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 嬉しくないはずがなかった。

 本当は好意に答えて上げたかったけど、彼に遮られて家族愛と決めつけられて悲しくもあった。

 だから伝えられなかった。

 いつもは自分が押しても押しても答えてくれない彼が女性になった途端気持ちを伝えてくれた。


 ――戻ってからでも遅くない。次は素直に私も好きって言おう。


『今日の君は本当に可愛い。いつも可愛いけど可愛い。だから悪い虫が寄りつかないようにお姉さんが守ってあげる』


「何それ、んふっ。私が彼女みたいじゃん」


 彼が笑った。


『いいでしょ。折角女の子になったんだから、お姉さんに守られてみない?』


そう言って手を上向きに差し出した。彼はその手にそっと小さな手を上から添えた。


「よろしくね。麗奈」


『お姉さんにまかせろ。ちくしょう』


「何それ。私の真似?」


『そうだよちくしょう』


「その言い方だと悪口だよー私がちくしょうだよー」


『わざとだよー。くっ。彼氏役をしようと思って男の子の口調やろうとしたけど身近に悠太しかいない』


「んふ。私の真似だと彼氏と言うより悪者っぽいね」


『でも頼りになるよ?』


「ありがとっ。なんか照れる」


『口調といえば、君は涼夏っぽいね?』


「涼夏かー。どっちかって言うと葉月お姉ちゃんかも。笑い方とか無意識だけど似ちゃってる」


『そんなところまで君はシスコンなんだね(´ー`*)ウンウン』


「葉月お姉ちゃんは私の憧れだからね。今も昔も」


『お姉さんは?』


「麗奈は雰囲気葉月お姉ちゃんに似てる。口で説明出来ないけど何処となく同じ雰囲気を感じるんだよね」


 春日葉月と言えば、悠太を守る為に命懸けで戦って亡くなった勇敢な人だと麗奈は認識している。


 そんな彼の姉に似ていると言えば、悠太に何かあったら命をかけて守る覚悟がある。そう言うところが似てるのかもと彼女は思った。


 彼には当然言ったことはない。

 彼とした約束の中に彼は命を投げ出さない。という約束があるからだ。

 これは彼が何かにつけて命を投げ打って誰かを助けるから、させた約束だ。


『葉月に似てるなんて光栄だね"٩(ー̀ꇴー́)』


「うん。でも、麗奈は死なないでね」


 麗奈の目が泳いだ。


『死ぬつもりは無いよ。悠太もだよ。もうあんな気持ちになるのは懲り懲り:( ;´꒳`;)』


「そういう割りには目が泳いでたけど……約束だからね?」


 彼の青い瞳が真っ直ぐ麗奈の目を見つめている。


『お姉さん嘘つかない。約束する。ずっと一緒に居よう』


「うん!一緒に居よ!」


 傍から見たらプロポーズの言葉なのだが、彼は全身で喜びを表現した。

 飛び跳ね、揺れるたわわな胸。


 麗奈は鼻から一筋の血を垂らした。


『悠太。それは今。よろしくない』


「どしてー?」


 本気でわからないと言った様子で危機感の薄い彼をまた引っ張って服屋までの道のりを目指すのだった。

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