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――採寸てそんなもんなのか?恥ずかしいな。でも、麗奈も店員Aさんも待たせてるし。でも、これ以上私が躊躇ったら店員Aさんも怪しむよね。
息を大きく吸って覚悟を決めると男らしくひと思いにシャツを脱いだ。
悠太はぶるんと跳ねた胸が重力に従って落ちるのを感じた。
男らしく堂々と胸を張って豊かな胸を店員Aに晒す。
同性だから恥ずかしくなんてないと自分に言い聞かせながら。
「さあ、測ってください」
「え、えぇ、測りましょうか」
先程までとは違い、堂々とした態度の自分に、店員Aは少し困惑した様子を見せていた。
その様子で、彼は自分が春日悠太であることを疑われていた事を理解した。
「バンザイしてください」
「はい!」
いい返事である。
店員Aは彼の胸のサイズに圧倒されつつも採寸には慣れているようで、テキパキとメジャーを彼の体に回し、寸法を測っていく。
「Fカップですねえ」
麗奈がBこれは山本早織から聞いた極秘情報だ。
同居人と4つも離れたカップ数を告げられた彼は苦笑いを浮かべた。
――肩が重いなんて言ったら麗奈怒るかな。
なんて彼が呑気に考えていると、試着室の外から、しくしくと泣き啜る音が聞こえてきた。
ーー麗奈に何かあったんじゃっ!
そう思うといても立ってもいられず、彼は自分の状態も気にせず、試着室のカーテンの端をシャっと掴んだ。
「麗奈!」
「ちょっと!開けちゃダメです!」
制止する店員の声も聞かず、彼はカーテンを思い切って開けて、飛び出した。
目の前には膝をついて泣き崩れる麗奈の姿があり、勢い余った彼の体は麗奈の頭を抱き抱える形で、ぶつかった。
彼の低身長が災いし、膝立ちの麗奈の頭に、重くのしかかる生の乳が下から持ち上げられてひしゃげるように形を変えている。
「麗奈?何があったの?」
母性の塊のような凶悪な乳を彼女の頭の上に乗せたまま問いかけた。
「……グスッ」
彼女としては、悠太のカップ数を聞いて、自分との格差で泣いているのだからたまったもんじゃない。
すぐにでも、この自分より遥かに豊かで、柔らかな乳を払いのけたかったが、彼が頭を強く抱きしめてくるものだから逃れられない。
顔面も彼の程よく肉のついたお腹に彼女の整った形をした鼻が押しつぶされるほど、体重を乗せられていて、いつものようにスマホで彼に文章を見せることもできない。
麗奈にできることといえば、今日さっき女の子になった彼から受ける天然の屈辱を頭で受け止めるしかなかった。
「あの……悠太くん?こちらに戻りましょう」
彼女を救ったのは店員Aさんだった。悠太の肩をトントンと叩いて軽く引っ張る。
「え、でも、麗奈が泣いているんですよ?」
悠太は自分の名前を呼ばれたことにも気がつかずに答えた。




