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そんなことはない。と麗奈は首を横に振った。

 彼の身長と体重は元々低い。胸が着いたとしても精々40数キログラムだろう。

 麗奈が妹を背負って歩いていたのは妹が亡くなった10歳の頃だ。

 11歳だった妹の身長は、既に彼と変わらないくらいだった。


 だから彼女も、彼の胸を背中で感じながら、彼と同じく懐かしさを覚えていた。

 当然彼女の妹の胸は、彼ほど大きくは無かったが。


「そっかぁ。おんぶしてもらうのって安心するよねえ」


 間延びした声を出す彼の表情は、声と同じくふにゃふにゃになっている。

 どうやら眠たくなっているようだ。


「そーそーいつの間にか寝ちゃったりしてたんだよねぇ」


 そう言う彼の頭はうつらうつらと揺れ始めていた。


「れいなぁ、私の胸はどぉ?」


 

 そんな彼女が考えを読まれて、あまつさえ御褒美を与えてもらっている。

 その状況を理解して足が止まった。いつも彼の考えを読むのは自分だったからだ。


 彼女の額に一筋の汗が垂れた。

 冷や汗か、はたまた暑さのせいか。背負われている彼にはどちらにせよ見えないのだが、麗奈は片手を彼から離して慌てて拭った。


「んふ。慌ててる」


 彼は彼女の肩に顎を乗せて言った。


「落とさないでね」


 麗奈にそう言って彼は目を閉じた。


 

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