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ゆるんだ空気に深呼吸

 朝の空気がずいぶん柔らかなものになってきた。しんと冷たい空気も嫌いじゃないけど、暖かく柔らかな今時分の空気もすごく好きだ。

 「春はあけぼの、冬はつとめて」

 というくらいだからどちらもいい空気だと思う。しかし清少納言も言っていた。『春はあけぼの、めっちゃ眠し』と。

 「おはよー、朝だよ! おーきーてー!!!」

 最近一緒に住むようになった友人は寝起きが悪い。というか起きない。やはり春ののどかな雰囲気にやられてのことなのか? それとも通年起きないのか? いかんせん共に過ごし始めて数日なのでまだわからない。

 「あと……あと……3年……」

 「干からびちゃうから!」

 訳の分からない寝言を言ったきり彼女は起きてこない。でもまあ彼女とは学生時代からの付き合いだけど遅刻してきたことはないから意外と放置してもいいのかもしれない。ちなみに彼女は夜は早い。別に夜更かしして起きられないとかではないのだ。

 起こすのを諦めて朝ごはんの用意をする。昨日のうちに卵液につけておいたパンをバターの溶けたフライパンに乗せる。ジュウジュウといい音がして、ふんわりとバターと砂糖のいい匂いが漂ってくる。蓋をしてゆっくり熱を通す間にコーヒーを淹れる。わたしは砂糖多めのカフェオレ。彼女には砂糖少なめのカフェオレ。

 そうこうしているうちに彼女がのそのそと起きてきた。

 「めっちゃいいにおいする」

 「顔洗っておいで」

 「はーい、お母さん」

 「誰がお母さんか」

 朝ごはんを食卓に並べると同時に彼女が戻ってきた。おいしそう、と笑顔で食卓につくのを見て嬉しくなる。

 「「いただきます」」

 うん。味は大丈夫。焼き加減もいい感じ。

 「あ~おいしい。このまま結婚してほしいくらいおいしい」

 「それは良かった」

 「夕ごはんも楽しみだなぁ」

 「任せておいてよ」

 なにせ彼女の選択には間違いがない。料理を作るのは私だけど献立を考えるのは彼女だ。だからここまで気分よく料理ができるのかもしれない。なにが食べたいか聞いて『なんでもいい』と言われないことのなんて幸せなことか。

 「しばらくお世話になるんだから、おいしいものをお出ししますよ」

 「ありがとう景」

 「こちらこそ」

 生活が楽すぎてしばらく男のことなど考えられないかもしれないけど、それも悪くないとニコニコごはんを食べる彼女を見て思った。


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