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スマホにいち早く文字を打ち込んでいく。1文字1文字のタップ音が唯に聞こえるほど力強い。


『私は唯に比べたら胸が無いから私の事は心配しなくていい。更にサラシを巻けば0になる。今の悠太の前に唯がでたら大変だよ。それこそ揉みしだかれる(//∇//)』


ここでやっと彼女特有の顔文字が文章に出現したのはきっと、麗奈が自らの勝ちを確信したからだろう。


胸が無いと自分から主張するなどと、プライドを投げ打ったのだ、唯の心が動かない筈はない。と麗奈は心の中で笑った。


「そこまで!?」

『悠太が性欲MAXになったら手錠なんて簡単に引きちぎるよ。私は唯がこんなところで初めてを散らして悲しむところは見たくない(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』


「も、もし、悠太くんがそこまで性欲で苦しんでるならこの胸くらい……し、ししし処女だって」

『不純異性交友はいけない。帰って』


どの口が言うとはまさにこの事だ。


「そ、そうね。悪いのだけど、今日は帰らせていただこうかしら。それでは麗奈さんまた明日」

挨拶をして背を向けそそくさと去っていく唯の後ろ姿を見送り、麗奈は笑った、表情の変わらない顔で、声の出ない口を薄く開き、吐息だけを漏らして笑った。


唯や沙織、親友の片山琥珀を出し抜いて、意中の男の娘を手篭めにするのは私だ。今度こそ、知り合いに合うことなく帰る、そう心に誓って麗奈は帰り道を歩き出した。


――――――――――――――

春日悠太とその姉、菜月が住む家は2人が両親と縁を切った時に、手切れ金代わりとして貰ったものだ。

両親は資産家で、庭も広く家の中も姉弟2人で暮らすには広すぎるほどである。


姉弟には今は亡き姉、春日葉月が居た。一家の長女、葉月も麗奈の妹である秋山真姫と同じ事件で命を落とした。

才色兼備で弱点の存在しない、天才肌の姉を2人は慕っていて、特に弟悠太はそんな姉のことを溺愛していた。


なので姉弟にとって姉と暮らしたこの家は思い出の詰まった場所だった。

麗奈も今や家族の一員としてこの家に住まわせてもらっている。


その家の玄関先まで麗奈は帰ってきた。家には悠太がいるはずだが、用心の為鍵が閉まっているようだ。

ポシェットの中から鍵を取り出し、玄関扉の鍵を開けると家の中へと入っていく。


玄関をくぐると玄関から左手側にあるリビングからテレビの音声が聞こえてきた。

菜月は今日のこの時間は2人を養う為仕事をしているので、悠太はリビングに居ることを麗奈は確信した。


もしかしたら寝ているかも知れない。そんな淡い期待をよせ、麗奈は靴を脱ぎ捨て、揃えることもせず、はやる気持ちを抑えることもなくドアを開けてリビングに足を踏み入れた。


麗奈がリビングのソファーに目を向けると、金髪の少年がソファーで横になって寝息を立てている。

悠太にとって不幸。でも麗奈にとっては僥倖だった。


まずは水を用意しなくては、麗奈はキッチンに向かうと、キッチンの背面にある戸棚からコップを取り出すと1杯の水をコップに注いで悠太の元へと向かった。



自分用に撮った秘密の写真と少年の洗濯物から拝借した靴下を対価として渡し、友人に嘘をついてまで帰宅させ、待ち詫びた瞬間を前に、麗奈はソファーでうたた寝をしている少年の前に跪くと、テーブルに一旦コップを置き、ポシェットから薬の入った袋を取りだした。


「………………」


ドキドキと高なる胸の鼓動を抑えるように息を吐き、ビニールを開き、錠剤を右手の手の平に乗せると左手でそれを摘み、悠太の口元へと近づけて行った。


指に当たる健やかな吐息がこれから荒くなることを考えると麗奈はエクスタシーを感じてしまいそうだった。

舌なめずりをして、悠太の口に錠剤を押し付けると右手で鼻を摘む。少しして悠太の口が開くと錠剤を口の中へ放り投げ、すかさずテーブルに置いてあったコップを手に取り悠太の口に水を注ぎ、手で蓋をした。



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