである。

 沙織が同人小説を作り派閥の組員に読ませて、本物もちょくちょく現れる為、会えるアイドル以上に会えるとの事で人気を博している。


 羽鳥が木村の死刑宣言をして、屋敷に下がっていき、息の上がった悠太と2人残された麗奈は、謝罪文を考えていた。


 文字を入力しては消してを繰り返している。


 色々頭を振り絞って考えてみても、彼の忌避する犯罪者のような言い訳しか頭に浮かばず、彼が納得出来る文章が思いつかない。


 彼がようやく頭を上げたタイミングで、麗奈は勢いよく頭を下げた。

 ごちん!と鈍い音がなり、次にドサと人の倒れる音が鳴った。

 麗奈が悠太を頭突きでKOしたのだ。意図的では無い事故なのだけれど、悠太は地面に倒れて動かなくなった。


 麗奈は痛む頭を押さえながら思った。


 ――――――このままこの事も忘れてほしい。

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