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「あはー、今まで気にしたこと無くて」
「学校でオオカミさんたちの視線を浴びたりしたでしょう!」
「……学校にはあまり通って無かったんです」
数ヶ月前までは本当に通っていなかったので、嘘では無いが、やたら複雑な事情を抱えてます感を醸し出して言った。
これで店員Aは、由奈ちゃんのブラ事情にこれ以上は突っ込んで来られないはず。と悠太は予防線を張った。
「お家に今まで監禁されていて……悠太くんに助けて貰ったってところですか、由奈ちゃんも苦労してきたんですねえ」
店員Aがおよよと涙を拭う仕草で妄想を吐露した。
――なんか親父が悪者のすんごいストーリー作られてるけど、まあいっか。納得してくれたみたいだから流しておこう。
「そうと決まれば採寸ですね!由奈ちゃんにピッタリの下着を、この店員さんが見つけてあげましょう」
「えと、採寸て何処でするの?」
まさかここで脱ぐわけじゃないよね。と危惧した悠太は質問をした。
『この子服屋さんにも行ったことなくてね:( ;´꒳`;)』
流石に苦し紛れの言い訳だった。だが世の中には高校を卒業するまで母親の買ってきた服を着用する人も少なからずいる。
尤も大体が男性なのだが、女性にも居る。現に彼女も、悠太と出会うまでファッションには微塵も興味がなく、学校指定のジャージを私服として着ていた。
それに店員Aの中で由奈ちゃんは囚われの姫様というイメージで固まっている。
「服すら!?それはそれは……許せませんね!こんなに可愛らしいのに!由奈ちゃんのお父様……生かしておけませんねえ」
もう余計な事は言うまい。女性のことは女性に。悠太はこの先の流れを麗奈に委ねることにして口を結んだ。
「と、長話しもその辺にして採寸に行きましょっか。由奈ちゃん、着いてきてください」
「うん」
悠太は店員に従い試着室に入った。
「まずは上を脱いでもらっていいですか?」
「わかりました」
店員に言われた通りに二枚重ねに着たパーカーを脱ぐ。彼の素肌を守る布は後1枚、Tシャツのみだ。
――上ってTシャツも脱ぐのかな。今は同性とはいえ恥ずかしいな。男の時だったら何も思わなかったのに。
ドギマギしながら、口を開く。
「し、シャツも脱ぐんですか?」
「ええ、その方が正確に測れますからねえ」
Tシャツを脱がなくても測れるのだが、悠太(由奈)の性別を未だ勘ぐっている店員Aの嘘だ。
「……」
瞬間悠太の心にどっと羞恥心が湧いてきた。
でも、ここで渋ると変に思われるかもしれない。
意を決してTシャツの裾を握り、持ち上げようとするが羞恥が勝ち、脱ぐのを躊躇ってしまう。
「ほらほらー、脱がないと採寸できませんよぉ」




