表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/69

18頁


「そうだったわ、この話は後にしましょ」

 ――助かった。

 涼夏はほくそ笑んだ。時間が経てば唯は怒りを忘れてしまうからだ。


 何度説教の途中で逃げ出したことか。下手な言い訳が通じてよかった。

 涼夏はそんなことを考えていた。


「それで急ぎのようってなんなのさ」


 話が戻らないように唯の言葉を急かす。


「ええ、もしかしたらなのだけど、悠太くんが危険かもしれないの」


「悠くんが?」


 ――また面倒なことにでも巻き込まれたかな。


 ――午前中に会った時は普通だったんだけどな。


 涼夏の幼馴染で隣家に住んでいる春日悠太は、優しい性格からか面倒ごとに巻き込まれやすい。

 巻き込まれるというよりは、自ら突っ込んでいくタイプだ。

 涼夏の友人でクラスメイトの宝井静香の家庭の事情から始まり、大企業の社長と命の削りあいなど、とても高校生の身の丈では解決できないことを拳で解決してきた。


 ――今更隠し事はしないと思うんだけどなぁ。


 唯の次の言葉を待つ。


「ええ。大ピンチよ。きっと」


 涼夏の顔から冷や汗が頬を伝い落ちる。

 彼女には、唯がくだらない嘘をつくとは思えなかった。


 おちゃらけモードから真剣モードに頭の中を切り替え、唯に問いかける。


「一体全体何があったの?」

 

「説明はあとよ。今すぐ悠太くんの家に行ってくれるかしら?」


「合点承知!」


「私も今向かっているから……15分ぐらいで行けるわ」


「了解!私が先に行って制圧しておくね!!」


「あなたに任せるわ……不届き者には正義の鉄槌を」


「任せて!じゃ!行ってくる!」

 通話を切る。きゅっと拳を握り込んで気合いを入れる。

 大丈夫、怖くない。やれる。

 涼夏は意気込んで部屋を飛び出した。






 ――――――――――――


 春日家。

 遠回りをし続けた2人は、ようやく準備を終えて出掛けようと靴を履いている。


「涼夏達には見つからないようにしないとな」


 幼なじみと、その友人達に見つかれば、いじり倒されるのは間違いない。

 そう踏んだ悠太はパーカーのフードを深めに被った。


『じゃあ行こうか!^ ̳ට ̫ ට ̳^』


 反対に、顔を丸出しのまま、目立つ容姿を隠そうともしない同居人に、悠太は大袈裟にため息をつく。


「……はぁぁ、お前もフードを被るんだよ!」

『君が被せてくれるなら……いいよ(/ω\*)』


 スマートフォンを見せてから、グイッと体を寄せてきた麗奈に、悠太は手を伸ばす。

 

「ったく」


 フードを掴む寸前で手が止まる。悠太の顔がみるみる赤みを帯びていく。


 ――ちけえんだよ!しかも抱きついてるみたいで恥ずかしい!

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ